日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ57 ~ 「カラーバス効果」で管理者教育

2009-04-22 | 経営
「カラーバス効果」をご存じでしょうか?

「COLOR BATH」=「色を浴びる」と言う意味で、意識していることに関係する情報が、意識していないとき以上に自分のところにたくさん集まるようになることを言っています。例えば、「赤いモノを探そう」と思って街に出ると普段よりも数段多く赤いモノが目についたり、自分が買おうと気に入った車ができるとやたらに道行くその車種が目についたりする効果のことです。誰にでもそんな経験はあるのではないでしょうか。

この「カラーバス効果」、ビジネス・パーソンにはものすごく役に立つものなのです。一番よく耳にするのは、成功した経営者の方々がよく口にする、「困った時に限って不思議と助けてくれる人に出会う」とか、「新しい事業に検討しているときに、思いもよらない古い知り合いとの再会が新たたな展開につながった」などという体験談の数々です。彼らは大抵口々に「ツイてました」と言うのですが、これは決してツイていたり偶然の出来事だったりではなくて、「注意」や「関心」が向いた事柄に関する「カラーバス効果」の成果に他ならないのです。彼らが、日常の意識の注意力を支配するほどに、真剣に自己のビジネスに取り組んでいたことの証でもある訳です。

同じように成功経営者がよく口にしたり、最近モノの本でもよく目にする「目標は紙に書いて毎日見るべし」というお話。これも間違いなく「カラーバス効果」です。「これをやるぞ!」「こうなるぞ!」と毎日紙に書かれた目標を見続けて心に誓いを立てていれば、自然と「これを成し遂げるために」「こうなるために」という観点をもってモノを見たり、考えたりするようになる訳で、確実に目標に役立つことがらが目につくようになり、成功への近道を探り当てることにつながる訳です。人間の能力ってスゴイですよね。

この「カラーバス効果」、組織管理上も大きく役に立つのです。中小企業でよく耳にする「あいつは管理職のクセに自覚がない」というダメ管理者の事例。このケースで一番多い根本原因は、「長年がんばっているから」「成績がよいから」管理職にしてやろうという誤った人事運用です。仮に人選が誤ってなかったとしても課長に任命するなら、管理職として「何をしろ」「何を心がけろ」をキッチリ伝えて昇格させたのでなければ、思ったように働かない責任の一端は任命した経営者自身にもあるのです。

「カラーバス効果」は、こんな場面でこそ働かせるのです。中小企業には、新任管理者が手本にできるような管理者がいるケースの方が少ない訳ですから、まずは明確に役割を“カラーバス”させる必要があるのです。できれば、辞令交付とともに、「○○をせよ」「○○を心がけよ」という紙(指示書)をパウチでもして渡し、「毎日見るところに貼っておけ」と指示するのがいいでしょう。この「指示書」はなるべく具体的に書くこと、そしてその指示内容が身に付いたら賞与査定時や人事考課時にほめた上で次なる「指示書」を出す、ここまでやれば課長の「カラーバス教育」の効果はかなり期待できること間違いありません。これこそ管理職の“役割の見える化”なのです。ここまでやってもできないということであるなら、「課長不適格」と判断してもいいでしょう。

自己の目標実現の原動力として、管理職はじめ企業内教育における個々のスタッフの「役割の見える化」手段として、「カラーバス効果」のビジネス・シーンにおける活用の場は豊富にあるのです。