日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

マスターズ優勝カブレラに学ぶ、窮地での精神的強さの重要性

2009-04-13 | ニュース雑感
今年のマスターズは示唆に富んだドラマが最後に待っていました。

石川遼くんの参戦でいつになく話題となったマスターズ・ゴルフ・トーナメントですが、最終日最終組を終えてトップにペリー、キャンベルのアメリカ勢とアルゼンチンのカブレラの3人が12アンダーの同スコアで並び、三つ巴でのプレーオフに突入しました。

ドラマはこの直後に待っていました。プレーオフ1ホール目の18番、ペリーとキャンベルの1打目はフェアウエイをとらえたものの、カブレラのショットは右の林へ。しかも大木の根っこ付近という最悪のポジション。「一度出すしかないですね」と実況アナが思わず口にするほどの状況下、木の間からグリーンを狙ったカブレラのリカバリーは、前方の木にあたりながらもフェアウェイに出るラッキーショットとなりました。この後カブレラは第3打をピン横2.5メートルにつけての見事なパー・セーブ。

これに対して、第一打で楽々フェアウエイを捉えたペリーとキャンベルは、二人揃ってピンまで150ヤード前後の第2打がグリーンを捉えられず、絶好のバーディ・チャンスを逃すという信じられない展開。しかもキャンベルは第2打がバンカーにつかまり、リカバリーが決まらずここで脱落。ペリーとキャンベルの一騎打ちとなった2ホール目は、ペリーが第2打をグリーン・オーバー。動揺したのか、そのリカバリーまでもが大きくそれて万事休す。ここを手堅くパーにまとめたカブレラが見事優勝を手にし、勝者のグリーン・ジャケットを初めてアルゼンチンへもたらしたのです。

このゲームの最大の勝負の分かれ目となったのは、技術ではなく精神力でした。ブレーオフの第1打を、一人だけラフに打ち込むと言う大失態を犯しながら見事なリカバリーを見せたカブレラ、フェアウェイをキープしながら「優勝」の二文字の重圧に押しつぶされたペリーとキャンベル、この差が勝者と敗者を決定的に分け隔てたのでした。

やはり称賛に値するのはカブレラの精神面の強さでしょう。大舞台のプレーオフ初っ端のあの場面で優勝が明らかに遠のくような大失敗を犯したら、普通なら「落胆」「焦り」「後悔」で大きな精神的ダメージを負い、リカバリーはかなり難しいでしょう。しかし間髪置かず放った彼の“前向きな一打”には迷いが微塵も感じられず、まさに優勝への執念がラッキーバウンドを生み、途絶えかけた流れを呼び戻したのです。

一方有利に進めていたはずのペリーとキャンベルの二人は、プレッシャーから信じられないほど精神的に追い込まれていました。しかも林から戻ったカブレラが、見事に第3打をピンそばにつけるに至って、もう余裕は全くなくなっていたのでしょう。キャンベル脱落後、2ホール目に移った段階で勝者は見えていました。先の大失敗でかえって肩の力が抜けた感じのカブレラ。一方のペリーは1ホール目第2打の失敗が頭から離れなかったのでしょう。フォームがバラバラに思えるほど、突っとっていましたから。彼は失敗の後に平常心を失い、優勝の栄冠はスルリと逃げていったのです。

ビジネス的にも学ぶモノ多しです。失敗にぶち当たった時、それとどう向き合うか、特に精神的な部分でどう対処していくのか、次なる成功と失敗の分かれ道はそんな部分にあるように思います。「落胆」「焦り」「後悔」は、何の生産的な次の一手を生んではくれません。失敗をしてもなお前向きに立ち向かう精神的なタフさを持ってこそ、最終的な成功は手にできるのだと、カブレラのゴルフは教えてくれたように思います。

優勝を争うゴルファー同様、孤独に闘う経営者も同じこと。やはり、成功の陰にポジティブ・シンキングあり、ですね。