「光のお父さん計画」それは、僕が愛してやまないファイナルファンタジーXIVの世界へ父を誘い、正体を隠しながら壮大な冒険を共にする親孝行計画である。
・・・・・
いよいよ最終回。
アバンの子供パート復活。お父さんが披露したトランプの手品を魔法だと思って興奮する光生。しかし、やり方を教えてもらったら、なんてことはなかった。手品のタネは知らないほうがいい時もあるのだ。マイディーが実の息子だということも、明かさないほうがいいのかもしれない。
エオルゼアパートはツインタニア戦に突入していた。すでに何度か敗退している模様。
タンクが死んだらツインタニアが暴れて全滅だし、ヒーラーが死んだら回復間に合わなくて全滅だし、アタッカーが死んだら削りきれなくて時間切れ。一人がたった1度でもミスをしたら、即終了。
「これってまさに・・・大縄跳びだな」
一方、リアルパートでは唐突に光生と陽子がお洒落な店で夕食。おいおい、いつの間にそういう関係になってんだよ。
「いろいろ楽しいんです。会社に稲葉さんがいるおかげで」
いいトスが上がってるのに光生の返事は「へぇ。そう」だった。しかも陽子の顔を全く見ない。オンライナーはリアルの人間心理が分かってない。そんなだから独身なんだ。
「今週の日曜日何してます?」
陽子に誘われてるのに光生の意識はツインタニア戦のフィールドに居て、彼女の発言の重要性にはまったく気付いていない。これで人生が変わるかもしれないのに。
「今週の日曜日は、1日忙しいと思う」
「来週は?」
光生の脳裏には、なぜか皆でツインタニアに土下座している図が浮かぶ。
「たぶん忙しいんじゃないかなあ」
土下座は参りましたという意味か? 負けるから何戦もやって忙しいのか?
「稲葉さんて、鈍感ですね」
「え?何が?」
ここまで来ると重症だな。無死満塁で全球ど真ん中ストレートを全部見送って三振て感じ。
メンバーがじょびハウスに集まっている。男性ヒューラン?や普通サイズの女性キャラも、環境音的にだが喋っている。あるちゃん、きりんちゃん以外のメンバーの声が聞こえるのは多分初だ。
マイディーさんはなかなかツインタニアに勝てないことについて悩んでいた。「(ミスして)ごめん」「気にしないで」を繰り返していると麻痺する。負けてもやり直せるから、緊張感がなくなってくる。
「きりんちゃん、晩御飯何食べた?」
「マンゴーアイス!」
そういえばブログでも、きりんちゃんがアイスはご飯じゃないよと言われるシーンがあったね。
緊張感がなくなってくるとミスも増える。気にしないで、という言葉も届かなくなる。ツインタニアは、数々の友情や信頼を断ち切ってきた。
でも、ゲーム内では本心でお父さんと話せるようになったし、すでに「光のお父さん計画」は成功と言えるのかもしれない。ここでやめようかと光生が思った時。インディさんが唐突に、金曜日から入院するので、それまでにツインタニアを倒したいと発言した。
「もちろん生きて帰ってくるつもりです。でも、ひょっとしたら帰ってこられないかもしれません」
「悔いを残したくないんです」
「だから、残りの二日間を全力で戦います」
というわけで、残り二日でツインタニアに勝たなければならなくなった。さらにマイディーさんは、二日で勝てなかった場合、ツインタニア戦は凍結すると宣言した。
「つまり、そうなったら僕らの負け、ということです。勝ちましょう!インディさんのために!」
自ら退路を絶って皆の集中力を高める作戦だな。いわゆる背水の陣というやつだ。
「私達の力を合わせて、ミラクルを起こしましょう!」
お。きりんちゃんが珍しくまともなことを言った!
会社パート。大急ぎで職場を後にし、メガネを取って駆け出す光生。メガネをかけているとサラリーマン光生で、メガネを外すとマイディー(の中の人)っていう切り替えをしているよね。メガネを外すとマイディーのスイッチが入るというか。
居間ではお父さんがコントローラを睨みつけて精神統一している。二階でも光生が父と同じように手を膝に置き、ネクタイを外しもせず集中力を高めている。親子で同じことをしている。
緊張するよね。僕もFFXIの「オメガ・アルテマ戦」は緊張したなあ。
しかし、水曜日は敗退。残り1日。また定時で速攻退社しようとする光生。
陽子「稲葉さん!今日この後って」
光生「ツインタニア!」
呆気にとられる職場の面々。この中にじょびのメンバーがいたら面白いんだけど。
もうあとがない木曜日は、各自が鍛え直すシーンも映された。インディさんは滝に打たれながら得意の筋肉美ポーズという謎の修行。マイディーさんは他のモンクとスパーリング?型の練習? カンフー映画みたいだ。きりんちゃんは船の舳先で光る剣を振り回していた。親方は剣か何かを打って鍛えている。
親方の鍛冶はともかく、他のメンバーの修行はイメージで、あれやったからってツインタニアに勝てるわけではないと思うが。あくまで光生の脳内のイメージだよね。実際に何かやるとしたら、装備を見直し、できれば強化。マクロを見直す。アイテムを補充。攻略Wikiを見直す。ってとこかね。
1列になって決戦場へ向かう。8人パーティーが整列。「きりんセット」からのゴーはなし。
