温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

ボゴール郊外 ティルタサニタ温泉群 ティルタサニタ公園

2017年01月22日 | インドネシア
環太平洋火山帯の真上に位置する島国インドネシアでは、各地で火山活動がみられますが、火山が多いということは地熱資源が豊かであるということでもあり、その副産物である温泉もたくさん湧いているわけです。昨年(2016年)10月にインドネシアのジャワ島とバリ島で温泉巡りをしてきましたので、今回記事からインドネシアの温泉について取り上げてまいります。まずは首都ジャカルタを擁するジャワ島の温泉からスタートすることにします。
首都ジャカルタ(Jakarta)の南部にある人口100万の都市ボゴール(Bogor)。周囲に山が聳えるこの都市の周りには、個性的で面白い温泉が点在しています。ボゴールの中心部から約30kmほど北西へ向かった片田舎にあるティルタサニタ(Tirta Sanita)には、半径1kmの範囲内に興味深い温泉が固まっていますので、それらをハシゴすることにしました。


 
はじめに訪れたのは、こんもり盛り上がった丘を中心にして敷地が広がっている「ティルタサニタ公園」です。ゲートで入園料のRp12,000を支払い、半券をもらって園内へ入ります。


 
園内には子供用のプールや各種遊具がありましたから、地域の方々にとっては小さな遊園地みたいな施設なのでしょうね。



ゲートから伸びる園内通路を歩いて公園の中心に行くと、上画像のような巨大な石灰華ドームが現れました。このドームはグヌン・カプール(Gunung Kapur)と称するらしく、この公園のシンボルとなっています。重炭酸やカルシウムを多く含む温泉が湧出することによって、このような巨大な石灰華ドームが形成されたのでしょうけど、現在はお湯が止まっていますので、これ以上トラバーチンが成長することは無さそうです。


 
お湯が止まっているとはいえ、そのまま風化させてシンボルを失うことは避けたいのか、現在は上からホースで水をチョロチョロ流し、表面を湿らせていました。


 
園内で静かに水を湛える池の上にはレストラン(左or上画像)が設けられていたのですが、訪問時は池の周囲にバリケードが張り巡らされており、レストランなど池周辺の施設に立ち入ることはできませんでした。この池の先にはVIP個室風呂(右or下画像)と称する施設もあるようですが、こちらもバリケードの向こう側にあるため閉鎖中でした。



さて、上述の池を左に見ながら、巨大な石灰華ドームの左手にまわって奥の方へ進むと、上画像の建物に行き当たります。ここが今回の目的地である入浴施設です。池の上にある閉鎖中の個室風呂棟はVIPというクラスでしたが、こちらの等級はスタンダートなんだとか。玄関で靴を脱いで入館し、正面の受付で料金を支払うと、スタッフの女性が私の手首に赤いリボンを巻きました。どうやら支払い済証の代わりのようです。


 
ここは個室風呂専門の施設。個室はRp9,000とRp12,000という2種類の料金別に分かれているのですが、今回は後者を選択しました。廊下の両側に個室風呂がズラリと並んでいます。この廊下を歩いていると、岩手県の国見温泉みたいなツーンとくる刺激を伴う硫化水素臭が香ってきました。その匂いを嗅ぐと、期待に胸を膨らまさずにはいられません。



私が案内された部屋は9号室。2畳くらいの狭くて飾り気のない個室の中には、浴槽がひとつあるだけ。シャワーや腰掛けなどの備品類は皆無。壁の高さ約1.7mのところに釘が何本が打ち付けられているのですが、これは衣類を引っ掛けるためのものでしょう。このような質素な構造は、台湾やタイの個室風呂を連想させます。国や文化を問わず、モンスーンアジアではどこでも似たような個室風呂を造るんですね。Rp12,000でこの狭さなのですから、これより安い部屋はどれだけ狭いのかな?
でも、そんな狭さなんてここではどうでも良いのです。入室時の浴槽には既にお湯が張られていましたのですが、この湯船がすごい! 公園のシンボルである石灰華ドームを彷彿とさせるほど、全体が細かな鱗状の分厚く白い石灰華で覆われて、元の素材が全く分からないほどコンモリと盛り上がっているのです。その姿を目にして思わず「すげーーっ」と絶叫してしまいました。


 
無造作に削った壁から突き出ているパイプより温泉が注がれており、その雫が垂れる湯口直下には鱗状の模様を描きながら、小さな石灰華ドームが形成されていました。ここではお湯に触れる箇所全てが石灰華で覆われてしまうのです。


 
湯船の温度は40.1℃でpH値は6.49。湯口のお湯をテイスティングしますと非常に強い鹹味にビックリ。もしかしたら海水よりも塩分が濃いかもしれません。そして先述したように刺激を伴う硫化水素臭がはっきりと香ってきます。


 
浴槽は1人サイズですが、日本の湯船に比べるとかなり浅く、肩まで浸かろうとすると、思いっきり寝そべらないといけません。もしかしたら、元々はちゃんとした深さがあったものの、石灰華が分厚く付着することによって浅くなっちゃったのかもしれませんね。上画像で私が入っているような向きならば2人入れるかもしれませんが、この向きではとにかく浅いので、湯浴みした気分にはなれないかも。
先述したように湯船は40℃というぬるいお湯ですから、つい長湯したくなるのですが、非常に塩辛いお湯であるため、この程度の湯加減でも十分に火照り、10分も浸かっていると汗が止まらなくなりました。室内には「入浴時間15〜20分」と記されたプレートが掲示されていたのですが、なるほど、その時間設定には十分納得できます。
プリミティブな作りのお風呂ですから、循環ろ過なんてできるはずもなく、全量完全掛け流しの湯使いです。湯船のお湯は縁の上を越えて床へと流れ落ちてゆくのですが、そのオーバーフローによって、浴槽の側面には白くて美しい鱗状の模様が生み出されていたのでした。

硫化水素とカルシウムの両者を一緒に多く含む強食塩泉って、日本ではお目にかかれませんよね。泉質面で珍しいのみならず、石灰華が産み出した温泉造形美も楽しめる、マニアには堪らない温泉でした。個室風呂なので水着を着用せず裸で入浴できるのも嬉しいところです。


Jalan Raya Ciseeng, Desa Bojong Indah, Kecamatan Parung, Bogor


公園入園料Rp12,000
個室風呂はRp9,000かRp12,000のいずれかを選択。
備品類なし

私の好み:★★+0.5

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2 コメント

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Unknown (Lunta)
2017-01-23 00:58:54
K-Iさんのインドネシア・レポート、お待ちしておりました!
ティルタサニタは私もぜひ行きたいと思っているところ、K-Iさんはどのようにいらっしゃいましたか?
露天が有名ですが、こんな個室もあるんですね。
ここはやはり行かねば。
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Unknown (K-I)
2017-01-23 20:17:59
Luntaさん、こんばんは。ティルタサニタなどボゴール周辺の温泉は、一部を除き、ジャカルタの旅行会社に車の手配をお願いして行きました。各温泉とも、あらかじめメールで場所を説明しておいたので、渋滞を除けば(笑)迷うことなくスムーズに辿り着くことができました。
この個室風呂もすごいのですが、まだまだ序の口といったところ。次回記事は、おそらくLuntaさんもご存知の露天風呂(幕内力士級)、そして次々回はかなりワイルドな野湯(三役級)をアップする予定です。もし機会がありましたら、ぜひ行ってみてください。
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