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No629『十三人の刺客』~意外と楽しめたリメイク作~

「三池監督の腕が落ちた」とか、
「同じ時間観るなら、旧作を観た方がいい」とか、
「前半はいいけど、後半はチャンバラじゃない」と
否定的な意見を聞いたり読んだりして
観るのはやめようとほぼ思っていたのが、
大好きな旧作を、三池監督がどう料理するか、
気になるところ。
この夏、旧作を観たばかりで、記憶も新しい中、
いちかばちか、賭けの気分で、レイトで観てきた。
帰りは最終電車にぎりぎりセーフという時間帯にもかかわらず
そこそこ観客が入っていて、人気の高さもうかがえた。

率直な感想をいえば、意外におもしろかった。
最初の方こそ、
旧作に登場する月形龍之介の顔がちらついたりしたものの、
嵐寛寿郎の役として、松方弘樹が出てきて、
腹の底からの落ちついた声を聞いて、やっと安心できた。
やはり声は大事だ。
あとは段々と世界に入っていけた。

西村晃のような悲壮感あふれる侍は
現代の役者に無理と
三池監督が思ったか思わなかったか?
私は旧作を観て、涙したけれど、
リメイクとなる本作では、
三池監督の独自色を楽しむ感じで
これはこれと割り切って観て、
その違いを楽しめた。

冒頭、主君明石藩主の愚かさを直訴するため
家老の間宮が上申書を前に、門前で自害する。
腹を十文字にかっさばき、というのを
リメイク版では、
肉を断ち切る音もきちんと入れて
アップでじっくり映す。
ファーストシーンからして
「肉を斬る」三池色が全開!
私としては、あんなえぐい音は聞きたくないけれど、
ぎりぎりと数十秒かけて撮る。
この感じは、ラストの藩主を殺すシーンに
ちゃんとつながるわけで、
出だしからして「俺の映画を撮るぞ」という意気込みを感じた。

旧作が白黒映画だったのに対し
本作はカラー。

前半の愚かな明石藩主を討つ謀略の算段は
闇の中、行灯の炎が、
どの場面でも印象的なくらい強烈に灯っていて
「この映画は炎の映画」かと思うくらい
どの場面でも、火が映っていた。

刺客たちが、明石藩主のご一行を早回りするため
山中を歩くシーンをリアルに描き
ハイキングのような場面だとか、
片岡千恵蔵役の役所広司も、戦闘に加わってゆくとか、
旧作との違いが、おもしろさに変わっていく。
侍でない山の男、伊勢谷友介は、
まさにスパイス的存在。

旧作に及ばないまでも
追いつこうとするエネルギーや工夫のアイデアは
随所に感じられて、パワフル。
馬が駆けてゆく迫力もあり、
役者の中では、山田孝之はじめ、それぞれに存在感があった。
リメイクはリメイクで、やっぱりいいなと思ったのが
単細胞な私の正直な感想。

願わくは、せっかリメイクしたので
1年後でいいから、旧作のスクリーン上映を
実現してもらえると嬉しい。
リメイクには、そういう意味もあると思うのだけれど…。

末尾ながら
旧作では、13人対50人の対決のクライマックスを
リメイクでは、13人対300人に膨らませたことで
チャンバラは、チャンバラでなくなったのは必然。
肉弾戦となり
運動会の騎馬戦のようなイメージにみえた(笑)。
でも、これはこれで興味深かった。

明石藩主たる稲垣に
人間くさい言葉「痛い」と言わせるとか、
少ししゃべりすぎだが
これも脚本冥利。

旧作に対して、一歩も引かない構えで
見事リメイクをつくりあげた三池監督は
やっぱり凄いと私は思いました。
さてさて、観られた皆さんの意見はどうでしょうか。
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