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ピカビア通信

アート、食べ物、音楽、映画、写真などについての雑記。

一瞬の夢

2008年08月24日 | 映画


ついこの間の30度以上の日々が嘘のように、最高気
温が20度そこそこの涼しさだ。
結局、脳みそが沸騰するような暑さの手前の暑さくら
いが好きなのである。
皮膚に暑さの記憶が残っているこの時期、それらを一
気に忘却のかなたに運ぶ冷たい雨、恨めしいくらいだ。
なんてことを考えてしまう、今日の雨であった。

スノッブなM氏に貰ったジャ.ジャンクーの「一瞬の
夢」を、やっと観終えた。
主演は、ジャンクー組とも思える、「Mrオクレ」と
あの人を足して二で割ったような、えーっと思い出せ
ない、名前が出てこない。
あの人だよ。
本職は俳優ではなく、何だったか。
歌手だったような。
<ここで、出演した映画を調べる>
が、代表作が思い出せないので調べようがない。
確か「三池崇史」の映画に出ていたような。
そこで、「三池崇史」で検索して、一つ一つ映画をチェッ
ク。
判った、「田口トモロヲ」だ。

映画は、「Mrオクレ」と「田口トモロヲ」を足して二で
割ったような主人公が日常を漂白する、その姿を追って
いく。
彼はスリのリーダーで、決して極悪人ではなく、ちょっ
と悪いという程度の人間だが、希望も見出せなく、日
常を刹那的に流されていくのだ。
その様を淡々と描いていくのだが、基本的にはジャ.ジャ
ンクーの代表作「青の稲妻」と同じような内容である。
となると、これが、「青の稲妻」の修作的な作品と位
置づけられるのかもしれない。
淡々としすぎて、物語に起伏もなくまるでドキュメンタ
リーのようなと思わせるのも他のジャ.ジャンクーの作
品と同じで、所謂テーマ性というものは浮かび上がっ
てこない。
しかし、これこそが彼の映画の特徴でもある(だらだ
らと長く、絶対受けない映画であることは断言できる)。

画面に映るのは、誇りっぽい土色の世界だけで、一般
的に美しいと言われる風景も、派手な色使いの舞台装
置もなく、悉く受けない要素ばかりの映画なのだが、
これが世界である、と思わず確信するような力を持っ
ている。
考えてみれば、ゴダールの「勝手にしやがれ」なども
同じ内容であるし、日常を漂白する人間というのは、
別に今に始まったことではなく、常に存在するという
より本質的に誰もがそうであるということなのだから、
こういう映画は常に作られ続けてもおかしくない。
が、今はあまりに物語の時代である。
単純な構造の物語ばかりをほっするのは、それだけ視
線が表層のみに向かっているからなのだろうか。
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