温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

百目鬼温泉

2017年09月10日 | 山形県
 
山形市やその周辺部では多くの温泉施設がしのぎを削っていますが、競争が激しい中で地元の方から人気を集めているる温泉公衆浴場のひとつが「百目鬼温泉」です。田んぼの真ん中にポツンと佇んでいるにもかかわらず、昼夜を問わず常に多くのお客さんで賑わっており、私が訪れた時も平日の午前中だったにもかかわらず、施設前の第一駐車場にはあまたの車がとまっていました。そして案の定、館内は非常に混雑しておりました。このため今回のレポートでは画像がほとんどございません。あしからず。もしどうしてもお風呂の様子をご覧になりたい方は、すでに温泉ファンや旅行者などによって、多くのレポートがネット上で公開されていますから、お手数ですがご自身で検索なさってください。

まずは駐車場前の農産物直売所を左手に見ながら玄関へ入り、券売機で湯銭を支払って、入浴券をカウンターに差し出します。そのカウンター前にはちょっとした休憩スペースが設けられており、サイン色紙がたくさん飾られていました。さすが人気の温泉だけあり、地元の各メディアからの取材も多いのでしょう。

男湯入口はカウンターの左側。フローリングの脱衣室には大きなカゴが棚に収められており、使い勝手がよくて便利です。なお脱衣室内にはロッカーがありませんので、貴重品類は番台前に設置されているロッカーを利用しましょう。

浴室(内湯)の内装は総木造が採用されており、木材ならではの落ち着きとぬくもりを醸し出していますが、床や壁の立ち上がり部分、そして洗い場周りなど常に水がかかる箇所にはタイルやFRPが用いられています。また浴室には蔵王連峰を一望する大きな窓ガラスがはめ込まれており、その真下に主浴槽が据えられています。日中にはその窓を通じて陽光が降り注ぐため、館内とは思えない明るさが確保されており、大きな窓を通じて景色を眺めながら悠然と湯浴みすることができます。一方、窓とは反対側の壁に沿って洗い場がL字形に配置されており、シャワー付きカランが計8基並んでいます。

内湯の主浴槽は5m弱×3mほどのサイズで、窓側の隅っこにセッティングされた湯口より42〜3℃の温泉が湯船に注がれ、湯船を満たしたお湯は窓下の排水溝へ溢れていました。お湯は全量掛け流しで、循環などは行われていません。お湯はグリーンを帯びたアイボリー色に弱く濁っており、後述するように強い塩分のほか金気なども含まれているため、お湯のオーバーフローによって床のタイルや浴槽の縁など一部には温泉成分の付着によって褐色に染まっているのですが、日頃のメンテナンスが行き届いているためか、この手の温泉にしてはそのような着色が少なく、こびりつきは一部にとどまっていました。



屋外に出ると大きな露天風呂が、後背の蔵王連峰を従えるようにして泰然とお湯を称えていました。一応周囲には目隠しの塀が立てられているのですが、目の前は広大な水田ですし、塀そのものも低く、屋根などの構造物が視界を遮ることもないので、非常に開放的です。また床部分も広く、湯船から溢れたお湯が常に床を流れているため、そこで寝っ転がっていわゆるトドを楽しんでいる方もいらっしゃいました。
露天の浴槽は横に長い直角三角形のような形状をしており、その奥に設けられた湯口より温泉がシュワシュワと泡を立てながら投入されていました。内湯と同じ源泉ですが、外気に触れて温度低下してしまうためか、ピーコックグリーンのような濃いめの緑色と塩化土類泉らしいベージュをミックスさせたような色合いが強く現れており、底部を目視できないほどはっきりと濁っていました。

こちらの施設では自前の源泉で地下350mより温泉を汲み上げており、内湯・露天風呂ともに完全放流式の素晴らしい湯使いを実践しています。お湯の濁り方を見ればマニアの方ならお察しの通り、お湯を口に含むと非常に塩辛く、出汁味や苦汁味のほか、鉄錆系の金気味も感じられます。また湯口ではガスっぽい匂いや臭素臭、そしてタマゴのような匂いが嗅ぎ取れました。こうした特徴から推測するに、おそらく東北内陸部の温泉でしばしば見られるグリーンタフがもたらす温泉のひとつであり、太古の時代にこの地域が海底だったことを示唆するものかと思われます。同じ山形県の村山地方では、りんご温泉や舟唄温泉などと似たような部類に属するのでしょう。塩分濃度の高いお湯ですから、湯船に入る瞬間は脛や腿などにピリッと刺激が走り、またカルシウムも多く含む温泉ですから、湯中ではギッシギシに引っかかる浴感が全身を覆います。そしてその塩辛さゆえ、たとえちょうど良い湯加減に調整されていても、パワフルという表現を通り越す凶暴な温浴効果がたちまち発揮され、すぐに体が温まって、なかなか長湯できません。42〜3℃に調整されている内湯はもちろんのこと、外気で41℃前後まで冷めている露天風呂ですら、私は長湯することができず、数分で心臓が激しく鼓動しはじめ、凶暴なお湯に体が喰らいつかれているような感覚に襲われ、這々の体で湯船から追い出されてしまいました。実際に浴場内には「高濃度の成分の為三分以上は越えないよう入浴して下さい。湯あたりをする場合がございます」という注意が喚起されているほどです。それでもパンチのある新鮮なお湯を求めて日々たくさんのお客様が集まってくるのですから、人間というものは一度強い刺激に慣れてしまうと、穏やかなものでは満足できなくなってしまうのかもしれませんね。私は湯船に入ったり出たりを繰り返しながらここでの湯浴みを楽しみましたが、実質的には湯船から上がってクールダウンしていた時間の方が長かったかと思います。それでもお風呂から上がった後は体の芯に熱せられた石炭を埋め込まれたかのような力強い温浴効果が発揮され、しばらくは外套要らずでした。みちのくの冬に心強い、庶民の味方の温泉です。


ナトリウム-塩化物温泉 54.8℃ pH7.5 蒸発残留物11840mg/kg 溶存物質11030mg/kg
Na+:3410mg, Ca++:678.0mg, Fe++:1.7mg,
Cl-:6298mg, Br-:18.3mg, I-:0.8mg, SO4--:274.6mg, HCO3-:114.9mg,
H2SiO3:80.8mg, HBO2:43.0mg,
(平成20年12月12日)
加温加水循環消毒なし

山形県山形市百目鬼42-1  地図
023-645-9033

6:00〜22:00(受付終了21:30) 第一月曜定休
350円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★

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