温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

須賀川市 ひばり温泉

2015年04月15日 | 福島県
今月から「ふくしまデスティネーションキャンペーン」もはじまったことですから、今回から数回連続して福島県の温泉を取り上げてまいります。と言っても、一発目はキャンペーンの対象になりそうもない、温泉ファンからもB級感の強い施設として名の知れた須賀川の「ひばり温泉」です。派手な看板が目を引く国道4号沿いにある施設で、これまで目の前を何度も通りすぎていながらキッチュな外観に恐れをなし、尻込みして敬遠し続けていたのですが、台風による暴風雨に見舞われた半年前の某日、嵐をやり過ごす目的も兼ね、勇気を振り絞って初めて立ち寄ってみることにしました。


 
鳥居みたいな鋼鉄のゲートを潜って広大な駐車場へ。敷地内には温泉施設以外にも、骨董博物館と称する施設や神社、そして閻魔様や大黒様に恵比寿様など、オーナーの好みと思しき対象を巨大化しちゃった数々が建ち並んでおり、まさに神や仏の闇鍋状態。しかも随所にメッセージ性の強い看板があちこちに掲示されていて、鬼気迫る不気味なアトモスフィアが漂っています。「探偵ナイトスクープ」で取り上げられていても不思議ではないB級施設ですが、敷地に立ち入ったことによって、怪しい宗教に勧誘されたりしないのかなぁ。オイラ、無事に帰れるのなぁ。


 
付帯しているホテルを右手に見ながら、温泉施設の玄関へ。建物の塗装も独特なセンス。


 
受付カウンターで下足箱の鍵を預け、利用時間(90分や2時間など)に応じた料金を支払うと、更衣室のロッカーキーを手渡してくれました。ロビーの一角を占める物販コーナーとゲームコーナーに昭和的な郷愁を感じながら、その手前を通って浴室へと向かいます。物販コーナーに隣接するマッサージルームのガラスには「浪越式」と記されていました。「指圧の心は母心 押せば命の泉湧く」という名台詞と共に、ハッハッハッハッと高笑いする浪越徳治郎氏の声が聞こえてきそうです。


 
マッサージルーム前に続いて、今度は食堂の前を通過。電照のゲートが珍妙というかエキセントリックというか…。東京ではなかなかお目にかかれない感性です。


 
食堂の奥に「芸能人様の出入口」なるものを発見し、思わず苦笑してしまいました。なんじゃこりゃ。ここまで来ると、不気味を通り越して面白くなってきます。10年落ちのクラウンに乗った無名演歌歌手が、派手なジャケットとギラギラな装飾品を身につけ、肩で風を切りながらここから入場してくる姿が目に浮かんできます。
屋外の看板のみならず館内にも、メッセージ性の強い文言を記したプレートが隙間なくベタベタ貼られているのですが、それらに記された日本語はちょっと不自然であり、考えて伝えようとしているのではなく、思いつきのメモ書きをそのまま印字しちゃった感じです。たとえば「ひばり温泉とは野鳥名です」なんてカタコトな文言は、外国語を無料翻訳ソフトで日本語に変換したときじゃないと、なかなか出てきません。むしろ変な言葉遣いだからこそ、目を惹かれるのかもしれませんが。


 
摩訶不思議な施設ですが、きちんと保健所から飲泉許可を受けており、上画像のような飲泉用のお湯汲み場が設けられていました。独特な世界観に満ちた施設でありながら、守るべき規則はしっかり守っているんですね。立派じゃないですか。このお湯汲み場を横目にしながら更衣室へ。


 
広い更衣室にはスチールロッカーがたくさん並んでいました。受付で手渡されたキーと同じ番号のロッカーを利用します。郡山エリアの温泉施設では、なぜかこの手の縦長スチールロッカーを採用する施設が多い傾向にありますね。広くて備品類も揃っており、清掃もちゃんと行われているので、使い勝手はまずまずです。


 
浴室もかなり広いのですが、造りが少々古いためか天井が高くなく、床面積の割にはあまり開放感が無いような印象を受けます。内風呂には、温泉を張った大・中・小の各浴槽の他、サウナ、水風呂、アカスリ室、子供用足風呂など、バラエティーに富んだ設備が配置されています。
洗い場にはシャワー付きのカランが計10箇所。浴室の広さの割に、カランの数がちょっと少ないかもしれませんね。この洗い場にも小首を傾げたくなるようなメッセージが掲示されており、たとえば「ひばり温泉の神様健康第一と体はストレス解消」とか「シャワーをそのつど出しては止め節水願。大衆浴場は見た目」とか、なんとなくニュアンスとしては伝わってきますが、単に句読点の打ち方だけでは解決できない国語として問題を孕んでいるような気もします。でも悪気は微塵もなく、お客さんに好意を懸命に訴えようとするハートは伝わってくるので、読めば読むほど微笑ましく思えてきました。


