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pippiのおもちゃ箱

舞台大好き、落語大好き、映画大好き、小説大好き、猫大好き!なpippiのつれづれ日記です。

ないた赤鬼~青鬼の消息は。。。

2015-11-19 23:21:08 | 私の本棚

昨夜、BSで「私の青鬼」という山形発のドラマが放映されました。

私は番宣をチラ見しただけで誤解して、浜田廣介氏の「泣いた赤鬼」続編が放映されるのかと早合点して友人にLINEしまくってしまいましたが、実際は「青鬼のその後」の物語の出版をめぐる女性編集者の再生物語といった趣でした。

まあ、それはそれでいいんですけれども、女子生徒のいじめの構造やトラウマなど、ちょっと「表参道高校合唱部」のエピソードとかぶるなあ。。。などと、やや拍子抜けでした。

それにしても、青鬼の消息って、やはりみんな気になってるんですね。節分の時期になると思いだすコアな鬼の物語ながら、自分を悪者にしてまで親友の望みを叶え、その望みを永遠にするために自分は姿を隠す。そんな青鬼くんの消息。

どこでどのような人生を送ったのか、幸せだったのか、知りたい。

山のような要望がありながら浜田廣介氏が続編を書かなかったのは、「あとは読者の想像力に委ねる」ということだったようですから、作家の思惑は見事に当たったというところなのでしょう。

青鬼がその後どういう道をたどったのか。。。

私は、なんとなく、この「鬼」たちは異国の人だったんじゃないかなあと思ったりします。日本に着いて、日本の風土が好きになり、村人たちとも仲良くなりたい。でも風貌も体格も文化も、もしかしたら言葉も違ったかもしれないよそ者をなかなか受け入れられないのはちょっとわかるかな。

青鬼くんが外国の人だったとしたら、村人たちと馴染んだ赤鬼くんの幸せを祈りつつ、またこの日本で根付いていくことを祈りつつ、帰国して母国で家族を作り、自分の人生を歩んだと思いたいです。

ドラマでは、「青鬼その後」を絵本にして出版するというところで終わって、一般公募で入選した作品の内容は語られませんでした。挿絵が青鬼・赤鬼そのものから、「赤鬼・青鬼、それぞれの鬼のお面をつけた人間」に差し替えられたところがこのドラマの核心にもなっていますが、私のとは違うなあ。

読者ひとりひとりのイメージの世界を大事に。。と、いうことなのかなあと思い、それはそれで成功しているんだなと感じました。

 

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文芸春秋九月特別号 火花/又吉直樹 を読む

2015-08-12 23:57:28 | 私の本棚

正直なところ、落語は大好きなくせに漫才とかMANZAIとかは、ほとんど未知の世界です。だから、職場で若手がエレキテルの「だめよ~んだめだめ」とのたまわった時に、「なに、いまどきそんな森進一みたいな色気だしちゃって。」と発言してドン引きされたものでした 彼女、気を使ってその時はエレキテルとは言わず、のちに私が彼女らの存在を知って「もしや。。。」と切り出したところ、「あ~知らないんだわpippiさん。。と思って口にはだしませんでした。」と微笑み返してくれました。

そんななので、バラエティー番組で又吉さんが出ているのは見ても、彼が漫才をしている場面はいまだに見たことがありませんでも、不思議な存在感のある方だなあとは思ってました。

文学界で注目されて以来、読書家ぶりがテレビやネットでも流され、太宰ファンというのも興味深い。

。。。で、芥川賞受賞作一気読み可能な文芸春秋9月号GET.

読み始めると、最初のころは結構難しい表現が羅列されていたりして、もうちょっと平易に書いてもいいんじゃないかな~などと上から目線で読み進める私。しかし、あら、進む。だいたい、あんまり小難しかったり段落が切ってなかったりするとすぐ投げてしまう私なのに、この話は大丈夫。すごいまじめだ、この人。まじめでまっとうだ。。見た目と違う。。。そして、物語の核となる先輩、この人がかなり破滅型。これは又吉氏が敬愛するあの作家か破滅型の典型のような。。。

そんな先輩芸人を敬愛しつつ、その転落をハラハラしながら見つめ、自分の生き方を見つめ、最後には羅針盤を失って絶望的な状況に陥った彼に「それはあかんねん」と言い切る姿に、作家本人のまっすぐさを見た気がました。選考委員の評価は割れているようで、辛辣な表現をされている方もありましたが、私は次の作品も読んでみたいなあと思いました。

