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美作三湯の一つである奥津温泉は、吉井川に沿った鄙びた山村に中小規模のお宿が点在する歴史ある温泉地でして、その中心部には奥津荘・東和楼・河鹿園(※)という3つの老舗旅館が軒を連ねているのですが、今回はその真ん中に位置している「東和楼」で日帰り入浴してまいりました。重厚感のある伝統建築の旅館であり、その佇まいを目にした時には入浴できるか不安になりましたが、玄関前をよく見ますと「天然岩風呂 御入浴 大人800円 小人400円 お気軽にお入り下さい」と書かれた札が立っており、日帰り入浴も歓迎している気配が感じられたので、安心して訪うことができました。
(※河鹿園は残念ながら2012年3月末を以て閉館)
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帳場にいらっしゃった大女将と思しきお婆ちゃんに日帰り入浴をお願いしますと快く対応してくださり、私が初訪問だとわかると、お風呂場の途中まで案内してくださいました。
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ロビーの奥へ進むと吹き抜けの突き当たりとなり、その右手には「家族湯」があるのですが、日帰り入浴の私はその「家族湯」には向かわず、左に折れて階段を下ってゆき・・・
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漆喰で塗り固められたドーム天井のトンネルを潜ります。このトンネルは薄暗い上に意外と長いので、閉所恐怖症の人はちょっと怖いかもしれませんが、いつまで経っても精神年齢が子供のままの私は、軽い川口探検隊のような気分を楽しめました。
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ドーム状のトンネルを抜けた先は、矩形の通路が更に奥へとつながっており、壁にはレトロ風情たっぷりの古い鏡が埋め込まれていました。単なるコンクリの躯体と思いきや、床には丸い小さなタイルが敷き詰められており、さりげない装飾が施されているんですね。この通路は若干曲がっているのですが、これって通路を覆う周囲の硬い岩盤を避けているためなのでしょうか。実際に左側の壁からは岩がちょこんと突き出ていますね。
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長い通路の突き当たりが浴室の入り口。左が女湯で右が男湯。浴場ゾーンは木造なのですが、相当古くてあちこちが草臥れていました。コンパクトな脱衣室は棚があるのみで、至ってシンプルなのですが、狭い室内にはなぜか扇風機が2台も用意されていました。そんなに涼む必要があるのかな。
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浴室は男女別の内湯となっており、浴室自体はかなりコンパクトでして、3~4人以上の同時利用だと窮屈かもしれません。側壁は腰部が人研ぎ石でその上が白いモルタル、木製の窓枠は朽ちて塗装が剥がれ、周囲に張られている目隠しの簾もボロボロといった感じで、狭い浴室ゆえにガタピシ具合がついつい目についてしまうのですが、床や浴槽は脱衣室よりやや低い位置に設けられており、低い位置へ下ってゆく浴室の温泉は良泉である場合が多いので、この造りを目にしただけで期待に胸が膨らみ、浴室の全体的な草臥れ具合が寧ろ趣きのある風情のように感じられました。
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画像左(上)は室内を反対側から撮ってみたものです。床面積の半分以上は岩風呂によって占められており、完全に脇役に徹している洗い場の床はタイル貼りですが、浴槽をはじめとして至る所に岩盤がせり出ており、例えば脱衣室と浴室の間にも赤っぽい岩盤がむき出しになっていました。また洗い場といってもこのレトロな浴室にはシャワーなんて現代的な設備はありませんから、かけ湯だろうがシャンプーだろうが、桶で湯船のお湯を汲むことになります。また片隅にはタイル貼りの流し台があって、水の蛇口が一つ取り付けられていました。
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さて「東和楼」名物の天然岩風呂に入りましょう。天然の岩盤が剥き出しとなっているこの浴槽はかなり深い造りになっているので、その深さに慣れないうちは、手前側に設けられた扇型のステップを使って入浴しました。容量としては4人サイズといったところで、湯中で露出している岩の荒々しさがとても印象的なのですが、一部はコンクリで固められており、底面の凸凹を均して安全に入れるよう配慮されていました。
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底から突き出ている先っちょの潰れたパイプよりお湯が噴き上がっており、ここがメインの温泉供給源かと思われますが、底に這わされているそのパイプの上流を辿ってみると、脱衣室寄りの女湯との境界にその根元らしき箇所があり、この周辺の岩盤からはプクプクと泡が上がっていました。ということは、この辺りからも源泉が湧出しているってことでしょうか?
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お湯の供給量はとっても豊富で、浴槽縁より床タイルへじゃんじゃんオーバーフローしており、その溢湯が流下してゆく湯尻側の排水口では女湯のオーバーフローも合流するため、用水路を彷彿とさせる、とても温泉の排湯とは思えないほどの水量が捨てられていました。こりゃスゴイぞ。
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とても清らかで癖がなく優しいお湯は無色澄明無味無臭。湯加減は42~3℃。完全掛け流しの大量供給大量排出ですから、鮮度感は抜群!!。2~3分ほど全身浴していますと肌にしっかりと気泡が付着し、そもそもの優しいフィーリングにこのアワアワが相俟って、羽毛に包まれているような優しく軽やかな感覚が入浴中の我が身に伝わってきました。またアルカリ性単純泉らしいツルスベ浴感も実に心地良く、恰も化粧水の中に浸っているかのようでした。さすが「美人の湯」と称されるだけのことはありますね。言わずもがなですが、歴史ある温泉のクオリティは伊達じゃありません。
アルカリ性単純温泉 42.6℃ pH9.2 105L/min 溶存物質143.6mg/kg
Na+:26.657mg(72.19mval%), Ca++:6.146mg(19.09mval%),
Cl-:12.070mg(21.20mval%), SO4--:24.179mg(31.45mval%), HCO3-:103.364mg(34.05mval%), CO3--:3.126mg,
H2SiO3:23.266mg, CO2:0.048mg,
(昭和37年5月7日)
津山駅より中鉄北部バスの石越線で「奥津温泉」下車すぐ
岡山県苫田郡鏡野町奥津53 地図
0868-52-0031
ホームページ(山の温泉ガイド)
日帰り入浴10:00~15:00
800円
シャンプー類あり、他備品類見当たらず
私の好み:★★★
K-Iさんのことなのできっと東和楼さんも訪問されるだろうと思って内心、期待していました。
>温泉の排湯とは思えないほどの水量
私も排水が追いつかないのではないかと思い、他人事なのにもかかわらず心配してしまいました。
>大女将と思しきお婆ちゃん
お元気なようで何よりです。何だか嬉しいです。
私が帰る時、何度も何度も深々とお時儀をしていただいたことを鮮明に覚えております。確かその時はきれいな白い和服をお召しになっていました。
レポを拝見していると以前、宿泊した際に貸切状態で堪能したことを思い出しました。とにかくお湯は素晴らしいですもんね。
また行きたくなりましたよ。
奥津温泉訪問に際しては、しーさんさんの入湯記を参考にさせていただきました。本当は奥津荘の「鍵湯」にも入ってみたかったのですが、この時は運悪く奥津荘が閉まっており、東和楼の一軒のみになってしまいました。しかし、あの清らかお湯と淑やかな大女将のおかげで、一軒だけでも十分に素晴らしい想い出となりました。この時は、湯原温泉と奥津温泉のどちらに泊まるべきか悩み、結局湯原にしてしまったのですが、今思うと(そしてしーさんさんの記事を改めて拝見しますと)、奥津にすべきだったかな、とちょっぴり後悔しています。