pippiのおもちゃ箱

舞台大好き、落語大好き、映画大好き、小説大好き、猫大好き!なpippiのつれづれ日記です。

フェードル 東京千秋楽@シアターコクーン1階BR席

2017-04-30 22:03:43 | 観劇/コンサート

作:ジャン・ラシーヌ
翻訳:岩切正一郎
演出:栗山民也
美術:二村周作

出演:大竹しのぶ、平岳大、門脇麦、谷田歩、斉藤まりえ、藤井咲有里、キムラ緑子、今井清隆

あらすじ

舞台は、ギリシャ・ペロポンネソス半島の町トレゼーヌ。行方不明となったアテネ王テゼ(今井清隆)を探すため息子イッポリット(平 岳大)は国を出ようとしていた。

一方、テゼの妻フェードル(大竹しのぶ)は病に陥っていた。心配した乳母のエノーヌ(キムラ緑子)が原因をききだすと、夫の面影を残しつつ、夫には失われた若さと高潔さに輝く継子イッポリットへの想いに身を焦がしていると白状する。
苦しみの末、フェードルは義理の息子に自分の恋心を打ち明ける。しかし、イッポリットの心にあるのはテゼに反逆したアテネ王族の娘アリシー(門脇 麦)。イッポリットはフェードルの気持ちを拒絶する。そんな中、テゼが突然帰還して・・・

この作品、全く別の演出家と出演者で以前、東京芸術劇場の小劇場で観ましたが、いまひとつ消化不良でした。本作は、「フランスの劇作家ジャン・ラシーヌが古代ギリシャの三大詩人エウリピデスのギリシャ悲劇『ヒッポリュトス』から題材を得て創りあげた、17世紀フランス古典文学を代表する金字塔的な作品。悲劇へと向かう女性の姿を描く美しく輝く台詞、神話的世界をもとに表現した抵抗しがたい破滅的激情は、「人間精神を扱った最高傑作」と言われ、サラ・ベルナール、ヘレン・ミレンなど、時代を彩る名女優たちが演じてきた歴史的名作」。とのことですが、前回作品ではそこまでの印象は持てませんでした。今回は栗山民也さんの演出、大竹しのぶさんのフェードル、平岳大さんのイッポリット、今井清隆さんのアテネ王テゼと聞いて迷わずチケットをとりました。

・・・・すごかったです。いや、本当に凄かったのひとことに尽きます。大竹しのぶさん、「女」の業の百貨店会長の称号を差し上げたいです高貴な生まれでアテネ王の妻でありながら、アマゾンの女性から生まれた妾腹の王子に片想いをし、秘めた想いを隠すためにひたすら辛くあたりまくってきたというのに、失踪中の夫、アテネ王テゼが亡くなったという情報を得ると、今度は侍女の助言もあってその恋心を爆発させて本人にぶつけてしまうんですよお。。。その、ぶつけ方の激しいことといったら、王子ドン引きするほど。しかも、堅物の王子は囚われの姫に清らかな恋心を持っているんです。それを知った時のフェードルの壊れっぷりは、もう、劇場全体を支配しつくしてしまうほどでした。天井が落ちてくるんじゃないかと心配するほどの大迫力大暴走死に様もまたものすごかった~この囚われの姫、アリシーの門脇麦さんもすごい。まだ若いながら少しもきゃぴきゃぴ感なく、ベテラン名優たちの中で遜色ない存在感。燃えたぎる女、大竹フェードルと真逆の透明感。ふたりの対比がくっきり。この人、良い女優になります。テレビドラマでも活躍中ですが、もっともっと舞台で観たい方です。

今井さん、ミュージカル以外の舞台で拝見するのは久しぶりです。深く朗々とした声を聴いたとたん、「一曲歌って!」と思っちゃいました。命からがら祖国に帰還したと思ったらなんだか不穏な空気が漂っているのに気づき(そりゃそうです。フェードルったら、旦那さんが死んだんならと「国家安泰のため」という大義名分を無理くり作って義理の息子に恋心打ち明けて拒絶され、別に好きな人がいると聞いてパニクってるとこに帰ってきたんですから)「せっかく帰ってきたというのに、これか!」と怒るところ、思わすレミゼラブルのナンバー「仮釈放」で、バルジャンが出所後の初任給見て「何故ほかのやつの半分だけ?汗水流してこれか!」と叫ぶ場面をつい思い出しました今井さん、またバルジャンやって~
平岳大さんはね、今回、亡きお父様にそっくりなヘアスタイルで、本当に素晴らしかったです。アマゾンのお母さんから生まれたとは思えない高貴さと純粋さ、謙虚さを兼ね備え、好色であちこち女の人に手を出しまくる父王を反面教師にしてただ一人の女性を愛するイッポリットを、まっすぐに演じていらっしゃいました。その最期もまた、悲惨な形ながら勇気と誠実さを絵に描いたよう。抑えた配色の衣装が長身の平さんによくお似合いでうっとり。義母が惚れるのも無理ないかも。
 
激情のフェードル、純粋なイッポリット、清純で知的な囚われの姫(この響きが好き)アリシー、それぞれには侍女や召使がマンツーで寄り添っています。イッポリットの召使、谷田さんが渋い!フェードルの侍女キムラ緑子さんはもう、フェードル命!という感じで、ありとあらゆる策を講じて主人フェードルを守ろうとしているのに、最後はバッサリ切り捨てられて本当にあわれというほかありませんでした。キムラ緑子さんも恐るべし!です。
 
2時間10分休憩無し、息もつかせない台詞の大洪水。場面転換もなく、音楽も抑え目なのに、圧倒されて眠気すらもよおす暇がありませんでした。
 
蜷川先生亡き後、こういう古典劇をこんなに感動して観られる日が来たこと、本当に嬉しい限りです。満腹しました。
 
もう一回言っちゃいます。大竹しのぶ、おそるべし。
 
 


 

コメント
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