温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

吉松温泉ビジネスホテル

2016年12月14日 | 鹿児島県
 
川内川中流域の加久藤盆地は、私が大好きなモール泉の宝庫です。今回はそんな温泉の中から、のどかな田園風景が広がる湧水町吉松エリアの「吉松温泉ビジネスホテル」で立ち寄り入浴してまいりました。こちらの施設は国道に面しており、ここを通れば路傍に立つ看板が目に入ってくるため、以前から存在は知っていたのですが、語弊を承知で正直に申し上げれば、その独特な外観および佇まいゆえ、廃業寸前の連れ込み宿ではないのかと勘違いしておりました。しかし、湯巡りに際して当地の温泉を調べていたところ、こちらのお湯を好評価なさっている温泉ファンの方が多いことを知り、己の不勉強を深く恥じた次第です。こういうところにこそ名泉があるんですね。



敷地内では用途に応じて建物が数棟に分かれています。こちらは宿泊棟。各部屋にはお風呂があり、ちゃんと温泉が引かれているんだとか。ビジネスホテルというより商人宿と表現したくなる風情であり、あるいは湯治宿と言っても大過ないかもしれません。


 
国道との出入口付近には倉庫のような小屋があり、そのシャッターの下から温泉を汲み上げるポンプが姿を覗かせていました。


 
湯気抜きを戴く鄙びたこの建物は湯小屋。以前は「岩の湯」という札が下げられていたようですが、私の訪問時(2016年5月)には外されていました。画像を見ますと浴室らしき出入口が複数並んでいますが、いずれも家族風呂であり、立ち寄り入浴の場合はこちらを利用します。もちろん宿泊客も利用可能。


 
湯小屋の正面にある受付で料金を支払います。いや、受付前のベンチでお喋りしている老夫婦に湯銭を支払う、と表現した方が正しいかな。


 
分析書は見当たらず、唯一確認できたデータらしきものは、浴室入口の右手に立て掛けられていた上画像の古い手書きプレートのみです。そこに記されていた泉質名は「含ヒ素-ナトリウム-炭酸水素塩泉」。含ヒ素緑礬泉なら聞いたことがありますが、含ヒ素の重曹泉なんて初めて聞きました。このプレートはいつ作成されたのでしょう。私の不勉強なのかもしれませんが、もし本当にヒ素が多い温泉ならば、迂闊に飲泉できませんね。
私の訪問時、左側の広い浴室は使用中であったため、今回は右側の狭い浴室を使うように指示されました。本当に着替えるのが精一杯の狭い脱衣室を抜けて浴室へ。


 
浴室も家庭のお風呂をひと回り大きくしたような感じのスペースしかなく、まさに家族風呂といった造りです。床タイルは所々が剥がれており、建物としても相当古そうです。湯水がかかりやすい下半分はタイル貼りですが、上半分は目に鮮やかなパステルブルーに塗装されており、そんな色の使い方に、民家のお風呂では味わえない非日常性を見出せるかと思います。
後述する浴槽の左側にはシャワー付きカランが1基設置されており、コックを捻ると源泉のお湯が出てきました。このカランは浴槽への投入口を兼ねており、スパウトの先をぐるっと回して浴槽へ向けることにより、湯船にお湯を足すことができます。


 
浴槽は2〜3人サイズのコンクリ造。上述のように洗い場のカランが湯口を兼ねているため、投入量は自分の好みに加減できます(もちろん加水も可能)。とはいえ、カランの吐出口で50℃以上あるため、出しっぱなしにすると熱くて入れません。私は自分の入浴時のみお湯を全開にしてドバドバ出し、それ以外はキチッと締めておきました。なお湯使いは溜め湯式ですが、お湯を出せば放流式になりますから、お湯を投入した分だけ、しっかりとオーバーフローしていきます。
浴槽に張られているお湯は、まるでコーヒーのような深い琥珀色を有しており、その濃い色合いゆえ、浴槽の底が見えません。いわゆる黒湯状態です。


 
手桶にお湯を汲んだ様子が左(上)画像です。わずかこれだけの量でもお湯の色がはっきりとわかります。私の利用時におけるカラン吐出温度は50.8℃で、pH=8.38でした。湯面からは芳醇なモール臭が香っているのですが、密閉空間で匂いが篭るためか、その香りは油性インクを彷彿とさせるほど濃い状態で浴室内に充満していました。また、お湯をテイスティングしてみると、清涼感を伴うビターテイストが口の中に広がりました。
湯中ではニュルニュルを伴うツルツルスベスベ浴感が強く、滑らかなフィーリングがあまりに気持ち良いため、入浴中は何度も自分の肌をさすってしまいました。なお泡つきは見られません。上述のように私は入浴中にお湯のコックを全開にして熱いお湯をドバドバ出し、お湯の入れ替えを兼ねて湯船からお湯を豪快に溢れ出させたのですが、多少の時間出しっぱなしにしてもそれほど熱くはならず、むしろお湯がフレッシュになって、より一層温泉の持つ滑らかなフィーリングを楽しむことができました。湯船から出るのが躊躇われるほど極上のツルスベ浴感を堪能できる名湯でした。


ナトリウム-炭酸水素塩温泉(※) 60.6℃ pH7.6 蒸発残留物822mg
(相当古いデータと思われるので、あくまで参考程度に)
(※)現地の掲示通りに表記すると、含ヒ素-ナトリウム-炭酸水素塩泉です

JR吉都線・鶴丸駅より徒歩10分弱(約700m)
鹿児島県姶良郡湧水町鶴丸335-8  地図
0995-75-3390

7:00~22:00
200円
備品類なし

私の好み:★★★
コメント
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