秋田県大館市の雪沢温泉では、数軒の旅館や入浴施設が秋田県道2号線「樹海ライン」に沿ってそれぞれ間隔を空けて位置しており、ひとつひとつを見ると一軒宿のようにも思えますが、いずれも同じ源泉を引いているため、どこを利用しても同じお湯へ入ることになるわけです。でもせっかくなら全部の施設を訪れて雪沢温泉を制覇してみたい…。そんな願望に駆られた私は、昨年初夏の某日、大館へ向かう途中に当地へ立ち寄り、まだ訪問したことがなかった「四十八滝」へ行ってみることにしました。場所としては「清風荘」(訪問済ですが拙ブログでは未掲載)と「大雪」の中間に位置しており、県道やそれに並行して敷かれている旧小坂線(廃線)の線路が大きくカーブするところに看板が立っていますので、県道を走行していたら否が応でも存在に気づくはずです。
青い外装をした長くて古い平屋の建物は、温泉施設というより、昭和30年代の学校や病院を彷彿とさせる造りですが、それもそのはず、この建物は大館市の老人福祉施設なんですね。とはいえ、このブログで取り上げるくらいですから、老人でなく、市外の一般者でも館内の温泉浴場や休憩室の利用が可能です。
老人に福祉を施すべき建物そのものが相当くたびれており、年代を感じさせる玄関の前に立つと、老老介護という言葉が脳裏をよぎりました。
受付兼事務室の窓口前には券売機が設置されており、これで料金を支払い、券を目の前の窓口へ差し出します。
玄関を上がった事務室前には、休憩用のベンチや飲料自販機が設けられていました。
玄関や事務室がある一角から伸びる長い廊下は、昔懐かしい学校のようです。昭和の幼き頃にタイムスリップした気分でこの廊下をひたすら歩いてゆくと、突き当たりに浴場の暖簾がかかっていました。
脱衣室には棚・洗面台・ドライヤーなどひと通りの備品は用意されていますが、天井が低くスペースも限られており、古さと鄙びが随所から滲み出ていました。なお館内にロッカーは見当たらなかったので、貴重品は持参しない方が宜しいかと思います(防水袋を持参して浴室へ持ち込むのも一つの手です)。
お風呂は男女別の内湯が一室ずつあるばかり。浴室はタイル張りで、男湯の場合は左側に浴槽がひとつ、そして右側に洗い場が配置されており、洗い場にはシャワー付きカランが7もしくは8基並んでいます。こちらのシャワーにはひとつひとつに小さな棚が取り付けられており、持参したお風呂道具を置いておくのに役立ちました。また浴槽と洗い場の間、ちょうど浴室の中央に当たる部分には排水用のグレーチングが埋め込まれており、この1本の溝によって、洗い場の排水と、浴槽のオーバーフローの両方を受ける合理的な構造になっていました。
ちなみに館内表示によれば、こちらのお風呂は完全掛け流しなんだとか。雪沢温泉の入浴施設はみんな掛け流しなんですね。
男湯の浴槽は上画像のようにカクカクした形状ですが、女湯の浴槽は女性の嫋やかさをイメージしているのか、丸い造りをしているんだそうです。浴室の壁や床と同じく、浴槽内部もタイル張りなのですが、浴槽の縁だけは十和田石を用いており、見た目のみならず感触面でもちょっとしたアクセントになっていました。また、浴槽へ入る箇所には段差の低いステップやハンドレールが設けられており、足元がおぼつかない老人でも安全に入浴できるような配慮がなされていました。
お湯は最奧の岩から注がれており、私が入室した時点ではその真上にある水道の蛇口から加水が行われていました。浴槽のキャパは5~6人といったところですが、そのキャパに十分見合うだけのお湯が供給されており、常時浴槽の縁からお湯がオーバーフローしていて、人が湯船に入ると勢いよくザバーッと溢れ出ていきました。
お湯は無色透明ですが、夕方の混雑時に利用したためか、今回ばかりは若干透明度に欠けていたような気がしました。こればかりはタイミングの問題ですから致し方ありません。湯口の岩にコップがあるので、それでお湯を飲んでみますと、いかにも雪沢温泉らしい(というか大館エリアの温泉らしい)石膏の味と匂いがしっかりと感じられます。湯口にて加水されていましたが、それでもかなり熱めの湯加減でしたから、この施設の本来のお客さんであるお年寄りが入浴したら、倒れないかちょっと心配になってしまいます。そんなお湯に肩まで体を沈めてみますと、湯中ではスルスルとした滑らかな浴感の中に硫酸塩泉らしい引っかかりが混在しており、それでいて体を優しく包んでくれるような柔らかい感触もあるため、熱くて逆上せそうになっても、後を引いてしまって、おいそれと湯船から出たくはなくなるような、良い意味で困ってしまうお湯でした。
私が訪れたのは夕方の6時頃。入室時は誰もいなかったのですが、数分後に後客が現れた途端、次々にお客さんがやってきて、遂には洗い場が全て埋まるほどの混雑にまで至りました。掛け流しの温泉に安い料金で入れるので、地元の方々から人気があるのでしょう。古くてシンプルですが、それゆえ温泉の持ち味をしっかりと味わうことができる、質実剛健なお風呂でした。
雪沢温泉源泉
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉 50.4℃ pH8.0 溶存物質2507.7mg/kg 成分総計2509mg/kg
Na+:259.9mg(31.42mval%), Ca++:487.8mg(67.61mval%),
Cl-:63.0mg(4.92mval%), SO4--:1639mg(94.39mval%),
H2SiO3:35.1mg,
(平成24年8月1日)
JR大館駅より秋北バスの小坂線に乗り「四十八滝」バス停下車すぐ
秋田県大館市雪沢字大滝66 地図
0186-50-2031
紹介ページ(大館市公式サイト内)
6:00~20:00 第2・4月曜および大晦日と元日定休
230円
ドライヤーあり、他備品類なし
私の好み:★★