今月号は記事の中に30年前の日航機墜落事故で生還した川上慶子さんのお兄様の手記などもあって読み応えがありました。これから同時受賞作、羽田圭介さんの「スクラップ・アンド・ビルド」を読みます。

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今日も一日きみを見てた/角田光代

2015-07-14 22:00:23 | 私の本棚

先日、神保町にゃんこ堂で購入したこの一冊。しばらくつん読状態でしたが、読み始めるともう・・・・なんだか泣けてしまいました。

わ。。。私だけじゃなかった!この、愛猫どっぷりな感じ方、受け止め方シモベっぷり

角田さんの家の猫、アメリカン・ショートヘアのトトちゃんは、あの「毎日かあさん」、西原家のご出身なんだそうです。「生まれたらあげるね」的な感じで、生まれる前から角田家の仔になると決まっていたトトちゃん。

本当は犬派だったという角田さんが、いかにしてトトちゃんと出会い、ハートを持っていかれたかが、思い入れたっぷり、愛情たっぷりに描かれています。猫を飼っていない人から見たらあきれてしまうほど。

全てを受け入れ、ただそこにいるだけで人を癒す。何も要求しないのに、君のためなら何だってしてあげる!という気持ちにさせる存在。そんな想いがみっちりと詰まった一冊でした。

猫バカと言われてもいい、頭おかしいんじゃないの?と思われてもいい、大好きなんだもん。もふもふのあの子が

もっふもふ~

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岸辺の旅/湯本香樹実

2015-05-31 23:41:33 | 私の本棚

第68回カンヌ映画祭「ある視点」部門で監督賞をとった作品、ということでニュースでこの映画の予告映像を見たとき、原作が「ポプラの秋」や「夏の庭」の湯本香樹実さんということを知り、がぜん読んでみたくなりました。

・・・・すごく不思議な浮遊感、透明感のあるお話でした。「ポプラの秋」も「夏の庭」も死を独特の感性でとらえた作品でしたが、この作品は更に素晴らしく、久しぶりに一気読みしてしまいました。

突然失踪した夫が3年ぶりに帰ってくる。しかも、自分はもうこの世の人ではないと。そんな夫と一緒に、彼の亡くなった場所への道をたどる夫婦の旅。失踪した夫にはいろいろな秘密があり、何が決定的となって命を絶ったかは語られませんが、ふたりの旅の道筋に、夫がかかわってきた様々な人々が現れ、妻はそれまで知ることのなかった夫の様々な顔を知ります。その中には、知りたくなかったこともたくさん。ドロドロとしたこともいっぱい。

そして、生と死をつなぐある場所で、妻は亡き父にも出会います。父は、この世の人でなくなっても、娘である彼女を幸せにしなかった夫を許さない。どんなことがあってもきっぱりと許さない。その場面で、不覚にも涙が出てしまいました。

どんなに仲の良い夫婦でも、お互い知らないことってたくさんあるのでしょう。職場でどんな顔をしているのか、いままでどんな人たちと関わってきたのか。我が家は学生時代からの長いつきあいなのですが、知らないこともあるだろうな、やっぱり。

知りたくなかった秘密に触れてもなお、事実を知ることによって夫が見えてくるのではないかと信じる妻が健気です。この夫は、妻にきちんと謝りたかったのでしょうね。

この旅の中で、生前歯科医師だった夫は、それまでとは異なる様々な形の生活を体験していきます。

「したかったのにできなかったことも、してきたことと同じくらいひとのたましいを形づくっているかもしれない」

という一節が心に残りました。

映画では夫を浅野忠信さん、妻を深津絵里さんが演じますが、イメージにぴったりだと思いました。10月の公開が待ち遠しいです。久しぶりの高橋洋さんもご出演です。どの役かなあ

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T.S.スピヴェット君傑作集/ライフ・ラーセン著 佐々田雅子訳

2014-12-07 20:45:16 | 私の本棚

「天才スピヴェット」の原作「T.S.スピヴェット君傑作集」を読んでみたいなあと思い、Amazonで検索しましたが在庫なし。

レビューには「とにかくでかい本です。だから、結構なお値段します。」なので、一応図書館を探ってみたら、区内では一番遠くの図書館に1冊在架。速攻で予約したら、朝には受取を希望していた至近の図書館から「ご用意できましたのでどうぞ」というメールが届いていました。図書館オンラインGood Job!

