検察官大友秀樹の友人で介護企業『フォレスト』に勤める佐久間功一郎は、顧客データを持ち出し退職するが抹殺されてしまう。
大友たちがそのデータを分析したところ、ある介護事務所の顧客の異常な変死が発覚する…。
社会における様々な矛盾と歪んだ現実の中で、人間の尊厳、もがき苦しむ人々の絶望を抉り出す。
日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品。王様のブランチのBOOKコーナーでの絶賛されっぷりがすごかったのと、「ロスト・ケア」というタイトルにひっぱられて書店へ。おんなじことを考える人が多いのか、一軒目の本屋さんにはすでになく、駅前まで行ってやっと最後の一冊を購入。検察官の父は億単位の入居金で高級老人ホーム「フォレストガーデン」という安全地帯に入居した勝ち組。でも、日本は介護保険の導入で家庭介護にウェイトが置かれるようになり、介護される老人の状態によっては、家族や親族が追い詰められるような状況に置かれる・・・そこで。。。というSTORY.
物語は、最近流行りの登場人物ひとりひとりの目線から状況が時系列にあぶり出される構成。ちょっとひっぱりすぎかな~という部分も感じましたが、後半はちょっとしたどんでんがえしや、まさに「現代」を感じさせるデータ分析なども織り込まれ、犯人が動き出すあたりからぐっと惹きつけられます。ところどころに「若さ」が見え隠れするところがもうちょっとかなあと思う部分もありますが、今後が楽しみな作家さんです。
「人間の尊厳、真の善と悪を、今を生きるあなたに問う!」というコピーを見ながら、やっぱり安全地帯で老後を送れるように、無駄遣いはやめようっと・・・と、しみじみ思いました。
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