温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

肘折温泉 三春屋旅館 後編(2つのお風呂)

2014年05月30日 | 山形県
前回記事「肘折温泉 三春屋旅館 前編」の続編です。

今回泊まった肘折温泉の「三春屋旅館」には源泉が異なる2つの浴室があり、源泉のみならずお風呂の造り自体にも個性がありますので、一晩のうちに双方へ入って、それぞれのお風呂を楽しみました。


●滝の湯
 
旅館の階段を上がった3階の最奥にある浴室が「滝の湯」。長期滞在客を受けいれる湯治宿らしく、浴室入口には洗濯機や乾燥機が設置されていました。


 
浴室は一つしか無いため、利用の際は男性か女性のどちらか片方の浴室となり、女性が利用する際は「女性入浴中」の札を表に立てかけておいて、男性をシャットアウトします。脱衣室は無駄に広くガランとしており、飾りッ気も何もなくて殺風景です。


 
窓が一つしか無くて薄暗い浴室はかなり年季が入っており、壁面に貼られている地味な青系のタイルが余計に渋い空気感を醸し出しています。床は長年に及ぶお湯の溢れ出しによって、独特の波状造形を伴いながら茶色やアイボリーに染まっていました。
古いお風呂だからか、加水用のホース以外にカランらしきものはありませんが、その代わりに湯口の傍には上がり湯用の枡が置かれています。


 
湯船は5~6人サイズで、実用本位の造りながら浴槽内にはコテコテに成分がこびりついており、共同浴場を思わせる円熟の湯船は、決して客に媚びることなく静かにお湯を湛えています。なおお湯は底から立ち上がっているオーバーフロー管より排湯されており、人が湯船に浸かると縁からも溢れ出ていきます。


 
お湯は上述の上がり湯枡の他、岩のオブジェらしきところからも注がれており、その岩の流路は赤茶色に染まっていました。こちらで使われているお湯は組合源泉の混合泉でして、近隣の他旅館にも同じお湯が引かれている肘折温泉標準タイプなのですが、赤茶色に濁っているものの他のお宿で見られるような黄金色の濁りは少なくて透明度があり、塩気もやや少ない代わりに金気が強く、土類感は組合源泉を使う他のお宿と同等といった感じでした。同じ源泉でも、湯使い等によってお風呂で得られるフィーリングがちょっと異なるのでしょうね。


●三春屋源泉のお風呂

温泉ファンが高く評価しているのが、玄関入ってすぐ左手にある三春屋源泉のお風呂です。その名の通り、こちらのお宿の自家源泉に入れるお風呂であります。


 
こちらの脱衣室も妙に広く、一人で着替えているとそのスペースを持て余し、大人げなく無駄に動きまわってしまいました。奥の方にはかつてタイルの洗面台だったと思しき跡があり、洗面台内部に当たる部分は化粧板で塞がれ、その上にドライヤーがポツンと置かれていました。



こちらの浴室も一室しか無いため、女性が利用する場合には表に「女性入浴中」の札を立てかけておいて、殿方をシャットアウトします。


 
温泉街のメインルートに面している浴室は、地表面より若干低い位置に設けられており、重厚感のある切り出し石材が多用され、床に近い側壁をよく見るとこの浴室の施工に関与したと思しき愛知県岡崎市の石材店の名前が彫られていました。出羽三山が傍に聳える羽前の湯治場で、三州岡崎の地名を目にするとは意外です。


 
湯船はほぼ正方形で、4~5人サイズといったところ。角は美しいRを描いており、槽内のステップも綺麗な形をしています。オーバーフローが流れる箇所は、まるで鍍金されたかのように(元の石材の色がわからないほど)赤銅色に染まっていました。


 
自家源泉のお湯は岩の下を貫いているパイプより注がれており、岩の上から湧水も落とされているのですが、この加水の塩梅が絶妙で、湯船では42~3℃という最高な湯加減がキープされていました。また湯船がやや深い造りなので、肩までじっくり浸かることができました。

槽内こそ赤茶色に染まっていますが、お湯は組合源泉よりも透明度が高く、ほんのり緑色を帯びた暗いオレンジ色の笹濁りといった感じ。組合源泉と比べると遊離炭酸ガスの量が圧倒的に多く(組合源泉の約4.5倍)、湯口のお湯を口にすると薄い昆布茶味や金気味の他、炭酸味が明瞭に口腔内に広がっていきました。また湯船の中ではその影響と思われる泡付きも見られました。

組合源泉よりも優しいフィーリングと明瞭な炭酸パワーのおかげで、一度入ったら出られなくなるほど癖になる浴感が素晴らしく、湯浴み中の浴感もさることながら、湯上がりにはサラサラ感やシットリ感が共存し、いつまでもポカポカとした温浴効果が持続しました。なるほど皆さんが高く評価するのも頷けます。リーズナブルである上に自家源泉の素晴らしいお湯に浸かれちゃうという、言うことなしのブリリアントなお宿でありました。


組合2・3・4号源泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 64.6℃(2号:85.1℃、3号:75.6℃、4号:65.5℃) pH7.3 蒸発残留物3053mg/kg 溶存物質3586mg/kg
Na+:944.1mg, Mg++:28.6mg, Ca++:88.6mg, Fe++:1.1mg,
Cl-:1066mg, Br-:2.5mg, I-:0.3mg, SO4--:242.2mg, HCO3-:920.8mg,
H2SiO3:148.0mg, HBO2:61.3mg, CO2:181.2mg,
(平成22年7月2日)

三春屋源泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 51.3℃ pH6.2 掘削自噴(量不明) 溶存物質2545mg/kg 成分総計3341mg/kg
Na+:627.1mg(79.69mval%), Mg++:19.9mg, Ca++:79.3mg(11.57mval%), Fe++:1.6mg,
Cl-:643.9mg(53.78mval%), Br-:1.3mg, I-:0.6mg, SO4--:156.0mg(9.62mval%), HCO3-:751.6mg(36.48mval%),
H2SiO3:187.8mg, HBO2:31.7mg, CO2:795.5mg,
(平成15年10月31日)

山形県最上郡大蔵村南山497
0233-76-2036
ホームページ

日帰り入浴時間および料金は要問い合わせ
ドライヤーあり、他備品類なし

私の好み:★★★
コメント
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