ヌマンタの書斎

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公示価格

2006-03-27 09:49:35 | 経済・金融・税制
23日、国土交通省から公示価格が発表されました。都市商業地での価格上昇がクローズアップされていますが、よくよく見ると全国平均では下がっている。以下は以前掲示板で書いたものの再掲です。

土地の公示価格とは、国土交通省が全国の不動産鑑定士に依頼して、毎年1月1日現在の各地の地価を公示しているものです。とかく価格が一般には不透明な土地取引の指針となるべく定められたものですから、それなりに権威があります。なお似たものに都道府県が毎年7月1日現在の実勢価格をもとに発表する地価調査価格(基準値価格)なるものも存在します。

とりもなおさず、一応「お上」が作成したものだけに一般消費者、官公庁(実はここが問題!)には信頼されることが多い土地の時価(評価額)と言えるでしょう。

ただし問題点もあります。まず評価の基準となる土地は、現在3万箇所あまり。やはり場所が限られていることから、実務上使いづらく、またその選定にも疑問があります(後述します)。また評価には時間がかかるため、実勢価格とは2年ほどずれてしまいます。

土地の公示価格制度は、昭和54年に始まりました。当初国土庁は「地価抑制」の目的を併せ持っていたため、必然的に実勢価格よりも低い評価となり、だいたい相場の4~5割り程度の評価額にとどまっていました。

そうなると世間の信頼度は低下するため、国土庁は「評価替え」という手法を行使して、公示価格をすこしずつ引き上げていきました。いかなる基準で基準となる土地の変更をしたのかは、官僚の判断次第だったようで、これが後々大問題となります。一時期日経平均だかなんだかで、選定する株式の入れ替えをやったところ、おおいに信頼度を下げたことが株式市場でもありました。時の大蔵大臣からも批判されていたと記憶しています。しかし、公示価格の評価替えに関しては一部のメディア(たしか週刊エコミストだった)が騒いだときも、国土庁は違法性なしとして誤りを認めなかった。

不動産バブルの始まりと終焉、異常な土地価格急上昇とその後の急落は、なんと実勢価格よりも高額な公示価格を生み出してしまいました。この影響はかなり大きいといわざる得ない。

まず固定資産税が急激に上昇した。都心の地主さんたちは大慌て。現在の固定資産税は昭和六十年代の4倍くらいに跳ね上がっています。時価が下がっているのに、固定資産税評価額は高止まりしているわけで、行政側すら説明できず困っているありさま。まあ、地方自治体の重要な財源となっているため、急激に下げられない事情もあるようです。

さらに困った立場に追い込まれたのが国税局。公示価格は当然、路線価評価額にも大きな影響を与えており、やはり実勢価格よりも路線価が高いケースが出てきた。この土地を物納されたものだから、いざ競売等で処分すると、必ず売却損が出る始末。こうなると今まで否定してきた不動産鑑定士による土地評価額を認めることもある(時価が路線価を大幅に上回っている場合)と通達を出して、我々を大いに驚かせてくれたものです。

そんなわけで私個人は、公示価格を参考にすることはほとんどなく、むしろ「公示価格は破綻している」と考えています。

 2005/09/20
コメント
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