pippiのおもちゃ箱

舞台大好き、落語大好き、映画大好き、小説大好き、猫大好き!なpippiのつれづれ日記です。

こまつ座 朗読劇 水の手紙/少年口伝隊一九四五@紀伊国屋サザンシアター7列下手

2010-11-15 23:39:11 | 観劇/コンサート

新国立劇場演劇研修所出身の若手俳優さんたちによる群読「水の手紙」と「少年口伝隊一九四五」を見てきました。


季刊the座によれば、この日程は井上ひさしさんの新作「木の上の軍隊」のために劇場をキープしていたのだそうですが、井上先生の急逝で作品が完成せず、急遽この企画に差し替えられたそうです。集客に不安があったのか、毎公演日替わりゲストによるトークがあります。今夜はモーツァルト!公演中のプリンス井上芳雄くんでした。私もそれに釣られたひとりではあります。


「水の手紙」
ステージには青く水をたたえた地球が浮かびます。水をテーマに自然との共生を力強く訴える声、声、声。世界中の水はつながっている。
壮大な群読に圧倒されました。その中でも、ユーフラテス川をめぐる中東の争いに子供たちが身をもって「待った」をかけたエピソードに感動しました。こういう作品、文化祭とかでも学生さんたちにやってほしいなあ。若い人にこそ、体験してほしいです。


「井上ひさしさんへのラブレター」
なんだか客席がざわついたかと思ったら、井上芳雄くんが客席(後方センター)から登場。今日はモーツァルト!の数少ない休演日なんですね。背筋のすっと伸びたスーツ姿が素敵井上くんは、「ロマンス」「組曲虐殺」に出演した喜びと感謝、そして、井上先生が亡くなったその日に、小樽の小林多喜二記念館で多喜二のデス・マスクを見ていた偶然を「必然」と感じたと。井上先生が自分をそこへ導いたと感じたそうです。そして、組曲虐殺の中から「信じて走れ」をアカペラで歌いあげました。井上くんの瞳にあふれる涙が光っていました。客席からもすすり泣く声が。


15分休憩。お隣の女性もハンカチで涙をぬぐっていました。


「少年口伝隊一九四五」
紙谷町さくらホテル、父と暮らせば、に続く広島三部作という位置づけだそうですが、舞台いっぱいに並べられた椅子に座る制服姿の役者さんたちによって語られたのは、よりリアルな「広島」のその日の現実でした。そして、ようやく復興に向かった広島を襲った枕崎台風が被爆した人達をさらに厳しい状況に陥れたということを初めて知りました。「口伝隊」は、被爆によって壊滅的打撃を受けた中国新聞社が、被災地をめぐってニュースを口伝したという事実に基づいているそうです。口伝隊の3人の少年もまた、たたみかけるような不幸、厳しすぎる現実に飲み込まれていきます。混乱し、発狂しそうになる少年。そんな彼らに、妻を失ったばかりの老哲学者が「「狂ってはいけん!正気でおらんといけん!」と叫びます。なんだか、今の日本に必要なのは、そうやって混乱に飲み込まれそうになる者たちを強い言葉で引き留めてくれる言葉なんじゃないかと、強く思いました。井上ひさしさんや河合隼雄先生亡きあと、そんな人がもう思いあたりません。


 

コメント
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