お父さん、ゴツイ弓で矢を連射。光生脳内イメージではよく分からないが、UI入り画面ではダメージが入っている表示が。FFXIVの経験がない僕には戦闘の具体的なところまでは分からないが、各自がそれぞれに頑張って、もう少しというところまでツインタニアを追い詰めたのだと思われる。下ではお父さんが、上では光生がエキサイトしている。
「押せ!押せ!」
「押せ!押せーっ!」
押せ押せということは、もう後のことを考えずに削り切るのみという状況なのだろう。そういうときの敵のHPバーは、腹が立つほどゆっくり減るものだが・・・。
「イヤアアアーーーッ!!」
インディさんの気合いと共にリミットブレイクと思われる技が発動し、無数の金色の矢がツインタニアに降り注いだ。その攻撃でツインタニアは倒れた。
「よっしゃあああ!」
「やった!やったあああ゛!」
これだけ喜べるものがあるっていいな。二階と一階でそれぞれ絶叫し、バンザイする親子。風呂から上がったお母さんが何事かと驚いている。慌てて「何でもない何でもない」と取り繕いつつ、こっそりガッツポーズを続けるお父さんがかわいい。
やっぱり言おう。手品のタネを明かす決意をするマイディーさん。
確かに僕たちは仲のいい親子じゃなかったね。だけど知ってる? この数ヶ月、僕たちはあの頃のように、一緒に笑ったり泣いたり、冒険してきたんだよ。
「おめでとう。お父さん」
おおっ、とじょびメンバーがどよめく。インディさんの長い沈黙。マイディーさんを見つめているが。
「ありがとう・・・あるちゃんさん、きりんちゃん」
「あっ」
「ええっ?」
なぜか弾が飛んできて困惑する小さい人たち。
「なっ、スルー!?」
ざわつくじょびメンバー。
「はい、注目。みんな注目」
軽く飛び跳ねながら手を挙げるマイディーさんが、ちょっと可愛いと思った。
「エオルゼアは楽しかったですか?お父さん」
「お父さん?・・・もしかして」
見つめ合う父娘。じゃなくて父子。ていうか、この猫娘が実の息子だと気付けってのが無茶なんじゃないかなあ。
「この中にお父様がいらっしゃるんですか?だとしたら是非ご挨拶せねば」
鈍感すぎるだろと光生は呆れるが、君もかなり鈍いぞ。ていうか、父親譲りの鈍さなんだろう。
「これからも、ずーっとよろしくお願いします。メイデーさん」
(マイディーだけどね)
博太郎のほうもリアルで呟く。
「ほんまにお世話になったな、メイデーさん・・・お父さん・・・お父さん?!」
エオルゼアでは会話が噛み合わなくて、親子の感動の再会シーンはなかったが、最後にお父さんが天井を見上げたので、気付いたと思われる。
袴田が帰国。ニューヨーク支社長の娘に手を出したらしい。光生はまた陽子に映画に誘われるが、そういう映画は苦手と言ってかわす。
病院。お父さんが呼ばれて手術室に向かう。心配するお母さんと光生に、お父さんはPS4のコントローラを操作するように手を動かして言う。
「大丈夫や。心配するな。病気なんて大した敵やない。すぐ倒してな、帰ってくる」
まあ、ツインタニアよりは楽な相手かもね。
手術に向かうお父さんが、廊下の向こうの光の中に消えていった。これからまた違うボスと戦うわけだ。
「父さんは本物の光の戦士かもしれない。そう思った」
1年後。
沈んだ表情でFFXIVをやっている光生の部屋にお母さんが入ってくる。お母さんは、まるでお父さんが死んでいるかのように悲しそうな顔をしている。
「父さんだって、母さんのそんな顔見たら悲しいと思うよ」
「そうね。しっかりしなくちゃね」
ブログ「光のぴぃさん」によると、最初の脚本家が持ってきたストーリーでは、お父さんが死ぬことになっていたが、マイディーさんが「父は死んでいません」と猛反発してボツになっている。なので、完成したドラマではお父さんが死ぬことは絶対にないと思って安心していたのだが、この会話では明らかにお父さんが・・・。
と思わせておいてお父さん登場。やっぱり生きていた。タンクの立ち回りを教えてくれと光生に頼む。でもお父さんは弓術士?詩人?で、タンク職じゃないじゃん。
お母さんが悲しんでいたのは好きな韓流スターが婚約したからだった。
居間のテレビであの頃のようにFFをプレイする光生とお父さん。お父さんの右側に光生が座るのもあの頃と同じだ。
「何をやってんだお前。タンク下手やなあ。お父さん教えたろか?」
ちょっとお父さん偉そうだけど、病気にも勝ったようだし、息子と和解もできて、めでたしめでたし、だな。
・・・・・
ブログ「光のぴぃさん」でドラマ化までの長く険しい道のりや、エオルゼアパートの撮影方法を知って、一体どんな風に仕上がったのかを知りたい興味が強かった。ストーリーは大体分かっていたので、仕上がりを確認するための7週間って感じだった。
僕の父はすでに亡くなっているが、僕との関係は、まあまあだった。厳しい父でビンタを食らったりもしたが、共通する趣味が多かった。写真とカメラは父の影響で始めたものだ。それなりに孝行したつもりだが、このドラマを見て、こういう親孝行もしたかったなと思った。うちの父は博太郎以上にゲーム駄目だけど。
逆に、こういうのをやられてみたいとも思った。うちの子は二人とも女の子だけど、下の子はMMORPG適正高そうなので、将来環境が整ったら一緒にエオルゼアなりヴァナディールなりを旅してみたい。