で、早速借りに行きました。・・・・本当にでかい。

どのくらいかというと、学研の図鑑と同じくらい。しかもスピヴェット君のほうが厚い

中には、記録魔であるT.S(テカセム・スパロー)の描いた図表とその解説がいっぱい。かといって読みにくくはなく、むしろ楽しく読み進めることができます。おびただしい図表と解説によって物語が立体的に展開、そう、まさに3D映画を見ている感じ。ジュネ監督がこの物語を3Dで作った気持ちがよくわかります。こんな小説ははじめてかも。

「ぼくは、あるもの全体がどんなふうに組み合わさっているのか、少しでも理解しないままで死にたくはないんです。」

これがT.S.が図表を描きまくる動機。

この物語の鍵を握る人物は、やはり「あの人」大きな愛がそこにありました。

・・・・・・話はがらりと変わりますが、久しぶりに夫とランチ焼肉に行きました。備長炭を使うのが売りなわりにはお安い焼肉屋さんですが、BGMにいきなりダンス オブ ヴァンパイアのフィナーレの曲がな・・・なんで近藤マッチの歌の後にこの曲がと思ったら、この曲はジム・スタインマンの映画『ストリートオブファイヤー』の劇中曲「Tonight Is What It Means to Be Young/邦題:今夜は青春」のアレンジだったんですね。

モーツァルト!もDVD化されたことだし、ヴァンパイアもぜひ!DVD発売お願いしますよ~東宝さん!浦井くんで市村さんで吉野さんでちひろちゃんで!

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人質の朗読会/小川洋子

2014-03-02 19:37:31 | 私の本棚

「人質」という物騒な響きと「朗読会」という静かな響き。この不思議なタイトルと、ひっそりした白い子羊のカバーに、本屋さんで手をとらずにはいられませんでした。

異国で反政府ゲリラの襲撃を受け、日本人旅行者と添乗員合わせて8人が人質に。数か月後、彼らは政府の特殊部隊突入によって犯人が射殺されるとほぼ同時に爆弾の犠牲になる。2年後、当時の犯人グループの様子を盗聴した録音テープが公開される。そこには亡くなった人質たちひとりひとりの思い出を朗読した音声が残っていた。。。。

なんとも不思議なオーラに包まれた作品でした。インテリアコーディネーター、調理師専門学校の先生、作家、ツアーガイド、主婦・・・様々なプロフィールの人質たちは、異国で、しかも思いもよらない反政府ゲリラによる拉致監禁という極限状態にありながら、本当に淡々と静かに自分の大切な物語を語るのです。読者である私は彼らの運命を知っている。彼らは、もしかしたら絶望しているかもしれないし、生還への希望を持っているかもしれない。でも、命があっけなく終わりを迎える直前まで、人は自分の物語を続けられるんだなあと、ふわっとした気持ちになり・・・ふと、亡くなった父のことを思いました。9番目の物語が、人質たちの朗読をリアルタイムで盗聴していた政府軍兵士によるものだったことも印象的です。

登場人物や設定は脚色されるようですが、3/8(土)20時~Wowwowでドラマが放映されます。私の読んだ文庫本のあとがきは、このドラマで大事な役を演じる佐藤隆太さんが書いておられました。公式HPにも「小川洋子さんが原作で書いた言葉をできるだけそのまま映像にしたい」とあるので、とっても期待しています。

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心/姜尚中

2013-05-27 20:51:24 | 私の本棚

先週、何気なくNHK特報首都圏を見ていたら、姜尚中氏の「心」という作品をとりあげていました。番組の中で、長く深い心の闇にとらわれていた息子さんが亡くなったこと、深い喪失感の中で震災直後の東北に立っていたことなどを知るうちなんだかすぐにでも読んでみたい気持ちに駆られて本屋に走りました。

