温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

タイ チェンライ県ムアンチェンライ郡 パースー温泉

2014年05月16日 | タイ
 
チェンライの中心部に辿り着いた日のこと。街の郊外に熱い温泉が湧いているという情報を得ていたので、ホテルへチェックインする前にそこへ立ち寄ってみることにしました。事前に調べていた情報によればチェンライの街からコック川に沿ってひたすら西進すればよい、とのことでしたが、まずチェンライの街の入り組んだ道を抜けるのに一苦労し、更には街から抜けても温泉までなかなか行き着かないことに焦りを覚え、私が調べておいた情報が正しかったのか不安に陥りましたが、やがて路肩に"HOT SPRING"の案内標識が現れたのでひと安心。コック川の南側に伸びる道はやがて人里から離れてゆき、道も徐々に険しさを増し、河岸の急斜面をワインディングでかわしながら、道なりにどんどん西進していきます。


 
チェンライの街から約23キロ、小さなお寺を過ぎて橋を渡った先に、今回の目的地であるパースー温泉(Pha Soet Hot Spring)がありました。この温泉は公園のようになっているのですが、特にバリアのようなものは無く、すんなり無料で入園できました。


 
公園内にはタイ人が大好きな足湯や後述する温泉プールの他…


 
朦々と湯気を上げる源泉池がお湯を湛えており、その傍らに立てかけられた"Danger"と表示されたプレートがお湯の熱さを訴えていました。またそこには温泉の成分も列挙されており、記載されていた内容は以下のとおりでした。
Temperature(温度) 87℃
Bicarbonate(炭酸水素イオン) 170
Carbondioxide(二酸化炭素) 0.97
Sodium chloride(塩化ナトリウム) 9.7
Sulphate(硫酸塩) 31.6
Fluoride(フッ素イオン) 19.33
Iron(鉄) 0.26
Lead(鉛) 0.01
明示されていないものの、おそらく1リットル当たりの成分をmgで示しているのかと思われますが、最も多いのは炭酸水素イオン、その次は硫酸塩であり、この辺りはタイ北部の他の温泉と似たような構成比率と言えそうです。しかしながらフッ素イオンが20近くもあるのが特徴的でして、これだけ多いのは温泉大国日本でも珍しいのですが、実はここのみならずタイ北部の温泉ではフッ素イオンを多く含む温泉が散見されるようでして(※)、タイの温泉に共通する特徴の一つと言えそうです。また当地域の温泉でしばしば体感されるスベスベの浴感にも一役買っているのかもしれません。
(※)手元の資料によれば、タイ北部の温泉のフッ素溶存量は、サンカムペーンで17前後、メーチャンやファーンで20、パパエ(ポーンドゥアット温泉付近)で11とのことです。


 

ピーコックブルーに塗られた巨大な湯の釜を覗くと、青々としたクリアなお湯が深い底からアブクとともに間断なく上がっており、湯面に温度計を突っ込んだら74.3℃でした。誤ってこんなところに転落したら即死ですね。



青い湯の釜は深すぎて危険だからか、その傍には"Boiling Area"つまり食材を茹でるための小さな槽が設けられていました。ここでしたら安全に温泉卵をつくることができますね。


 
公園内には貸切の個室風呂小屋が建ち並んでおり、料金表によれば、1人使用時で50バーツ、2人使用時で80バーツなんだとか。結構お安いですね。



こんなプールもありましたが、訪問時にはステップにロープが張られており、使用中止のようでした。


 
さてお目当ての温泉プールへ。プールサイドの受付小屋で料金を支払います。外国人客の利用が多いためか、受付のお姉さんは簡単な英語が通じますし、小屋の内部には英語が併記された料金表も掲示されていますので、私のようにタイ語がチンプンカンプンでも問題ありません。受付小屋の左隣には男女別のシャワー棟があり、それぞれシャワー室が2室ずつありますので、その室内で水着に着替えます。


 
とっても広い温泉プールは槽内が水色に塗装されており、清掃も行き届いていて内部にはヌメリ等不快な点は一切ありませんでした。頭上の低い位置に張られているネットがちょっと鬱陶しいかもしれませんが、訳あって張っているのでしょうから(日除け?)、仕方ありません。ちなみに画像右(下)の奥に写っている白い壁の小屋がシャワー室でして、右側が女性用、左側が男性用です。


 
そら豆みたいに片側だけ窪んだ形状をしているプールは、シャワー室側が湯尻となっており、その反対側(公園の入口側)に源泉投入口があります。排水口から最も遠い位置でお湯を注ぐのはごく自然なことであり、湯尻では小さな子どもが遊べるようなぬるさになっている一方で、湯口に近づくに連れて徐々に熱くなってゆくのですが、驚くべきは湯口から落とされるお湯の温度でして、私が計測したところ、なんと74.2℃という火傷必至の激熱な温泉が、何らの防護もなく、パイプからプールへ直接注がれているのであります。過保護且つ責任問題が面倒な日本でしたら間違いなく、直に触れられないよう、柵を設けるなどの措置を施すでしょうけど、こちらの場合は、熱いかどうかは客自身がわかるんだろうから、客が自分で気をつければ良いじゃん、ということなのでしょうね。何らかの措置をとるべきか或いはそのままにしておくべきか、賛否両論あるかと思いますが、海外ではこのように自己責任に任せているケースが多く見られ、私個人としても日本の過保護さには辟易していますので、このようなタイのスタイルには賛同します。

お湯は無色透明で、湯口で僅かにタマゴ臭および味が感じられましたが、ほとんど無味無臭と言っても差し支えないほど匂いや味は希薄です。しかしながらpH8.7という数値が示すとおりにアルカリ性であり、スルスルっと肌を滑るなめらかな浴感が気持ちよく、お湯に浸かれば本物の温泉であることを実感できます。しかもれっきとした完全放流式です。



熱いお湯に浸かりたかったので、湯口の近くで撮影してみました。激熱の湯口がすぐ傍にあるにもかかわらず、私がいる辺りは(体感で)43~4℃くらいでした。表面積が広いので、いくら熱いお湯を注いでもすぐに熱を奪われちゃうんですね。でもお湯の鮮度感は良いですし、浴感も心地よく、人里離れた田舎の静かで清らかな空気のもと、鮮度感のある温泉に入浴すると、開放的な気分が味わえましたよ。しかも湯上がりはサラサラとした爽快感が得られたととも、肌はしっとり保潤しましたので、お肌のコンディションを気にする方にも嬉しい温泉であると言えそうです。

訪問時はフランス人グループが先に入浴していましたが、みなさんプール中程のぬるいエリアで寛いでいらっしゃいました。のんびり長湯するには熱いお湯よりもぬるい方が良いですからね。また、日暮れ近くになってそのグループが去ると、受付小屋のお姉さんも姿を消して無人状態となり、そのタイミングを見計らったかのように、地元の人達が続々やってきました。たとえば、地元の中高生と思しき男子たちは大はしゃぎでプールに飛び込んでいましたし、2歳くらいの小さな娘を抱いたお母さんは、湯尻で娘にシャンプーしながら自分も着衣のまま沐浴していました。観光客のみならず地元の方にも愛されているんですね。環境もお湯の質も満足度の高い温泉でした。


GPS:19.957779N, 99.691094E,



開設時間不明
プール入浴料30バーツ(個室風呂1人50バーツ・2人80バーツ・3人100バーツ)

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
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