光産業技術動向ブログ OITT

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シリコンスピン量子ビットの高速読み出しに成功

2020年02月20日 | イノベーション


理化学研究所(理研) 創発物性科学研究センター 量子機能システム研究グループの野入亮人特別研究員、武田健太研究員、樽茶清悟グループディレクター、東京工業大学 工学院 電気電子系の小寺哲夫准教授の共同研究チームは、シリコン量子ドット[用語1]デバイス中の電子スピン[用語2]の高速読み出しに成功しました。

本研究成果は、高精度制御と将来的な集積性の観点から近年注目を集めている「シリコンスピン量子コンピュータ[用語3]」の実現において、重要な課題となっている、「高速量子ビット[用語4]読み出しが可能な試料設計」に指針を与えるもので、今後の研究開発をより一層加速させると期待できます。
今回、共同研究チームは、高周波反射測定法が適用可能なシリコン量子ドット試料の設計を明らかにし、この技術を用いて電子スピン量子ビットの読み出し時間を従来の10分の1に低減することに成功しました。
本研究は、科学雑誌『Nano Letters』オンライン版(1月16日付:日本時間1月17日)に掲載されました。
[用語1] 量子ドット : 電子を空間的に3次元全ての方向に閉じ込めることで運動を制限し、0次元構造としたもの。その性質から人工原子とも呼ばれ、電子を一つずつ出し入れすることができる。

[用語2] 電子スピン : 電子が右回りまたは左回りに自転する回転の内部自由度のこと。この回転の向きに応じて、通常上向きまたは下向きの矢印で表される。

[用語3] 量子コンピュータ : 量子力学における重ね合わせを利用して、超並列計算を実現するコンピュータ。従来のコンピュータでは天文学的な時間のかかる因数分解の問題などを、数時間で解くことができる量子アルゴリズムが開発されており、超高速計算が可能になると考えられている。

[用語4] 量子ビット : 電子スピンの向きなどに符号化された量子情報の最小単位のこと。通常のデジタル回路では「0もしくは1」の2状態に情報が保持されるのに対し、量子ビットでは「0でありかつ1でもある」状態を任意の割合で組み合わせて表現することができ、これを量子力学的な重ね合わせ状態と呼ぶ。このことを表現するために、通常量子ビットの状態は任意の向きの矢印によって表される。

[用語5] 高周波反射測定法 : ある系に高周波を加え、その反射信号を測定することで、対象の系のインピーダンスを測定する方法。本研究では、高周波共振回路のインピーダンスを測定することで、電荷計の伝導度を高速かつ高精度に測定できる。


さらに概要を知りたい方は次の記事を見てください。
東工大のニュース
光技術や光産業の情報交流フォーラム
エイトラムダフォーラムhttp://www.e-lambdanet.com/8wdm/

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