「心」は、夏目漱石の「こころ」をなぞった形で、ライフ・セーバーのボランティアをする男子学生との往復書簡と姜氏の想いによって構成されています。その中で感じる「若い命」に対する氏の目線がなんとも優しく温かいのです。被災地で遺体の引き揚げのボランティアを体験し、PTSDに陥った若者を励まし、癒す言葉、彼の切ない恋を応援する言葉、そして、若者との交流の中で亡き息子を思う父としてのまっすぐな心。なんとも心打たれました。そして、「すべてを丸ごと受け入れること」という一文に衝撃を受けました。「重要なことは、ものごとの正解・不正解を弁別することではありません。右か左かのどちらかを選ぶことでもありません。両方を受け入れることなんです。」そして、「どうか、頑張って。」という結び。静かな語り口が、なんだか自分に向けられているような気がして、ちょっと泣きました。

「モリー先生との火曜日」と同様に、本棚の特等席にずっと置いておきたい本になりました。

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永遠のゼロ/百田尚樹

2013-05-06 21:06:42 | 私の本棚

あらすじ:

日本軍敗色濃厚ななか、生への執着を臆面もなく口にし、仲間から「卑怯者」とさげすまれたゼロ戦パイロットがいた……。 人生の目標を失いかけていた青年・佐伯健太郎とフリーライターの姉・慶子は、太平洋戦争で戦死した祖父・宮部久蔵のことを調べ始める。
祖父の話は特攻で死んだこと以外何も残されていなかった。 元戦友たちの証言から浮かび上がってきた宮部久蔵の姿は健太郎たちの予想もしないものだった。凄腕を持ちながら、同時に異常なまでに死を恐れ、生に執着する戦闘機乗り……それが祖父だった。
「生きて帰る」という妻との約束にこだわり続けた男は、なぜ特攻に志願したのか?
健太郎と慶子はついに六十年の長きにわたって封印されていた驚愕の事実にたどりつく。(講談社HP)


4日夜のNHKスペシャル井上ひさしラスト・メッセージを見終えた後、友人たちからこの本のことを聞き、久々にいのししモードにスイッチが入ってしまい、翌朝BOOK OFFに走りました
が、しかし。。GWということもあってなのか、文庫本さえ皆無。(「舟を編む」と「世界から猫が消えたら」は廉価でGET)で、普通の本屋さん2軒目でようやく見つけました。

日本中が戦争の渦の中で本当の気持ちを言えば「非国民」とののしられ、真実が押しつぶされている中にあって、人になんと言われようと「生き抜く」ことを貫こうとした主人公に強く心を揺さぶられ、また。私も特攻隊の青年たちの「殉教者的精神」が真実の姿とは言い切れなかったということにほっとしたりしました。そして、普通に家族とご飯を食べたり、喧嘩したり、笑いあったりする、ただそれだけのこともできない時代があったこと、また、もしかしたら再びそんな時代に日本が歩を進めているんじゃないかといった不安も持ちました。「九条の会」で熱心に活動されていた井上ひさしさんは、どんな思いでいるのかなあ・・と思いつつ、575ページ、一気に読了しました。

この作品は、12月に岡田准一さん主演で映画化されるそうです。読む前に知ってしまったせいか、宮部久蔵は脳内ですでに岡田くんに置き換えられていました。映画監督の山崎氏も「原作を読んですぐ岡田さんが浮かんだ」と言っていたそうです。ストイックな雰囲気がぴったりかも。戦争映画はこわくて観られないのですが、この作品は期待しています。井崎老人の橋爪功さんも楽しみです。

亡くなった叔父は、予科練から海軍航空隊に入ってフィリピン沖で戦死したそうです。父は生前、優秀だった自慢の弟の話をよくしていました。もっとちゃんと聞いておけばよかったな、と思います。

もっとたくさん本が読めると思ったけど、終わっちゃったな~G.W.明日からまたお仕事がんばります。

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ロスト・ケア/葉真中 顕

2013-03-24 16:31:17 | 私の本棚

検察官大友秀樹の友人で介護企業『フォレスト』に勤める佐久間功一郎は、顧客データを持ち出し退職するが抹殺されてしまう。
大友たちがそのデータを分析したところ、ある介護事務所の顧客の異常な変死が発覚する…。
社会における様々な矛盾と歪んだ現実の中で、人間の尊厳、もがき苦しむ人々の絶望を抉り出す。


 

日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品。王様のブランチのBOOKコーナーでの絶賛されっぷりがすごかったのと、「ロスト・ケア」というタイトルにひっぱられて書店へ。おんなじことを考える人が多いのか、一軒目の本屋さんにはすでになく、駅前まで行ってやっと最後の一冊を購入。検察官の父は億単位の入居金で高級老人ホーム「フォレストガーデン」という安全地帯に入居した勝ち組。でも、日本は介護保険の導入で家庭介護にウェイトが置かれるようになり、介護される老人の状態によっては、家族や親族が追い詰められるような状況に置かれる・・・そこで。。。というSTORY.

