扶桑往来記

神社仏閣、城跡などの訪問記

歴史コラム #48 桃と葡萄の昔話

2020年03月30日 | エッセイ:海の想い出

コラム48回目は桃の話。

薩摩の話を続けてしまったので軽い話にしようと思った。

 

果物や野菜はほとんどが舶来の産物である。

今ポピュラーな果物はバナナ→リンゴ→ミカンということらしいが、全部が舶来。

古いものを探すと桃と葡萄。

これらは記紀神話に登場する。

イザナミに死に別れたイザナギは黄泉国に逢いに行く。

すると愛する妻は無残な亡骸となっていてそれをみられたイザナミは鬼を放ってイザナギを追う。

鬼婆に投げて時間かせぎをしたツールが山葡萄であり、雷神率いる軍勢を封じたのが桃の実であった。

 

桃は中国では仙果である。

一番わかりやすい例が孫悟空。

お猿さんは武威無双、天帝になだめられて桃園の管理人に収まった。

そして不老長寿の桃の実を食いまくって大騒ぎ、お釈迦様に封じられてしまう。

そして三蔵法師のお供となることで放免、法力がお猿さんの暴走をこらしめる策、つまり仏道こそ最強ということになる。

 

桃も葡萄も仏道と共に日本にもたらされたのだろう。

葡萄は薬師寺の本尊の台座に刻まれ、山梨に葡萄の房を持った薬師如来像がある。

そして私見ながら仏像が持っている宝珠は桃だと思う。

明治まで桃や葡萄は貴重なおやつだったようだが桃は歴史の舞台に度々登場する。

壬申の乱の時、関ケ原の天武天皇は地場産の桃を必勝祈願で兵に配った。

この故事を知っていた家康が本陣にしたのが桃配山。

安土桃山時代も縁起をかついだものかもしれない。

 

そんな話をダラダラ書いていたら紙幅が足りず桃太郎話を次に送った。


津久井城址

2020年03月25日 | 城・城址・古戦場

取材に使うクルマを入れ替え春到来、本来は史跡巡りに取り掛かろうという頃である。

ところが新型コロナウィルスの流行がいよいよ日常生活を侵食し始め緊急事態宣言下に置かれることになった。

つまり「集まるな/移動するな/引き籠れ」ということで私のように走り回って情報をとるのが仕事の者には致命的な事態である。

いつ収まるか五里霧中、万が一の場合最後の取材になるかとも思いつつ家から近い津久井城に出かけてみた。

 

我が家から西へ40kmほど、うらうらの陽気の中、丹沢山系に近寄っていくと山地と平地のキワが津久井城。

北条氏は本拠小田原城から今川武田が侵攻してくる山岳地帯に堅固な出城群を配置した北方の要が鉢形城、武田の当方最前線を担う岩殿城小山田氏への抑えが鉢形城、小田原との中間地点が津久井城ということになる。

 

やってきてみれば緊急事態宣言などどこふく風、花見客で城址の公園は大盛況、なるほどちょうど満開である。

かつての城主内藤氏の菩提寺功雲寺によってから資料館のある駐車場に行くと大行列、山城に行って駐車待ちというのは花見シーズンならでは。

ダム側に回ってみてやっと駐車できたので北側から城山に登っていく。

 

比高は180mというから結構な高低差ではあるが勾配が急ではなく登山道として整備されているので登りやすい。

驚くのはハイキング姿の人々に混じってどう見ても花見客、かなり高齢のじいさんばあさんも登っていくこと。

「密」というほどでもないが人影が途切れることがない。

 

津久井城の縄張は山城の常道として頂上部を削平して曲輪を配し、尾根上を連絡通路とし堀切を造る。

特徴としては竪堀を幾筋も設けていることであるが草木に埋もれてよくわからないのが残念。

 

さほど息が上がるようなこともなく本城曲輪に到着、四方に眺めがよく武田侵攻に備える境目の城としては立地として適地といえる。

ダム湖は全くの人造湖で往時は相模川が流れる断崖絶壁の谷。

よって守りは南側に集中し、城兵が駐屯する根小屋も南の山麓にある。

 

北条武田の合戦といえば武田勢が小田原城を囲み落とせず甲斐に引き上げる背後を北条勢が狙った三増峠の合戦が有名。

この峠は津久井城東南5kmにある。

要衝にある割に実戦の場として津久井城はあまり出てこない。

豊臣秀吉の北条征伐時には八王子城が陥落するとあっさり開城、間もなく役目を終えた。

 

南側に回ると資料館もあるのだが花見で大盛況、駐車場の混み具合から密であろうと思い北側から降りて撤収。

 

思えば九州から帰ってからほとんど島津本の編集にかかりきりになっていたので城廻も1年ぶり、当分移動制限がかかるだろうから取材撮影再開は見通しが立たない。

 


悪霊退散祈願 -深大寺-

2020年03月16日 | 日常のよしなしごと

コロナウィルス拡散防止の動きはいよいよ切実になってきた。

東京も外出自粛が世論となってきつつあり。

ちょっと外出したついでに深大寺に御参りに行ってきた。

ここの元三大師は魔除け疫病除けの御利益なのである。

今年は元三大師像が特別公開だったのに早々に延期されていた。

珍しく魔除けステッカーを買ってみた。

 

ワクチンも治療法も手探りとなれば後は神頼み。

昔の人は伝染病が流行するとこぞって神社仏閣にお祈りに来た。

その密集行動がまたウィルス拡散を呼び込むという悲劇も原因不明故。

 

日本の流行は他国に比べればささやかなものとはいえ、自分も感染-死亡も充分ありえる話。

身辺整理にかかった方がいいかもしれぬ。