温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

田代元湯

2009年12月01日 | 青森県
前回田代新湯を紹介したので、今回はそのご近所にある有名な田代元湯を取り上げます。温泉ファンによって語りつくされているといっても過言ではない青森県きっての野湯ですので、ここでは余計な説明は省いて、現状報告を中心にお伝えしたいと思います。

まず現地までのルートです。ご存知の方は読み飛ばしてください。なお、田代元湯までのルートは現在建設中の駒込ダム工事現場となっており、工事の進捗に伴いルートの変更(道路のつけかえ)も予想されるため、あくまで今年(2009年)11月現在のルートを箇条書きに述べていきます。

・青森市街から県道40号線を登り、銅像茶屋を通り過ぎて約1.5キロで左折して林道に入る(このポイントには特に地名を記した標識はないが、工事車両の出入り口であることを示す看板が立っているので、それが目印になる)
・しばらくダートを進むと右に工事中の舗装路が平行する。道なりに砂利道を下っていくと、やがて舗装路と合流(工事関係者以外の進入を禁止する看板が立っているが、気にせず進入)。
・更に坂道を下ると右手に「止まれ」の標識が立つ道が分かれるので、ここを鋭角に右折。駒込川の川上に向かって東進。
・今度は十字路にぶつかるので、ここを左折。道なりに進むと、下り坂の左手に「元湯↓」と書かれた小さな看板が立っている。ここからは徒歩になるので、車は坂をちょっと戻った駐車スペースにとめておく(この道は工事のダンプの往来があるので路駐すると迷惑になる)。
 
 この看板が目印。ここから獣道を歩く。

・看板のところからは法面の下へロープが繋がれているので、それを伝って法面を下り、下りきったら今度はそこから伸びる獣道を歩く。藪に隠れて見えにくいのだが、ベニヤ板に書かれた道標もあるので、それで進むべき方向をよく確認する。
  
 こんな感じでベニヤ板の道標がある

・獣道を歩いて坂を下ってゆくと、沢を渡るポイントに到達。沢に足場板が架かっているのでその上を渡るのだが、雪の影響か湾曲しており、その上滑りやすく足元が非常に不安定なので、注意を要する(私も足を滑らせ危うく沢へ落ちるところでした)。
 
 足場板で沢を渡る。足元が滑りやすいので注意

・ここから先は駒込川の岸に沿って歩く。足元が滑りやすい箇所が多いのだが、掴まりやすい位置にロープが張られているので、これに掴まって進めば問題ない。
 

・先ほどの沢を渡って数百メートルで最後の関門となるボロボロの吊り橋を渡る。渡り板が踏み抜かれた箇所があるので、念のため梁の上に歩を合わせて進むとよいかと思われる。
 
 錆びてボロボロの吊り橋。外見だけでも渡るのを躊躇させられるのに「万一のことがあっても責任は負いかねます」なんて看板を見たら、余計不安になる

・吊り橋を渡り終えると、木造建物の脇を通る。その奥にお風呂がある。車をおりて(看板のところから)ここまで約12~5分。
 
 橋を渡りきったところには「元湯吊橋完成」の石碑が転がっており、その日付は昭和35年6月8日とあった。そんな古い吊り橋なのか…。


他のサイトでも紹介されているように、かつてここは車で行くことができない秘湯の一軒宿「やまだ館」でした。明治期の悲劇である八甲田雪中行軍が途中で遭難しなければ、ここに辿り着いていたとも言われています。長らく営業が続けられてきましたが、1995年に廃業となって建物とお風呂が放置され、2003年から2007年にかけての雪で1棟を残して建物が悉く崩壊し、お風呂だけが野湯状態で生き残って今に至っているというわけです。
吊り橋を渡って脇を通った木造建物が、唯一倒壊せず残った「やまだ館」の遺構で、外壁にはちゃんと「やまだ館」と書き記されています。この建物は今では田代元湯を愛する有志の人の倉庫として用いられているようです。


「やまだ館」唯一の遺構


浴槽の跡らしきもの


倒壊した宿の建物の跡


山の奥を見ると、はっきりとした形で別の建物が残っていました。あそこには何があるのでしょうか?


岩の露天風呂。藻が繁殖して不衛生だったので入浴断念


浴槽はいくつかありますが、かつて内湯があった場所は瓦礫で埋まって手がつけられない状態で、建物と川の間にある岩造りの露天風呂は常に藻の発生がひどく不衛生であるため(排水清掃が完全にできない造りになっている)、入浴できるのは実質的には1つ、建物の右奥にある長方形の浴槽のみといっていいでしょう。
訪問時は先人が清掃してくれてからまだ日が経っていないのか、運が良いことにお湯がとてもきれいな状態でしたが、いつもきれいとは限らず、清掃してから1週間ほどするとたちまち藻に覆われドブのような悪臭を放ち、とても入浴できる状態ではなくなります。この場合は浴槽の栓を抜いてお湯を空にし、近くにあるデッキブラシでゴシゴシ浴槽を清掃してからお湯を張りなおしてください。このため清掃した場合は入浴までに相当時間を要します。

薄い黄土色を帯びたお湯は微かに濁っているように見えますがほぼ透明(いわゆる貝汁濁りというもの)。キシキシとした浴感、弱いながら土類系と重曹系の匂い、そして芒硝系の味にほんのりとした甘みが感じられます。訪問日は湯温が熱めで、いくら掻き混ぜても45.6℃より下がらず、熱めのお湯にちょっと我慢しながらの入浴となりました。でも満足。ここまで来た甲斐がありました。実に良い湯です。

田代新湯の記事でも書きましたが、政治情勢や計画自体の変更がない限り、田代元湯は現在建設中の駒込ダムが完成する2018年度にはダム湖の底に沈みゆく運命にあります。宿が廃業となり、その後建物が崩壊して廃墟になってからも、お湯はそんな移ろいに左右されず絶え間なく湧き続け、そしてわざわざ難儀してここまでくる愛好者たちの心を魅了しつづけてきました。そんな温泉の歴史にも遂に幕が下ろされてしまうのでしょうか。歴史ある秘湯が消えてしまうのは非常に残念なことです(そんな感傷に浸ってしまって、冒頭で簡単な説明にとどめると書いておきながら、思わずつらつらと駄文を綴ってしまいました)


入浴できる浴槽。有志によって手入れされています


「亀の間」という札がさげられていました


湯口から絶え間なく源泉が注がれています


浴槽の湯温は45.6℃と結構熱め


湯口の上にある源泉溜まりのようなところを覗くと、そこからプクプクと泡が立ち上っていました。ここから湧いているのでしょうか。


硫化水素芒硝泉

青森県青森市駒込 地図 

24時間可能(積雪時は到達不可)
無料
マナーを守って入浴してください
往復の道のりについては自己責任で。

私の好み:★★★


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