物語は、最近流行りの登場人物ひとりひとりの目線から状況が時系列にあぶり出される構成。ちょっとひっぱりすぎかな~という部分も感じましたが、後半はちょっとしたどんでんがえしや、まさに「現代」を感じさせるデータ分析なども織り込まれ、犯人が動き出すあたりからぐっと惹きつけられます。ところどころに「若さ」が見え隠れするところがもうちょっとかなあと思う部分もありますが、今後が楽しみな作家さんです。

「人間の尊厳、真の善と悪を、今を生きるあなたに問う!」というコピーを見ながら、やっぱり安全地帯で老後を送れるように、無駄遣いはやめようっと・・・と、しみじみ思いました。

 

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55歳からのハローライフ/村上龍

2013-03-12 22:20:26 | 私の本棚

あの村上龍さんが「13歳からのハローワーク」を出版した時には、あの「コインロッカーベイビース」からずいぶん時がたったんだなあ・・・と思いました。私にとっての村上龍さんは、「限りなく透明に近いブルー」よりも「コインロッカー・・・」の印象が強い作家さんでした。何せ、当時はまじでコインロッカーに赤ちゃんを捨てる事件が続発していたので、タイトルだけでも十分にショッキングだったものです。鷺ノ宮の小さな本屋さんで購入したときのことも、はっきり思い出されます。

でも、テレビのRYU's BARなどで見た龍さんは、しっかりとした知性や教養を感じる方で、しかも地に足のついた大人。この「55歳からの・・・」も素晴らしい短編集でした。

人生の秋を迎えた人々の複雑な感情がストレートに伝わってきました。

定年して家でごろごろするだらしない夫に嫌気がさし、離婚して婚活する主婦、リストラで困窮しながらも、ホームレスに身を落としたかつてのクラスメイトを必死で助ける男性、早期退職し、妻とキャンピングカーの旅を夢見た営業マンにつきつけられた現実、愛犬を失った主婦、古書店で出会った女性に淡い恋心を寄せるトラック運転手。どの物語もなんだかわかる。

その中でも、「空を飛ぶ夢をもう一度」という物語が一番印象に残りました。実はこの本を勧めてくれたのは夫で、当然「ペットロス」に反応するかと思ったらしいのですが、残念、違いました。

「空を・・・」は、高級住宅街で偶然出会ったかつてのクラスメイトが、実はホームレスに近い生活をしているうえに重篤な病に冒され死期が近いと知り、何が何でも彼の母親に会わせなければと奮闘する物語。何に心を惹かれたかというと、どんなに年を重ねても、人って若い頃の輝くような時を共にした友人には、何の見栄も遠慮も持たずまっすぐな気持ちを向けることができるんだなあということを確認できたような感覚を持ったからです。自分にとっては何の得にもならず、相手にとっては迷惑かもしれない事でも、「きっとそれが一番いいに違いない」という青い確信に向かって突っ走る初老。なんだか胸がきゅーんとしました。

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ツナグ/辻村深月

2012-09-11 19:06:23 | 私の本棚

あなたがもう一度、会いたい人は誰ですか?


このコピーが気にかかり、書店で手に取りました。辻村深月さんの作品は初めて読みました。読書に関しては保守的なせいか自分より若い作家さんの作品を読む機会はあまり多くないので、姪と同い年の辻村作品との巡り合いはとても新鮮でした。


「使者」と書いてツナグと読む。そして、ツナグ君はイタコのようなおばあさんでもなけれは水晶玉をなでまわす美女でもない、藍色のダッフルコートを着たいまどきのイケメン・・・・映画では松坂桃李くんが演じるそうです。(映画の予告編で彼を見てから、イメージ中のツナグ~歩美くんはすっかり松坂くん)


ま、それはともかく、ツナグと言われる人を探り当てて電話をかけ、既に故人となっている相手の承諾が得られれば、その人に一度だけ会える。生前に言えなかった感謝の言葉を直接伝える、謎を残して亡くなった友人や失踪した恋人の真実を知る。それは夢のような話でもあり、叶えばいいなと誰もが一度は持つ願望かもしれないなと思います。


私は誰かな・・・・やっぱり父かな。ありがとうって、言ったつもりだったけれど、意識が朦朧としてた頃だったから、ちゃんと伝わっていたのか、知りたい。


「しつこいやつだな。ちゃんと聞こえてたよ。」と笑ってほしいです。


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清須会議/三谷幸喜

2012-07-16 21:51:42 | 私の本棚

久しぶりの一気読み。いや~面白かったです!


