和歌山電鐵は南海電鉄から貴志川線を譲渡されて誕生したローカル鉄道である。
この路線はねこを駅長として採用し、勤務させたことで注目された。
いわば地域再生の成功事例ということだが、ネコ好きにとって見逃せない美談である。
たまという三毛猫に駅長のコスプレをさせ、乗客とふれあいの場を提供するというアイデアで、それをネコの健康も考えて真面目に取り組んでいるところがいい。
たま駅長はネコブームの先駆けといえるもので「ネコが流行っているから使おう」というあざとさがなかった。
練られたマーケティングにもとづくものではない。
たまは貴志駅近くのお店で飼われていたが、駅舎と周辺の再開発で家を失い、困った飼い主が新たな社長に相談、ひらめいた社長が駅長として働いてもらうということにした。
たまは期待以上の精勤ぶりで新生和歌山電鐵の乗客増に貢献し、とある民間試算では11億円の経済効果をもたらしたという。
前回和歌山に来たときは残念ながらたまに会えず、たまは昨年死んでしまった。
16才だったというからネコにしては割と長寿といえる。
今は2代目駅長ニタマが貴志駅で勤務している。
ニタマは保護された野良ネコで伊太祈曽駅に勤務しつつたまの休日に貴志駅で駅長代理をやったりしていた。
たまの死で貴志駅長に昇格したのである。
一日乗車券を買ったので和歌山駅からニタマが勤務中の貴志駅まで行ってみた。
やってきたのは「うめ☆電車」で紀州名物梅干をモチーフとした車輌でなかなかよくできている。
単線の線路をごとごとと貴志駅までいくと予想通りのにぎわい。
ニタマは駅舎の中の涼しいところで昼寝をしていた。
駅構内にグッズ販売をする一角があり、観光客で一杯だった。
ほとんどが若者で海外旅行者と思わしき人も多い。
私のようなひねくれ者のネコ好きからすると「流行っているから来る」というのはちょっと違うと思ってしまうのだが、売上に貢献しているなら結構なことかと思う。
少し土産を買って来た電車の折り返しに急いで乗った。
「たま電車」が来て、車輌内部はたまのキャラクタで埋め尽くされていた。
イキった高校生が長いすで寝ながらスマホゲームに興じていた。
そもそもが生活路線と路線沿いにある神社の参詣用というのが貴志川線の主要客層だと思われ、ネコ好きだけの路線でもあるまい。
ネコブームが去った後の貴志川線の将来が危惧される。
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