ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

絵心

2006-03-25 15:52:50 | その他
子供の頃から絵を描くのは好きだった。勉強が嫌いだったので、もっぱら教科書やノートに悪戯書きをするのが常だった。でも美術の時間に、まじめに絵を描くのはとても楽しかった。正式に習ったことはないし、美術部などにも属したことはないのですが、先生が勝手に区や都のコンクールへ出展して、何回か賞をもらったこともあります。但し小学生の時のお話。

十代の頃は、身体を動かすことが好きで、いつしか絵を描くことはしなくなっていました。高校の美術の授業では、もっぱら工作が多く、描いてもスケッチのみ。これはこれで好きだが、一番好きな水彩画とは、とんと縁遠くなってしまった。

山登りに夢中だった大学時代。4年になると少し余裕が出てきて、長い休憩時に風景をスケッチしていたところ、周囲の反応が良く、それで絵を描く楽しみを思い出した矢先だった。社会人になったら、少しノンビリした登山をして、スケッチを描いてみようと密かに思っていた。

しかし、新社会人になって間もなく難病を患い、9年にも及ぶ闘病生活が始まってしまった。2年余の入院生活を除けば、自宅でゴロゴロしていた毎日。実は当時、絵を描こうと思ったことがある。しかし、描きはじめて気が付いてしまった。

描こうと思っていたことが描けず、しかもその絵には暗い怨念がこもっているとしか言いようのない醜い画風が漂っていること気付いた。鬱屈し捻じ曲がった心が絵に表されるがゆえに、自分の心の奥底にある、見たくもない醜い自分の心象を認識せざる得ない。

描いた絵を見て、息苦しくなり吐いてしまった。絵の上手い下手以前の問題でした。描くことで気持ちが昇華されるかもと、考えてみたりもしましたが、やはり苦しくて駄目。当時は文章もほとんど書いていません。鏡に映った自分を見るのも嫌でした。

当時の絵は、全て燃やしてしまいました。絵は心を写す。あんな自分は残したくない。あんな自分ではいたくない。病み衰えた自分を憎み、嫌悪し、殻に閉じこもった日々。それでも絵は好きなのです。

病床にもかかわらず、外出許可を貰って観に行った「ターナー展」。私には絶対描けない絵(技術の問題は別にして)。あんな素晴らしい絵は私には似合わない。でも憧れの気持ちを抑えることも出来ない。社会復帰後、わざわざロンドンまで行って、3日間テート・ギャラリーとナショナル・ギャラリーでターナーの絵を堪能したものです。

最近このブログにトラックバックしていただいた古山さんのHPの絵は、私がこんな風に描けたらなあ~と密かに思っていたものでした。白いスケッチブックを見ただけで、赴Cづいてしまう私には決して描けない世界。PCの前で、ため息つきながら堪能しています。自分に絵が描けないことを悔やむより、素晴らしい絵に出合えたことの幸運に感謝したいと思います。
コメント (5)
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