本能寺の変で織田信長が明智光秀に討たれ、光秀が三日天下の後に敗走中山崎で土民に殺されたというところまでは日本史の授業でも大河ドラマでもよく取り上げられていますが、その後にどういう経過で秀吉が信長にとってかわって天下をとったのかというところはなんとなくスルー(したのか、されたのか…)でしたが、この本でよ~くわかりました。


構成が面白い!信長重臣の柴田勝家、羽柴秀吉、丹羽長秀、前田利家、またお市の方をはじめとした信長の兄妹親族などの独白という形で本音トークが綴られ、本能寺の変の後どうやって信長の後継者選びがなされ、秀吉がのしあがって行く基盤を固めたかが、手に取るようにわかりました。なにせ時系列で「現代語訳」で語られますから。


大河ドラマで印象的だったのは竹中直人さんの秀吉。そういえば竹中秀吉が三法師様を背中に乗っけて「お馬さん」やっていたシーンを思い出しましたあれが清須会議だったんだ!と、今更思ったのでした。


・・・・・しかし、三谷幸喜おそるべし。「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、ゆかいなことをいっそうゆかいに」(井上ひさし)を地でいった感じ。そして実在の人物、特に信長親族をあんなふうに書いちゃって大丈夫?と心配するほど面白い小説でした。映画化も楽しみです。私の中では、もうキャスティングできてます


この表紙、よ~く見ると秀吉がスマホ持ってます。三谷さんのアイデアだそうです。
Good job!


 


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MONSTER/浦沢直樹 

2012-03-24 21:21:15 | 私の本棚

行きつけのヘアサロンでは、私の好みをよく知っていて椅子に座ると必ず映画雑誌「CUT」やコミックスを持ってきてくれます。

前回、浦沢直樹さんの「PLUTO」を真剣に読んでいる私を見て「これ読みました?」と持ってきてくれたのが「MONSTER」

サロンでは時間切れで4冊ほどしか読めなかったので、帰りに書店に走って大人買いしました

チェコ国境を彷徨っていた美しい男女の双子と、双子の男の子を救って壮絶な迷宮に入り込んでしまった日本人外科医のサイコスリラーと言ってしまえばそれまでですが、ベルリンの壁の崩壊、多重人格、孤児院の人体実験、絶対悪、悪魔と神の絵本、人間の中に潜む怪物、名前のない悪魔。。。。

物語が壮大すぎて一言ではとても語ることができませんが、様々なエピソードや多種多様の登場人物が現れては殺され、謎が謎を呼び、最後の最後まで息をつかせないこの展開。手塚治虫を思わせるものすごくスケール大きい作品でした。

18巻、一気読み。サロンで流し読みしていた部分もガッツリ読みました。

・・・・・・深い。

マンガにこんなに嵌ったのは久しぶり。そういえば娘を出産する直前にも浦沢直樹に嵌ったことがあったっけ。その時はYAWARA!でした

なにやってんだかね~ふと、「のみのピコ」という絵本の一節が頭に浮かびました。

「これは、のみのピコ。これは、のみのピコのすんでいるネコのゴエモン。これは、のみのピコのすんでいるネコのゴエモンのしっぽをふんずけたあきらくん。これは、のみのピコのすんでいるネコのゴエモンのしっぽをふんずけたあきらくんの、マンガを読んでいるお母さん

