pippiのおもちゃ箱

舞台大好き、落語大好き、映画大好き、小説大好き、猫大好き!なpippiのつれづれ日記です。

K2 @世田谷パブリックシアター1階D列センター

2010-11-22 19:15:45 | 観劇/コンサート

作:パトリックメイヤーズ
演出:千葉哲也

出演:物理学者ハロルド・・堤真一  地方検事テイラー・・草剛

【あらすじ】
標高8611メートル。世界第2の高峰「K2(ケー・ツー)」登頂を果たした物理学者ハロルド(堤真一)と地方検事補テイラー (草 剛)は、その栄光から一転、
下山途中の8100メートル付近で遭難してしまう。
零下40度以下。酸素も薄く、寝袋もテントもない極限状況の中、ハロルドは足を骨折。
2人は氷壁のレッジ(岩だな)で身動きが取れなくなってしまう。
容赦なく襲いかかる大自然の脅威を前に、問わず語りにお互いの人生を話し出す2人。
青春の日々、仕事、日常、そして、家族や女たちのこと・・・。
「死」を意味する暗闇が迫る中、残された1本のザイルに託された2人の男の運命は・・・?!

(公式HPより)

ありとあらゆる先行に電話をかけまくって奇跡的にGETしたK2チケット。ようやく本日行ってまいりました。
平日マチネだというのに、劇場前は当日券を求める長蛇の列。立ち見もかなり出ていました。以下、ネタバレありますのでこれから行く方はご注意ください。

 

 

舞台があくと、三分の二がほぼ垂直の氷壁。高さ2mほどのところにある岩棚の畳2枚分くらいの狭いスペースで魂のぶつかり合いのような激しいドラマが展開されます。「動」のテイラー@草くん、「静」のハロルド@堤さん。堤さんは骨折して動くことができません。(しかも無精ヒゲ!)この窮地をなんとか脱出しようとする2人。「装備点検!状況把握!」を繰り返しながら。テイラーが遭難の際に失ったザイルを取りに氷壁を上って裏側にまわる時以外は二人とも舞台に出ずっぱりです。膨大な台詞。草くんが叫び、堤さんが語る。生きるか死ぬかの、ぎりぎりの戦いが繰り返されます。

すごい。ふたりは膨大な台詞を言いながらずっと(私はよくわからないんですけど)ザイルを結んだり、固定するための金具を操っています。テイラーはそのザイルを体に繋げて垂直の氷壁を上り、懸垂下降してきます。ワイヤーとかはつけていない様子。下で支えるハロルド。起死回生をはかり、ふたりでザイルをひっぱると、大量の雪が落下。1~2列目の客席にも大量の雪(紙吹雪)が降って来ました。

その落雪によってザックも落下、さらに装備を失います。もう無理。絶体絶命。ハロルドは学者として「生体が破損して、体に必要な成分を補給できなくなった時に訪れる結果」を語ります。そして静かに「逃げないで受け止めること、受け入れること」を決意する。そこで語られるキタキツネの白子の運命~突然変異で生まれたキタキツネの白子は、強烈な日光によって網膜が焼かれ、失明する。そしてやがて生きられないことを悟り、海へと向い、静かに死を待つ~泣き叫ぶテイラーを説得し、ひとりになった岩棚で静かに佇むハロルドはぎりぎりの葛藤の中で「なぜキタキツネの白子が海に向かうのか」に気づくのです。すべてを受け入れた堤さんの静かな表情、声、すべてが「神」でした

客席はし~んとして、すすり泣きが聞こえました。ハロルド、堤さんの横顔にも涙が光ってとても美しかったです。
テイラーが助かって地上に降りることができたのか、ハロルドが孤独な死を迎えたのか、結末は霧の中です。観客の想像力と役者の力に支えられた極上の舞台でした。私は、テイラーが無事ベースキャンプにたどり着き、ハロルドも救出されたと思いたい。そんな想像も許されますよね。映画版「K2ハロルドとテイラー」ではこの舞台とは違う結末があるらしいですから。

カーテンコールは三回。ここで初めて堤さんが立った姿を見ました。堤さんも草くんも素敵な笑顔でした。このハードなガチンコ舞台を一日2回公演やる日があるとはすごいです。。ロビーでは、「3回観たけど、今日が一番良かった。」という声も聞こえて、得した気分になりました。しかし、このプラチナチケットを3枚GETした人がいるとはうらやましすぎ。

しかし山はこわい。「すべてがシンプル」だからそこに魅かれて山に向かうと山男たちは言いますが、死と隣り合わせになることが分かっていて、なぜ人はそこにむかうんでしょうね。先日もテレビで若い登山家のドキュメンタリーをやっていたけれど、高山病になったり凍傷になったり雪崩にまきこまれそうになってもなお、そこに向かおうとするのでしょう。K2などは2010年7月時点で登頂成功者302人、そのうち77人が遭難死。死亡率25%だそうですよ。(エベレストは5%)我が家には息子はいませんけど、もし息子がいて山岳部に入ると言ったら、やっぱり反対するだろうなあ。。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする