ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

言論の自由は絶対なのか

2006-03-01 09:57:51 | 社会・政治・一般
言論の自由という奴は、議会制民主主義を採用する国にとっては必要不可欠なものです。適切な情報が有権者に与えられてこそ、投票による政治指導者の選択は意味をなすからです。

しかし、人類の歴史の上では、言論の自由なる代物はかなり特異な現象であるのも事実だと思います。歴史上、いかなる国家、社会においても時の権力者などを批判することは、極めて危険な行為であり、それは多くの場合死を伴うことも珍しくないものでした。「ペンは剣よりも強し」とは、そうでない現実ゆえに、そうあって欲しいとの願望を含んだ言葉なのです。

自由という権利を行使すれば、その行使に伴う責任があるのは当然のこと。その責任には、時として自らの命を持って償わねばならぬ場合が生じてしまうこともあるでしょう。

現在、デンマークのマスメディアに掲載された風刺画を巡り、欧米とイスラム諸国との間で激しい軋轢が生じているようです。イスラム教は世界最大の宗教組織であり、1千年を超える伝統を持った存在でもあります。そのイスラムを侮蔑するかのような言論の自由を行使すれば、その代償は極めて厳しいものになることは、ある意味当然でしょう。

私個人は、宗教そのものには寛容でありたいと思っていますが、イスラム教そのものには、あまり好意的ではありません。されど、イスラムそのものを揶揄、中傷しようとは思いません。誰でも心のなかに大切なものを持っているものであり、それを傷付けられれば、それ相応の報いがあっても致し方ないと考えているからです。

産業革命以降、西欧に押されっぱなしのイスラム。かつての先進国、イスラムが物質的に劣位におかれ、その上精神的にまで傷つけられたら、激情が迸るのはある意味当然な気がします。まあ、その背景にあるのは欧米文明(近代民主主義と経済成長伝説)に対する不信感なのですがね。

重ねて主張させてもらいますが、「言論の自由」とは人類の普遍的な価値観ではありません。人類の数千年の歴史のなかで、局地的で期間限定の特異な概念であろうと私は考えています。今回の騒動には、欧米の傲慢さがにじみ出ていると感じざる得ません。
コメント (2)
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