日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

“草なぎ事件”謝罪会見とコンプライアンスの精神

2009-04-28 | その他あれこれ
先週の酒に酔って全裸になり「裸で何が悪い」で捕まった草なぎくんの事件、その後マスメディア・世論のトーンがだいぶ変わってきているようです。

草なぎ君に対しての世論の主流は、「かわいそうに」「捕まえる必要あったの?」「家宅捜索は行き過ぎ」「早めに復帰させてあげれば」と、かなり同情的なものが主流です。この同情世論の発生要因は、本人の謝罪会見に尽きるのではないでしょうか。あまりに正直なつくられた臭いのしない「心からの反省」を印象付けた会見は、釈放のその日に行われた対応の早さと相まって大きな効果を生んだと言っていいと思います。「今の気持ちは?」の質問に一言「辛いです」、彼のまっすぐな人柄と心からの反省の気持ちをこれほどにまで的確に伝えた一言は他にないと思います。

この会見から不祥事対応広報として学ぶべきは…
①対応の早さ
②聞かれたことに対して包み隠さず答える真摯な対応
③心からの反省の弁
の3点です。
対マスコミ不祥事対応を乗り切る「3点セット」と言っていいかもしれませんね。

もちろん、今回の事件は「被害者なき逮捕・勾留」であり、だからこそ皆が同情的に受け止めてくれたとも言えますが、仮に謝罪会見が亀田親子のようなものだったらどうでしょう。こうすんなりと世論が同情的な方向に向ったとは思えません。まぁマスコミ記者も人の子ですから、真摯な反省の気持ちが伝わるなら悪くは扱わないでしょうし、取材のトーンひとつで随分と一般人の受け取り方も変わってくるのです。

コンプライアンスの精神とは、自分(あるいは自社)が法令やモラルに「違反」するようなことをした場合に、仮に誰もが犯しうるものであったり、誰かに迷惑がかかっていないものであったとしても、「違反」したという事実を真摯に受け止め素直に「反省」できる心をもつことであると思います。「違反」行為にもかかわらず、「反省」を感じさせなかったり、形式的な反省の弁しか出てこなかったり、逃げようとか隠そうとすることは、取材をする側やさらにその先にある世論の神経を逆なですることになる訳です。そういった失敗の例は、東横インのN前社長や船場吉兆の“ささやき女将”など、過去から最近に至るまで枚挙にいとまがありません。「違反」の重みを真摯に受け止め、心から「反省」をすること、その大切さを学ばせてもらった貴重な会見でした。

さて前回の主張の繰り返しとなりますが、所属事務所ジャニーズは一向に音無しの構え変わらずです。ちなみに、以前本ブログでも取り上げた北野誠“降板事件”の方は、詳しい降板理由こそ「北野発言関係者にさらに迷惑をかける」とのことで明らかにはされなかったものの、松竹芸能の安倍彰社長が北野氏本人とともに謝罪会見を開いたそうで、企業としての“落とし前”はそれなりにつけたようです。「違反」を犯した(北野氏は犯罪者ではありませんが)所属タレントの管理責任上の観点から、企業のトップ自らが世間に対して責任の所在を明らかにした訳です。コンプライアンス経営の観点で考えた企業の最低限の「常識」は、守られたと言えるでしょう。

一方ジャニーズは、タレントの謝罪会見は弁護士任せ。トップはどんな事件が起きようとも絶対に姿を現さず、マスメディアには「報復」をチラつかせて黙らせる、そんなやり方は今更ながらに腹立たしい限りです。特に今回は、会見取材の各社に会見の模様を映した写真や映像をウェブやBS・CS放送で使用することを禁じた上、テレビには「生放映不可」なる条件をつけたとか、まったくどこまで厚顔無恥な振る舞いを続ければ気が済むのか。言うことをハイハイ聞いてしまうマスコミもマスコミですが…。

草なぎくんへの同情意見の増大にともなう世間的な批判の矛先は警察権力に向けられているようですが、それはどうでしょう。むしろ彼を“見殺し”にして“見せ物”にした上、企業としての責任の所在を明らかにせず「反省」を表す真摯な態度ひとつ見せない、所属事務所のジャニーズこそもっと責められてしかるべきであると思います。