温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

上諏訪温泉 宮の湯

2014年03月08日 | 長野県
 

上諏訪温泉は湖畔や駅周辺を中心に分布しているのかと思っていたのですが、よく調べてみると、そこからかなり南東へ離れた諏訪大社の上社付近でも湧出しているんですね。その事実を先日初めて知り、どんなお湯なのか体感すべく実際に行ってみることにしました。上社本宮の鳥居前を左右に横切る狭い路地を右に100mほど進んだところにある温泉旅館「宮の湯」です。「宮」とは言わずもがな上社本宮をさしているのでしょうね。こちらはれっきとした旅館なのですが、男女別の浴場入口が並ぶ外観は銭湯そのものであり、地元の方々にとっての憩いの場としての色彩が強い施設と言えそうです。


 
入口の戸を開けるとすぐに番台があり、腰掛けて店番をしているおばちゃんに湯銭を支払います。入口から浴室までまっすぐに作られており、下足場から浴室の壁まで一気に見通せました。板の間の床に木製のロッカーが並ぶ脱衣室は、昭和の銭湯そのものといった佇まいです。このロッカーにはアルミの板鍵がついているのですが、なぜか手首に巻けるような紐の類が括り付けられていないので、入浴中は紛失するんじゃないかとヒヤヒヤしました。
ロッカーと反対側の壁には木板に記された「宮の湯」源泉の分析表が掲示されているのですが、そこに書かれている年は昭和39年。つまり前回の東京オリンピックが開催された年ですね。2020年の東京五輪開催時も、この分析表は掲示され続けているのでしょうか。


 
浴室も懐かしい銭湯スタイル。左右に洗い場が配置され、奥に主浴槽が据えられています。洗い場にはお湯と水のカランが計7セット(右側に3、左側に4)並んでおり、お湯のカランからは後述する組合源泉が出てきました。



女湯との仕切りには、表面が波打っているようなすりガラスが用いられており、向こう側の影がぼんやり映るので、ちょっぴりエロティック。



今回はまず夜7時頃に訪問したのですが、その時はかなり混雑していたので一旦退却し、夕食を摂ってから夜8時頃に再度伺ったところ、今度はガラガラで終始独占できてしまいました。ここに限らず、銭湯や共同浴場って、ちょっと時間をズラすだけで混雑が避けられることが多いですよね。その混雑時間帯の後に浴場を管理なさっている方がお手入れしたのか、浴室入口付近には桶と腰掛けが整然と並べられていました。


 
ここの腰掛けはとてもユニークで、単体で見たらば俎板みたいです。鼻緒を付けたら巨漢向けの下駄にも転用できそうですね。とにかく足が極端に短いのです。洗い場の水栓の前にセッティングすると上写真のような感じになります。実際にこの上に腰をおろすには、蹲踞の姿勢になりながら横から腰掛けをすべらせる等、ちょっとしたテクニックを要するのですが、一旦座ってしまえば、特に不便さは感じませんでした。


 
主浴槽はタイル貼りでおおよそ5人サイズです。浴槽のタイルは湯面を境にして違う色のものが貼り分けられており、このタイルの影響により本来は無色透明のお湯がやや青みがかって見えました。その浴槽の左手前側にある蛇口より触れないほど熱いお湯が投入されており、その蛇口と並行してる水道の蛇口からも温度調整用に冷水が注がれています。この加水の塩梅が絶妙で、湯船では41~2℃という実に心地よい湯加減が維持されていました。加水以外には特に手は加えられておらず、れっきとした放流式の湯使いです。ただこの時は、上述のように夜の最混雑時間帯の後であり、温度調整のためか源泉の投入量も絞り気味であったため、湯船のお湯が若干鈍り気味だったのは残念でした(お湯のコンディションに拘るならば、早い時間帯の方が良さそうです)。
この主浴槽では温泉管理組合の混合泉を使用しており、無色透明で無臭ながらほんのりと塩味が感じられ、微かに芒硝感もあるようでした。また弱いながらもツルスベ浴感があり、湯上がりのホコホコ感もしっかりしていましたので、食塩泉としての個性がしっかりと発揮されています。同じ上諏訪温泉でも湖畔や駅周辺のお湯とは一線を画する、微妙に毛色の異なるものと思われます。


 
この「宮の湯」でリコメンドしなくてはいけないのが、屋号にもなっている「宮の湯」源泉であります。はっきり申し上げて、長ったらしいここまでの文章は単なる序文にすぎません。浴室入口の脇に据えられた小さな上がり湯用の槽には、古そうな蛇口から25~30℃くらいのぬるいお湯が注がれており、そのぬる湯は槽側面にある目皿を通って洗い場へと排水されています。この槽に入ろうと思えば一人ぐらいは入れるでしょうけど、目的外の使用方法であると思われたので、今回はやめておきました。
見た目こそ無色透明でありますから、主浴槽で使われている組合の混合泉と似ていますが、匂いや味が全然違い、芳醇なタマゴの香りと味覚を有しているのです。しかもツルスベ感も明瞭であり、明らかに組合の混合泉とは異なる個性的なお湯であります。室内に誰もいないのを良いことに、私は何度もこの「宮の湯」を掛け湯して、タマゴ感を放つお湯のフィーリングを楽しませてもらいました。願わくば、この「宮の湯」で全身浴したいのですが、このような使われ方をしているということは、湧出量が少ないのでしょうか…。
上諏訪温泉の各施設に配湯されているお湯は、無色透明で僅かに塩味を有しつつもクセの少ないタイプが一般的ですが、「大和温泉」「衣温泉」、そしてこの「宮の湯」など、ところどころで硫黄感が明瞭なお湯も湧いており、十把一絡げに「上諏訪温泉」と言うことができないほど、多様で個性的な源泉に恵まれているんですね。ますます諏訪の湯が好きになりました。


混合泉(第1・第2・第3源湯の混合泉)
ナトリウム-塩化物温泉 62.0℃ pH8.90 溶存物質1147mg/kg 成分総計1147mg/kg
Na+:350.0mg(91.33mval%), Ca++:14.0mg(4.19mval%),
Cl-:554.0mg(84.53mval%), SO4--:91.4mg(10.28mval%),
H2SiO3:69.5mg,

宮の湯
単純温泉 28℃ pH記載なし 溶存物質405.9mg/kg 成分総計447.9mg/kg
Na+:65.97mg(48.15mval%), NH4+:1.456mg(13.55mval%), Ca++:23.99mg(20.09mval%), Mg++:11.23mg(15.50mval%),
Cl-:107.4mg(50.84mval%), SO4--:125.2mg(43.75mval%), CO3--:8.062mg(4.51mval%),
H2SiO3:52.68mg, CO2:42.05mg,
(昭和39年11月21日)

長野県諏訪市湖南1612  地図
0266-52-5008

14:00~21:00
360円
ロッカーあり、他備品類なし

私の好み:★★+0.5

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