日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

ベスト電器他事件関係企業は即刻、事実関係の独自調査→公表を

2009-04-17 | ニュース雑感
障害者団体の定期刊行物に適用される割引郵便制度を悪用した郵便法違反事件が発覚し、郵便法違反の疑いで大手家電量販店ベスト電器販売促進部長ら数人が逮捕されました。

ベスト電器は、広告代理店博報堂エルグから「格安の郵便料金でDM発送ができる」と割引郵便制度を悪用したスキームを提案され、「違法との意識はなかった」との判断から採用したとのこと。一方の博報堂エルグは、印刷・通販大手ウイルコから提案された同スキームを検証せずそのままベスト電器に紹介した模様。ウイルコは障害団体に近しい大阪の広告代理店新生企業の発案を採用してスキーム構築し、障害者団体である白山会などの刊行物と商品パンフレットを同封したDM計約200万通をベスト電器の顧客に郵送。割引制度の悪用で通常1通120円が1通7円に割り引かれ、正規料金との差額計約2億4千万円を不正に免れたというのが事件の概要です。

ベスト電器は新聞社の取材に「違法性の認識はなかった。博報堂からの紹介だったので信用してしまった」。博報堂エルグは「『制度上問題ない』というウイルコの言い分を鵜呑みにしてしまった。違法性の認識はなかった」と話しているそうです。もしその証言が本当なら、揃いも揃ってあまりにコンプライアンスに関する危機管理意識が欠如していると言わざるを得ません。普通の人間なら常識で考えて、120円の郵送費が7円になると言う提案は、聞いた瞬間に「何かおかしい」と思わなければウソです。

仮に提案の際に、「こうこうこういうスキームで、障害者団体の定期刊行物に同封する形なら、法的に問題なく1通7円でのDM発送が可能」との説明があったとしても、「法的にクリアできても、同義的に問題はどうなのか」との疑念を抱くことこそ、あるべきコンプライアンス意識であるはずです(実際には法的にもアウトだった訳ですが)。しかも、ベスト電器は家電量販業界大手、博報堂エルグは超大手広告代理店関連グループ企業です。ウイルコにしても東証2部上場の業界を代表する企業なのです。その3社が、「同義的にどうであったか熟慮する」、「スキーム自体を導入前に法的に検証する」、この2点に関してどちらか1点でもいずれか1社のチェック機能が働いていれば避けられた事件であったと思います。

そうやって考えると、どうもおかしく感じます。発案の新生企業から本スキームの原案を提案され採用したウイルコ、さらにそれをつないだ博報堂エルグ、最終的に提案を採用したベスト電器が揃いも揃って、このような“ザル”コンプライアンス体制であったとは考えにくいのです。そうです、おそらくうち1社あるいは複数社が、違法性を知りつつ「バレないだろう」という判断で手を染めた悪事ではないのかと思われるのです。

弱者保護の政策を一企業の利益追及の手段に使用した法令違反は曲げようのない事実です。そもそものスキームを提案したウイルコは当然のこと、ベスト電器、博報堂エルグ両社も決して被害者ではありません。それぞれの業界を代表する大手企業としての社会的責任において、大阪地検の今後の捜査進展を待つのでなく、1日でも早い事件の詳細な事実関係の調査・公表、ならびに各社の責任の明確化と再発防止策の提示をすべきであると考えます。この3社の今後の対応の姿勢、スピードこそが、各社のコンプライアンス意識のレベルを示すことにもなるのです。