光産業技術動向ブログ OITT

OITTとは、Optoelectronic Industry and Technology Trendの略称です。

世界初、ラックサイズで大規模光量子コンピュータを実現する基幹技術開発に成功 ~光ファイバ結合型量子光源を開発~

2021年12月29日 | 新技術開発

日本電信電話株式会社(以下 NTT、代表取締役社長:澤田純、東京都千代田区)は、国立大学法人東京大学(以下 東京大学、総長:藤井輝夫、東京都文京区)、国立研究開発法人理化学研究所(以下 理化学研究所、理事長:松本紘、埼玉県和光市)と共同で、ラックサイズの大規模光量子コンピュータ実現の基幹技術である光ファイバ結合型量子光源(スクィーズド光源)(※1)を開発しました。 


 量子コンピュータは、重ね合わせ状態と量子もつれ状態という量子力学特有の現象を利用した超並列計算処理が可能なことから、世界各国で研究開発が進められています。現在様々な方式が考案され、その中でも光の量子である光子を用いて計算する光量子コンピュータには多くの強みがあります。例えば、他の方式で必要とされる冷凍・真空装置が不要なため、実用的な小型化が可能です。また、時間的に連続的な量子もつれ状態を作ることで、集積化や装置の並列化なしに量子ビット数をほぼ無限に増すことができます。加えて、光の広帯域性を活かした高速な計算処理も可能です。さらに、一つの光子で量子ビットを表すのではなく、多数の光子で量子ビットを表す手法を用いれば、光子数の偶奇性を用いた量子誤り訂正ができることも理論的に示されています。この方式は光通信技術とも親和性が高く、通信波長帯の低損失な光ファイバや光通信で培われた高機能な光デバイスを用いることができ、実機構築に向けた飛躍的な発展が期待できます。
 今回、光通信波長で動作する光ファイバ結合型量子光源を新たに開発し、光ファイバ部品に閉じた系で、6テラヘルツ以上の広帯域にわたって量子ノイズが75%以上圧搾された連続波のスクィーズド光の生成に世界で初めて成功しました。これは光量子コンピュータにおける基幹デバイスが、光の広帯域性を保ったまま光ファイバと相互接続性のある形で実現できたことを意味します。これにより、光ファイバおよび光通信デバイスを用いた安定的かつメンテナンスフリーな閉じた系において、ラックサイズの現実的な装置規模での光量子コンピュータ開発を可能とし、実機開発を大きく前進させることができます。
 本成果は、2021年12月22日(米国時間)に米国科学誌「Applied Physics Letters」において掲載されます。また本論文は「Editor's Pick」論文に選出されました。なお、本研究の一部は、科学技術振興機構ムーンショット型研究開発事業の助成を受けて行われました。


さらに概要を知りたい方は次の記事を見てください。
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