扶桑往来記

神社仏閣、城跡などの訪問記

歴史コラム #49 桃太郎伝説と鬼ヶ島

2020年05月31日 | エッセイ:海の想い出

コラム49回は前回積み残しの桃太郎話。

 

桃太郎伝説はいろいろな作家が解釈と再定義を試みている。

中でも芥川龍之介説はおもしろい。

桃太郎が生まれる桃の実は例のイザナギを助けた桃の木から落ちたものとする。

黄泉の国産の桃太郎は用はニート、ほとほと愛想が尽きた爺婆に追い出された桃太郎は財宝に目がくらんだ犬猿雉と共に鬼の楽園に乱入、乱暴狼藉の末に鬼の子を人質に故郷に凱旋というのがそのストーリー。

そして鬼の子が長じて人間に復讐開始・・・

 

というのを枕に自分も桃太郎の再定義を披露してみた。

といっても岡山の伝説の紹介、これには昔、鬼ノ城に上った経験を元にしている。

備中の平野を北へ行くと吉備津神社の向こうに備中高松城、鬼ノ城は平野の尽きるところにある。

かつて吉備国は「穴海」といって瀬戸内海が内陸まで深く入り込んでいた。

桃太郎が攻め込んだ鬼ヶ島は海の向こうにあることになっているが、畿内から攻め込んだとすれば鬼ノ城は島のように見えただろう。

この仮設を元にしているのが岡山の解釈。

ヤマト政権から派遣された吉備津彦が地元豪族温羅を退治した史実が桃太郎と鬼に仮託されているという。

 

鬼ノ城から眼下を見おろすと遠くに瀬戸内海、平野の大部分を海と考えれば「おお海を桃太郎が進んでくるわ」と想像できる。

この経験を思い出して桃太郎話を書いた。

高松城の水攻めをした羽柴秀吉を悪のりで付け加えた。

 


「歴史で紐解く地方創生 Vol.3 島津一族」

2020年05月16日 | 文筆業として

単著18作目、紐解くシリーズ第3作。

昨年5月末に薩摩半島一周取材、以来半年閉じこもってようやく年明けに初稿。

薩摩藩成立までの当主を全て取り上げた。

信長、そして秀吉と家康との駆け引きは書いているこちらがはらはらした。

スマートでクレバーな印象がある島津家ではあるがそれは表面上のこと、その裏に大きな犠牲がある。

とかく「最も古い武家」で片付けられがちな島津家、家を保つということがどれほど大変かを思い知らされた。

戦国ものは織田、北条、武田、上杉、そして島津とやってきて大物は毛利、そして徳川、これらの料理法を考えておきたい。