扶桑往来記

神社仏閣、城跡などの訪問記

歴史コラム #9 海にかけた平安貴族の意地

2013年09月30日 | エッセイ:海の想い出

歴史コラム9回目は小野篁。

この人が私は大好きでいつか書こうと思っていた重要なネタ。

 

小野氏は初代遣隋使小野妹子をはじめ朝廷外交に秀でた一族。

桓武帝が久しぶりに派遣した遣唐使の副使になった篁は正史藤原常嗣と対立した。

常嗣は玄界灘に漕ぎ出してすぐに難破、修理を待つ間に仕上りのいい篁の船を取り上げてしまいこれに反発した篁は職務を放棄した。

要は上司に逆ギレしたのである。

これには前日譚がある。小野一族にかつて渡海にびびって仮病を使った正史の代わりに遣唐使を務め、帰りに難破して海に沈んだ人がいた。

「俺は身代わりにはなるまい」と篁は思っただろう。

そして罪を問われて隠岐に流される時、有名な歌を公表する。

「わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと ひとには告げよ あまの釣船」

この歌、恋人と別れざるを得ない悲哀の歌、と考えるのが自然で美しい。

ところが官の横暴によって流される背景を考えればむしろストレートな憤懣の歌。

「俺はしおしおになって飛ばされるのではないわい、覚えとけ!」となる。

 

篁は「魔界とこの世を行き来する」と噂された。

閻魔大王の使いとして罪人のこの世の所業を報告したといい、紫式部の弁護をしたともいう。

 

私は都合、3度会社を辞めたことがある。

きっかけはそれぞれ違うが、やめた会社を出る時、いつも「八十島かけて・・・」と自分に言い聞かせていたことを思い出す。

前回と今回の間に親父殿が急逝、ほどなく伯父も死去、葬式続きの中での執筆である。


武田徳川因縁の山城 -遠江・高天神城-

2013年09月13日 | 日本100名城・続100名城

親父殿に続き上の兄、伯父さんが亡くなって葬儀があった。

7月に親父殿が亡くなった際には参列していただいたのに急なことであった。

長くガンを患っており容態急変ということらしい。

 

帰りに遠州高天神城を見物。

難攻不落の堅城を謳われた名城である。

場所としては御前崎の手前、掛川の盆地と海の間に高い山がありその尾根を削平して築かれている。

南口から追手門を通り本丸まで登ってみた。

本丸は細長い平地になっていて手前に御前曲輪。

本丸からは遠くまで見通せる。

別の峰には西の丸などが設けられておりふたつの峰に独立した防御施設がある。

体力不足でそちらの方に行くのはまたの機会にしたい。

武田と徳川が獲りつ獲られつした高天神城。

最後は包囲された城兵を勝頼が後詰めに行けずに落城。

信長はこれを「勝頼の非情」として宣伝し、武田の結束を内側から削いでいった。


親父殿の墓にて

2013年09月07日 | 来た道

7月25日、親父殿は骨になった。

豊田市の場合、火葬場は松平郷の方、山際にある。
実家から親戚一同、バスでゆらゆらと30分ほどかけて行った。

道々、私が通った小学校だったり中学校だったり、野球部のライバル校の学区だったりと往時を思いだして懐かしかった。

現代の火葬というのは実にあじけなく、流れ作業のように肉体を焼いていく。
泣いているヒマもなく炉の扉が閉じられる。
ここは故人の姿形との最後の別れであるから、もう少しおごそかにやってもいいものだがノルマというのは遺族の感情に優先するものらしい。

骨になった親父殿の骨をみんなで拾い、骨壺に収める。
やり方は宗派によって違うのか地域によって違うのかよくわからないが、東京で義母の骨を拾った時は全ての骨を何とか骨壺に収めたのに対し、豊田では主要部分をより分けた後はちりとり状の道具で処分してしまう。

ふたたびゆらゆらと実家近くの会館に戻り、初七日の法要をやって精進落としをやり、葬儀が終わった。
真宗大谷派では7日ごとに法事をやる。
身近なもので集まれるものが座敷に集まり、菩提寺の住職がやってきてお経をあげる。

という日々を送り、本日9月7日が納骨だった。

朝から家人を連れてクルマで実家に向かい、昼に安城市のうどん屋で昼飯を食った。
住職が来て親戚でうだうだと世間話をしていたらやおら雨が降ってきた。
そういえば親父殿を荼毘にふす際も雷が鳴りひどいゲリラ豪雨だった。

雨間を狙っていそいそと墓場に向かい、墓のふたを開け骨を入れる。
真宗では骨は骨壺ごと入れるのではなく先祖の骨があるはずの地面に親族で手づかみに骨を蒔く。
なかなかユニークな趣向で他にやる宗派もなかろうし、私自身やったこともない。

特段の想いもなく、大きめの骨を選んでつかみ、ぽいといれておいた。

親を亡くし、姿を見失うということは想っていたよりも日常に近くあっけなかった。
こうして「俺も姿をなくすのだ」と考えると「諸行無常」という釈迦の言葉はなるほどと想われる。