「光のお父さん計画」それは、僕が愛してやまないファイナルファンタジーXIVの世界へ父を誘い、正体を隠しながら壮大な冒険を共にする親孝行計画である。
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アバンが子供パートではなく、お父さんの病気に関するシーンを編集したダイジェストだった。いよいよ佳境に入ってきたなという感じ。
袴田は、なぜか光生に肩を揉まれながら、仕事を辞めるほどの病気・・・癌とか?と言う。まあ普通そう思うよな。陽子が妙な反応。
「稲葉さん、癌なんですか?!」
この若さで癌だと進行早いだろうなあ。
陽子の父親も癌で、心配させまいと家族には秘密にしていたという。部屋の掃除をしていたら、隠していた診断書が出てきて発覚。
袴田の父親の遺品の中にエロ本があったことで盛り上がる。捨てるわけにもいかないし、と悩んでいると、例の仲良しOLから「神社で焼いてもらう」という斬新なアイディアが。それならあの世でも読める。
「死んだあとも親孝行できるってことか!」
うちの父はもう随分前なので遺品は整理してあるが(母がどう処分したかは聞いてないけど)、これからの人には非常に参考になる話だと思う。いやマジで。
お父さん、そそくさとご馳走さまして、またFFかと思いきや、走ってくると言う。カレーもサラダも残している。やはり体調が悪いのか。光生は心配するが、お母さんは「病気の人はダイエットしない」と笑う。
お父さんがいない隙に、光生はお父さんの部屋を捜索すると、机の引き出しの中に表紙を裏返した本が見つかる。袴田の「表紙を裏返したエロ本」発言が、大事なことだからと言わんばかりに脳内で2回再生される。診断書を探していたのではなかったのか?
恐る恐る開いてみると、FFXIVの攻略本だった。付箋がたくさん貼ってある。直接書き込んでもいる。「メイデー→DPS」「あるちゃん→ヒーラー」などのメモも。
光生は、何事にも勉強熱心なお父さんの姿勢を垣間見て、熱いものが込み上げてきている様子。ブログでも、一杯書き込みがされた実際の攻略本の写真が載ってましたな。
エオルゼアでは敵(帝国?)の本拠地前とかいう所に来ていた。いかにも悪い奴らの基地の前って感じ。悪役の雑魚っぽい警備兵が行ったり来たりしている。
楽しみですねえ、わっはっはとやる気満々のインディさん。いつもと同じだ。ひとまずホッとするマイディーさんと中の人。
会社パート。女子社員がバレーボールしているベタな音が聞こえる屋上で、袴田がニューヨークに転勤することが発表される。また島耕作の例を出して「出世コース」「金髪美女を愛人にする」「妻とはうまくいってない」「いい流れだと思わんか?」とポーズを決める袴田。その側頭部にバレーボールが直撃。
「袴田さんてポジティブですね」
「"悲観主義は気分によるものであり、楽観主義は意志によるものである" フランスの哲学者アランの言葉だ」
ここで、「フランス 哲学者」でググろうとしたら、「アラン」もサジェストで追加されたよ。皆同じことを調べようとしているのかも。ていうか、このドラマを見てる人、結構多いね。
袴田の引き継ぎで、彼の担当クライアントへ行く。担当者がすげー馴れ馴れしい。
「袴田ちゃん、パツキン美女スケコマシてきてよwww」
「キメたら"トラ・トラ・トラ"とだけメールしますから(爆)」
とこかで見た廊下だなと思ったら、そこは大野氏の会社だった。博太郎の社内改善案は効果があったのかなかったのか。袴田と担当者の相性はバッチシのようだが。
で、大野氏がお父さんの病気のことを光生に言ってしまう。具体的な内容は演出的にカットされていたが、光生は愕然とした表情だったので、深刻な病気なのだろう。ていうかアレだろう。
日が暮れて会社に戻る光生の背後に停まっていた車が、ホンダの現行アコードだった。稲葉家の車はトヨタの現行マークXなので、このドラマは自動車メーカーの縛りがないのだろう。
お父さんが電話に出ない。FFに夢中で電話に出ない。
仕方なくノートPCでFFXIVを起動。あんまり大きくないPCだったが、FFXIVを動かせるパワーがあるのか。結構重そうなゲームだが。
「お待たせしました」
「おお、メイデーさん。あんまり遅いんで、寝てましたよ」
そういえばインディさん、立ったまま鼾かいてたね・・・。
「さあ行きましょう。帝国をぶっ潰しに!」
だが、光生の頭の中には「ゲームなんてしている場合じゃなかったんだ」と後悔の念が渦巻いていた。もっと一緒にやるべきことがあったんじゃないのか? 戦いながら、エオルゼアでの父とのシーン、セリフが走馬灯のように再生される。
ゲームではなく、リアルで親孝行すべきだったのだろうか? お父さんとは子供の頃以来まともに遊んでいなかったが、無理して、例えば旅行に行くとか。
もっと早く気付いてあげればよかったのだろうか。しかし、お父さんは家族に本当のことを話さない人だ。病気のことだって、親友には教えたのに家族には教えなかった。
「病気で仕事を辞めたとおっしゃっていましたが、大丈夫なのですか?」
「正直、大丈夫ではないと思います。医者には手術を勧められました」
大丈夫ではないということは、死ぬ可能性もあるということだろう。だが、手術はしていないと言う。
(どうして!?)
「私には仕事しかありませんでした。病気で仕事を辞めねばならなくなり、私は全てを失ったのです」
お父さんは、何のために生きるのかわからなくなり、手術も無意味に思ったという。
「私は暗闇の中にいました・・・」
耐えきれなくなったのか、光生がノートPCを閉じようとしたら、ピコーンとチャットの音がした。
「でも今は違います。皆さんと出会えて一緒に冒険をした数ヶ月。世の中にはまだまだ、こんなに楽しいことがあるのだと知りました」
「皆さんには感謝しかありません。ようやく病気と戦う勇気が湧きました」
お父さんもキーボードを叩きながら泣いていた。
オンラインゲームは楽しいということを伝えたい、世の中のオンラインRPGのイメージを変えたいと、マイディーさんはいつもブログに書いている。お父さんはオンラインゲームのおかげで、「光のお父さん計画」のおかげで、病気(たぶん癌)と戦う勇気を得た。オンラインゲームは病気を治すこともできるのだ。
リアルで一緒に旅行するのも、オンラインで一緒に冒険するのも、等しく親孝行になるのだ。
僕もFFXIを6年半やった。最初のジョブはナイトだった。ナイトはパーティーメンバーを助けるために死ぬ職業である。リアルでは、まずやらない、仲間を逃がすために盾となって死ぬという行為を僕は何度も行った。
MMORPGには、リアルでは殆ど味わえない命がけの冒険があり、それを共にするのはリアルな人間である。もちろん、現実の冒険のような本物の危険はないが、それはそれでスリルと感動に満ちた体験なのだ。そんな冒険の中では、リアルでは演じないような人柄を演じ、リアルでは言えないようなことを言うことができて、リアルではできないような仲間ができる。それがオンラインゲームの楽しさ、醍醐味であり、お父さんはそこに新しい生き甲斐を見つけた。TVCMではないが、FFXIVは「リアルを変えるファンタジー」なのだ。というか、もはやリアルとオンラインを区別する必要なんてない。
(父さんはこれまでたくさんの強い敵を倒してきたんだ。病気にだって勝てる!絶対に!)
この記事を書くために、何度もお父さんの告白シーンを見直しながら、僕は自分の頬が濡れていることに気づいてビックリした。僕は泣いていたのだ。冷静に、機械的に台詞を確認していただけなのに。