 
主浴槽は目測で5m×10mというかなり大きな造り。41℃前後でややぬるめの湯加減でしたから、じっくり長湯するお客さんが多く見られました。一方、その左側に隣接する副浴槽はおおよそ3m×5mで、館内の説明によれば主浴槽よりも熱い設定となっているようですが、私の体感としては主浴槽とほとんど変わりなく、湯口から吐出されるお湯の温度が若干高いかなといった程度でした。また主浴槽の手前側にも5~6人サイズの小浴槽があり、43℃と記されたプレートが掲示されていたのですが、実際にはこちらも主浴槽と大差なく、多少は熱いかなといった湯加減に抑えられていました。
いずれの浴槽でも縁からしっかりとオーバーフローしており、掛け流しの湯使いが実践されています。


 
各浴槽の湯口や壁でもメッセージの洪水状態となっており、お湯に関する説明や効能、入浴方法、マナーなどが、長い文章によって述べられていました。一つ一つをここで取り上げることは避けますが、文章の調子が宗教めいていたり、非科学的だったり、この温泉には含まれていない成分(硫化水素等)に関する効能も書かれていたりと、かなりチンプンカンプン。読んでいるこちらがパニックになりそう…。


 
 
屋外の露天風呂も看板だらけ。そもそも周囲は目隠しされているので、景色を楽しめる環境ではありませんが、それにしても不思議なメッセージに溢れており、訳の分からぬ言葉の洪水に圧倒されそうです。その一部は看板製作業者や古物商業者の大きな広告なのですが、どうやらそれらの業者とこの「ひばり温泉」の運営会社は同じ母体のようであり、それゆえに施設内には看板やプレートなどで埋め尽くされているのでしょう。

露天ゾーン全てに対して鋼材の骨組みが組み立てられているのですが、屋根が張られているわけではないので、風はもちろん雨もどんどん入り込んできます。そのかわり岩風呂の上には東屋が掛けられていますので、屋根の下で露天風呂に入るのであれば雨は避けられます。私が訪問した日には台風で篠突く雨に見舞われていたのですが、この屋根のお陰で豪雨の中でも湯浴みをすることができました。


 
怪しげなメッセージと品に欠ける看板の数々で、入浴客の感覚が錯乱しそうになりますが、既に温泉ファンの皆さんがおっしゃっているようにお湯のクオリティは良好であり、温泉を引いている槽で完全掛け流しを行っている点は大いに評価したいところです。
こちらのお湯は郡山エリアでよく見られるタイプであり、わずかに山吹色を帯びた透明で、浴槽に用いられている水色のタイルは、温泉成分の付着によって黄色に染まっています。口に含むと薄いミシン油系の風味を伴いながら、重曹味や非鉄系の金気味が感じられました。また湯中では薄っすらとした泡付きがあり、滑らかなツルスベ浴感が実に爽快でした。

施設内は突っ込みどころ満載のメッセージに溢れており、その怪しさに今まで二の足を踏んで利用を躊躇っていましたが、実際に入浴してみますと、温泉としてはなかなか宜しく、浴感の良さには正直なところ感心してしまいました。湯船に浸かりながら看板の文言を読んで、漫才のようにひとつひとつツッコミを入れてみると、これまた意外に面白いもんです。
せっかくお湯が良質なんだから、余計な看板なんかでアピールせず、品よく勝負すれば良いのになぁ…なんていう想いを露天風呂に浸かりながら抱いたのですが、価値観が多様化していると言いつつも、実はネット等の情報により、かえって志向や感覚が一定方向へ固定化しつつあるという指摘もあるようですから、こうした個性的で多少ぶっ飛んでいる施設があった方が、社会としては健全なのかもしれませんね。


須賀川ぼたん温泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 40.1℃ pH8.7 動力揚湯 溶存物質1.064g/kg 成分総計1.064g/kg
Na+:324.1mg(97.78mval%),
F-:8.6mg, Cl-:240.6mg(46.63mval%), OH-:0.1mg, SO4--:127.1mg(18.20mval%), HCO3-:241.8mg(27.20mval%), CO3-:21.1mg,
H2SiO3:30.9mg, HBO2:60.3mg,
加水あり(温泉の供給量の不足を補うため)
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
循環消毒なし

福島県須賀川市滑川関ノ上22-2  地図
0248-63-1112
ホームページ

6:00~23:00 年中無休
530円/90分(時間に応じて利用料金が異なる)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

コメント (5)
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