goo

No357「美しき諍い女」~画家とモデルの間の緊張感にぞくり~

5分の休憩をはさみ、4時間近くと、とっても長い作品。
しかし、最初の方、一日の疲れで、少し眠気に襲われたものの、
描く側と描かれる側の緊張感が伝わり、
特に、後半、おもしろくて、一気に観終わった。

絵のモデルのエマニュエル・ベアールが
窮屈な格好を続ける苦痛の中で、
絵に対していつしか真剣になり、
画家のミシェル・ピコリを鼓舞するほどに勝気になってゆく姿が
とてもすてきだ。

木炭やペンや筆でカンバスに描きこんでゆくのを
じっくりと長回しのカメラでとらえ続け、
その音といい、
うっとりと見入ってしまった。

絵の中に真実はあるのか、
モデルを前に、何をカンバスに描き込めるのか、
画家も、モデルも、不安を抱えつつ、格闘しようとする、
何枚もデッサンを重ねる。
二人の間にいつしか生まれる、共闘感というか、連帯感、
ともに感じている、手ごたえがあるような、ないような緊張感が
リアルに伝わり、
観ている側まで、絵を描く怖さや深み、熱さを
共有できたような・・

かつてモデルであった
画家の妻リズ(ジェーン・バーキン)が
夫や絵のことが、気になって仕方がない感じもいい。

大きな屋敷の空間がとても心地よく、
長い廊下、奥行きを生かした構図が生きているし、
アトリエにこもったシーンが大半でも、全く窮屈な感じはなかった。

1991年、ジャック・リヴェット監督作品。
私、実は、この監督のよさが、まだあまりよくわからないのですが、
最初と最後の、演劇の一場面を観ているような
いろんな登場人物の間をたゆたうようなカメラは、
実に気持ちがよかったし、
さりげない感じで、魅力に満ちた監督さんの一人になりつつあります。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
« No356「喜劇 ... 水俣の海と人... »
 
コメント
 
 
 
良さは (ライリー警部)
2008-06-24 06:30:41
恐らくほとんどの人には分かってないかもしれません。
良いかどうかも含めて。
 
 
 
本当に (なるたき)
2008-06-25 01:32:54
映画というのは、汲めども尽きぬ泉のようで、
リヴェットの良さがまるでわかっていない私のような者でも、
なんというか、昨夜、リヴェットの映画を観ている間の濃密な時間、陽がさす明るい中庭や、広いアトリエで、さまざまな会話が交わされる、その空間が、妙に懐かしく思えたりもして、全く不思議なものです。
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。