ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

プロレスてっさ ディック・マードック

2006-03-05 21:05:33 | 社会・政治・一般
多分、最多来日数を数える外人レスラーでした。アマレスの素養もあり、寝技も関節技も使え、おまけにアマチェアボクシングの経験もあり、その左ジャブと右ストレートはなかなかに堂の入ったものでした。でも基本的にはラフ・ファイトを得意とする暴れん坊。

実力はプロレス界屈指のものでしたが、チャンピオン・ベルトには縁のない人生でした。理由は簡単、性格がチャンピオン向けではない。「ぶん殴って、ぶん投げて、ギャラが貰えて、美味いビールが飲める最高の商売さ!」と楽しそうにインタビューに答えていましたが、間違いなく本音でしょう。
チャランポランな陽気なヤンキーでしたよ、彼は。

善玉たる日本人レスラーと悪役たる外人レスラーという古典的プロレスが普通だった70年代から、全日本プロレスで悪役レスラーとして活躍していました。でも不思議なことに、子供やお年寄りに人気のあるプロレスラーでした。多分、陽気な人柄がにじみ出ていたのでしょう。地方巡業の時は、試合の後街の居酒屋で、地元の人たちにまじって楽しそうに酒を飲んでいたそうです。

そんなマードックでしたが、彼の実力を思い知らされた試合を観たことがあります。それは移籍した新日本プロレスでのこと。当時アメリカのトップレスラーだったブルーザー・ブロディがボス面をしていたマードックに本気の勝負を挑んだことがあります。

ブロディは超獣と呼ばれる大型レスラーで、身長は2メートル近く均整のとれた体格と、アメフトで鍛えた体から繰り出すパワー自慢のラフ・ファイターでした。性格はともかく、強さは驚異的で売り出し中の選手でもありました。彼が既にベテランの域に達しつつあるマードックに、試合中本当に強いのは自分だと喧嘩を売りました。

試合の雰囲気が急に変わり、レフリーが緊張しだしたので、観客にも異様な事態が始まっていることが伝わってきました。なにより、控え室にいた他の外人レスラーたちまで通路に飛び出してきた。

たしかに喧嘩を売るだけにブロディは強かった。しかし百戦錬磨のマードックは、すかさず寝技勝負に持ち込み、あっという間に関節を決めてしまった・・・と思います。マードックが観客から見えないように、関節を決めていたようなので、私ら観客にはよく分かりませんでした。しかし、ブロディが暴れるのを止めてしまったので、喧嘩にけりがついたことはなんとはなしに伝わってきました。

でも、凄かったのはその後でした。実力差を見せ付けたマードックは、なんと寝技を解き、ブロディの得意なラフ・ファイトの展開に戻してしまったのです。そしてブロディのパワー溢れる攻撃を見事に受けきってみせました。喧嘩からプロレスに試合を戻し、見事観客を沸かせてみせたのです。

プロの凄みを見せ付けられた試合でした。チャランャポランなマードックでしたが、プロ根性は超一流でした。私がとっても好きなプロレスラーの一人でした。

ただ、マードックには一点だけ問題があった。それは酒癖でも女癖でもなく、正真正銘の黒人嫌いであったことです。このことは次回、ブッチャー編で書きます。
コメント
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