温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

協和温泉 湯元藤久

2016年06月05日 | 秋田県
 
秋田県の協和温泉(あるいは唐松温泉)と聞いてピンと来る方は、地元の方か余程の温泉好きかのいずれかでしょうけど、そんな知名度の低い温泉であっても、当地のお宿で入れるお湯はなかなかよろしく、とりわけ無色透明の硫酸塩泉が好きな方にとっては堪らないお湯に巡り会えるかと思います。以前拙ブログでは協和温泉の「四郎兵エ館」を取り上げたことがありますが、今回はそこより更に奥へ進んだところにある「湯元藤久(ふじきゅう)」で立ち寄り入浴してまいりました。田んぼの真ん中を真っ直ぐ突き進む道がスキー場の方へ右カーブするところに位置しており、入母屋造りのような特徴的な尖り屋根やそこに書かれた温泉マークは、遠くからも目にすることができます。なお、ふじきゅうという名前ですが、決してここには絶叫系コースターの類はありませんので、あしからず。


 
お宿のまわりに広がる田んぼからは、青々とした稲の香りが風に乗って漂い、路傍の一角では地元のおばちゃんが丹精込めて育てた花々が緑の田園に鮮やかな彩りを添えていました。あいにくこの日は今にも泣き出しそうな鉛色の曇天でしたが、それでも日々を都内で暮らす私にとって、この麗しい景色は桃源郷のように映ります。入浴前にカメラを手にして周辺を簡単に散策し、麗しの景色に包まれて心を和ませていただきました。
この長閑な美観を背にしながらお宿へ入りますと、館内はお宿というより民家に近いアットホームな佇まいで、玄関にはどなたもいらっしゃらなかったのですが、座敷の方から声が聞こえたので、そちらへ声をかけて入浴をお願いしますと、襖の向こう側からおじさんが出てきて対応してくれました。上がり框を上がった先に浴室のドアが2つ並んでおり、左側は女湯で右側が男湯です。



棚にカゴが置かれているばかりの質素な脱衣室を抜けて浴室へ。
お風呂は相当年季を重ねており、至る所がくたびれていますが、窓から降り注ぐ外光が湯面でキラキラと反射しているため、タイル張りの室内は明るさに満ちていました。


 
浴室の左右に洗い場が分かれて配置されており、元々はそれぞれに水栓が3つずつ取り付けられていたようですが、今ではシャワー付きカランが一つずつと、加水用のホースが接続できる水道の蛇口が1つずつ用意されているだけです。なお左側の洗い場にはお湯と水の単水栓のペアが1組残っていたのですが、果たしてこの水栓からお湯が出てくるかどうかは確かめておりません。


 
窓の下に設置された湯船は2つに分かれており、湯口の水栓からお湯が直接注がれる左側の浴槽は(目測で)2m×1.8mで、やや深い造りで槽内にはステップがあり、その深さゆえ、右側の浴槽と同じタイルが用いられているにもかかわらず、槽内タイルの色がやや暗く見えました。



一方、右側の浴槽は左側よりも若干小さく(同じく目測で)1.5m×1.8m。左側よりもやや浅く、腰を下ろし底にお尻をついてちょうど良い水位になる深さなのですが、その代わりステップは設けられていません。お湯は左側の浴槽から流れてくるものを受けており、この右側浴槽から洗い場へ溢れ出ているために、その流れから推測しますと、左側浴槽と比べて右側の方が温度が低くなっているはずですが、私が入室した時には左右両方とも篦棒に熱かったため(多分50℃近くはあったはず)、浅くて早く温度が下がりそうな右側浴槽へホースを伸ばして加水してから、入浴させていただきました。

お湯は無色透明でとてもクリアに澄んでおり、湯の花などは見られません。窓の外から入ってきた外光は、湯面で青白く反射し、浴槽底面のタイル目地では虹色にキラキラと輝いていました。湯口の水栓には硫酸塩の白い析出がこびりついているのですが、そこに置かれていたコップでお湯を口に含んでみますと、その析出が示しているように、ふんわりながらも石膏の味と匂いが存在感をしっかりと主張しており、石膏に伴う甘みも少々感じられました。湯中ではスルスベと引っ掛かりという相反する浴感が拮抗していますが、総じてフィーリングが優しく、またお湯の鮮度も素晴らしいので、湯船へ入った時に全身を走るシャキッとする感覚や肌に染み入るしっとり感が心地よく、熱さで逆上せそうになりながらも、後ろ髪を引かれてついつい湯船に戻りたくなってしまうほど、ブリリアントなお湯でした。
余談ですが、無色透明の硫酸塩泉であるこの温泉は、場所から考えて明らかにグリーンタフ(緑色凝灰岩)型の温泉だと思われます。グリーンタフは黒鉱のほか食塩泉や硫酸塩泉などの温泉を伴うことが多く、ここと同じ無色透明の硫酸塩で言えば、秋田県の大館周辺の温泉はその典型であり、雪沢温泉などはまさに黒鉱の試掘によって発見された温泉です。この温泉がある船岡集落に鉱山はありませんが、南側にはかつて荒川鉱山という銅山がありましたから、そこから続く鉱脈のようなものが、この温泉をもたらしているのかもしれません。なお協和温泉の開湯は1987年(昭和62年)なんだとか。意外と新しい温泉なんですね。
ま、そんな屁理屈はともかく、この「湯元藤久」のお風呂に装飾の類は一切なく、いささか草臥れていて且つ実用的ですが、シンプル・イズ・ベストのお風呂だからこそ、お湯の持ち味をしっかり味わうことができたのだろうと思います。しかも150円でフレッシュな掛け流しのお湯に入れるのですからありがたいですね。私が訪れた時は、はじめのうちは私の独占状態でしたが、夕方16:30頃になると次々に後客がかってきて、浴場内はとても賑やかになりました。それだけ地元の型から愛されているお風呂であると言えるでしょう。


温泉分析書は見当たらず
(源泉名:2号井、泉質名:ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉)

秋田県大仙市協和船岡上庄内90  地図
018-893-2155

日帰り入浴時間不明(20:00まで?)
150円
備品類なし

私の好み:★★

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2 コメント

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初めて知りました (hiro)
2016-06-06 22:34:29
秋田から田沢湖方面に向かう際、しばしば広域農道を使って国道46号にショートカットするのですが、協和では四郎兵エ館しか利用したことがありませんでした。
ここは初めて知りました。奥に行くと、150円でこんな素敵な施設が利用できるのですね。
次の帰省時に行ってみたいです♪
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Unknown (K-I)
2016-06-07 01:21:01
>hiroさん
あの広域農道は私も何度か走りました。便利ですよね。協和ですと今回の「藤久」や「四郎兵エ館」の他、ちょっと奥にある「からまつ山荘」にも入りました(5~6年前ですが)。「からまつ山荘」は昨年12月に新しいオーナーによって再出発しましたから、どのようになったのか興味があります。
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