徹夜でマンガを読んでるお母さんて、やっぱりギャグなのかも・・・・

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クローディアの秘密  E.L.カニグズバーグ

2011-06-11 20:15:53 | 私の本棚

時々お邪魔しているぷ~さんのブログで岩波少年文庫の話題が出ていたので、本棚からこの本をひっぱりだし、久しぶりに読み返してみました。

優等生のクローディアが長女である自分ばかりが用事をいいつけられる不公平や退屈でつまらない日常から抜け出すために、しまりやでもらったおこづかいをほとんどそのまま貯めているという弟ジェイミーをひっぱりこんで一緒に家出をし、「どこか大きな場所、気持ちの良い場所、できれば美しい場所に住む」ことを決めてN.Y.のメトロポリタン美術館に隠れ住み、ひょんなことからその時評判になっていた「天使の像」の秘密の鍵を握るというお話。

クローディアの家出の動機は変化していきます。最初は退屈な上にしっかりしていると言われる自分ばかりにいろんなことを押しつけられることへの不満。次は天使の像の秘密への好奇心。そして誰も知らない秘密を持つことで今までの自分から脱却したいという衝動。

作者が主人公を12歳に設定することにこだわった気持ちがわかるような気がします。世界は自分の前に大きく開いていて、手を伸ばせば何にでもなれるように思えるのに、大人はなんだかんだとうるさく干渉して自由な暴走を押しとどめようとする(と感じる)、子どもの自分と大人になりかけの自分がごちゃごちゃになる世代の入り口。

この作品が素敵なのは、クローディアがまだ12歳なのに素晴らしくクールな頭脳を持ち緻密な計画をたてて実行していること、またかなり突拍子もない冒険なのに、この姉弟の失踪についての親のパニックぶりがほんのちょっぴり、さらっとしか描かれていないところです。無理くり連れてこられた弟ときたら彼女の完璧な会計係として逃走資金の管理までやってのけるのです。クローディアはホームシックにもならず、堂々とこの冒険にのめりこみ、存分に好奇心を満足させて人間的な成長を自分のものにします。作者のカニグズバーグは3人のこどもの母親で、ピッツバーグの大学院で化学を専攻していた女性だそうです。いかにも理系なクローディア。きっと作者の少女時代もそんな感じだったんでしょうね。

44年も前に出版されたこの作品、皿洗機やドラッグ・ストアやホット・チョコレートサンデーなどの単語があたりまえのようにでてきます。日本のこどもたちはとってもおしゃれに感じたんじゃないでしょうかねえ・・・久しぶりの岩波少年文庫。わくわくしながら読了しました。そういえば、「メトロボリタン・ミュージアム」という歌、ありましたよね~あれは、この作品がモチーフらしいです。

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母~オモニ/姜尚中

2010-12-16 21:13:53 | 私の本棚

友人に勧められ、政治学者にして論客、静かな語り口で注目していた姜尚中さんの「母~オモニ」を読みました。

昭和16年初めに16歳で朝鮮半島から上京した姜尚中さんの母、禹順南(春子)さんが、東京の軍需工場で働いていた姜大禹(永野馨也)さんと結婚し、貧しい暮らしの中から言い尽くせない苦労を重ね「在日」として生きた日々を小説の技法で描いた作品です。姜尚中さんに「永野鉄男」という日本名があるのも初めて知りました。

まさに、壮絶な世界。在日朝鮮人の人々の「生きる」ことに対する執念のようなものを感じました。姜(日本名・永野)夫妻が肉体労働や屑拾いから少しづつ少しづつ蓄えを増やし、やがて何人もの人を使うような企業に家業を展開させる姿にも驚かされ、大学教授で高い教養を持つ姜尚中さんが、文盲で地を這うような苦労をした母についてそのすべてをさらけだして「力強く生きたこと」を書きつくしていることにも感動しました。80代で亡くなった母上が、文字が書けないために遺したテープの場面を読んだ時には、思わず涙が出てしまいました。読み書きができないからこそ、書き残すのではなく記憶した全ての歴史を息子に語り聞かせ、また語り遺した母。

それ以上に、在日として生まれ、日本人の中で育つうちに「チョーセン」であることに違和感やかすかな嫌悪を感じていた著者が、ご自分のルーツである朝鮮半島を訪れた際に、民族の誇りを体感して、永野鉄男から姜尚中に変わっていくところに強い感銘を受けました。「民族の誇り」そんなことを今の日本人子供たちはいつか感じることができるのかなあ。また、そんなことを意識せずに成長していけることは幸せなのかも。。。と、いろいろと考えさせられました。

久々の一気読み。私も人に勧めたくなる一冊でした。

 

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