今週末から公開かと思っていたら…先行上映なるのもがあったのですね。
どうせ東京だけでしょ。横浜じゃ先行はないな~。と思い、
「マン・オブ・スティール」3D字幕の上映館を探していたら、最寄りの映画館でも
横浜の映画館でも「そして父になる」の先行上映をやってるじゃないですか!
だったら、もう公開しちゃおうよ~っと悪態をつきつつ映画館に足を運びました。
先日、たまたま是枝監督の「歩いても、歩いても」を見直す機会があって、以前見た時とは違う
衝撃を受けました。
それは私の心境に変化があったからなのですが・・・、
意図して放たれたものなのか無意識なのか?何げない会話の中に隠された棘のある言葉。
相手を思いやりながらも、傷つけあったり、敢えて知らないふりを決め込んだり。
家族の中に漂う緊張感。そんな危機的緊張感をほぐすため、道化を演じる子供。
「歩いても…」ではYOU演じる娘夫婦(心理学ではトリックスターと呼ぶそうな)がそんな役回りを
演じています。
こういう脚本を書ける是枝監督は、いったいどういう家庭環境でお育ちになったのか?
どういう家庭を築いておられるのか?に、非常に興味が沸きました。
「誰も知らない」はあまりに重くて…最後まで見れませんでした。
いま、是枝監督の作品を順番に見ています。「誰も…」も、もう一度挑戦してみます。
************************
そ し て 父 に な る
LIKE FATHER, LIKE SON
************************
< ストーリー >
大手建設会社に勤務する野々宮良多は、妻と息子と供に高級マンションで暮らすエリート。
子育てを妻に任せ、仕事優先だが、躾に厳しく自分の通った私立小学校を受験させる。
ある日、息子慶多(けいた)が産院で取り違えられた他人の子供であることが発覚する。
本当の息子は電気店を営む斉木夫婦の長男琉晴(りゅうせい)。両家は面会し、交流を深める。
本当の子供と6年間自分の子供として育てた子供。病院を相手取った裁判が進む中、
交流を通して深まる苦悩。血のつながりか?共に過ごした時間か?
二つの家族はどのような決断を下すのか?
毎回、是枝監督の問いかけは重い。
もし自分がこのような状況になったら…どんな決断を下すのか?
辛い!辛いなぁ~。
しかも、こういう形での取り違えって
嫉妬や妬みは、人が不幸な時に顔を出す。幸せな時には出てこない感情です。
この設定も血のつながりか?共に過ごした時間か?という問いかけの答えを良多に確信させ
自分の心の枷(かせ)に気付かせるというところ、よく練られた脚本だなぁ~と思います。
野々宮家は、エリート街道まっしぐらの良多が描く理想の家庭。
良多が仕事に打ち込み不在がちのため、家事・育児は従順な妻みどりが一人で頑張る。
「家族」を、「不在者と残された者を描いている」といわれる是枝作品。
本作の良多も、ある意味家族という枠の中では存在するけれど不在といえる。
良多の不満は息子・慶多の優しすぎる性格。
斉木家は、ちゃらんぽらんで頼りなく見えるが愛情深く子供を可愛がる父・雄大と
口は悪いが肝っ玉母さんタイプのゆかりを軸に、笑いの絶えない楽しい家庭です。
経済状態も暮らしぶりも、子供との接し方も全く異なる二組の家族。
病院との裁判に共同して臨み、血のつながりを取るか?6年間共に過ごした子供をとるか?
で、双方が葛藤するが、主に野々宮家の葛藤が描かれる。
母親なのに気が付かなかったのか?と責められ、自らを責める母みどり。
相手を見下し何とか有利にことを進めようとする良多。
自分のやり方が絶対と信じてきた良多だが、事件をきっかけに、自分と父親・継母との確執を
振り返り、心を閉ざし何事にも事務的だった自分に気付き、無意識に封印してきた感情が迸る。
この事件がなければ、野々宮家は住んでいるマンションの如く、生活感のない希薄な家族を
演じ続けていたのかも。
本作は主に親の立場からの葛藤が描かれているけれど、子供たちの心境・不安は如何ばかりか?
大人は「子供はすぐに馴れるから」と言うけれど、そんなことはない。
琉晴は「なんで?」を繰り返し、自分の気持ちを言葉にできる子供だけれど、
慶多はじっと状況を観察し親の意向を汲み取ろうと我慢する子供。
慶多の心の傷を考えると心が痛い。最後に決め手となるのは、やっぱり子供の気持ちだよね。
結局、予想したところに落ち着くけれど、この家族の葛藤はこれからも続く。
いや、これから子供たちが大きくなるにつれ、子供たちも含め彼らの苦悩は続くよね。
女は産みの苦しみを経て母になるけれど、男はどのようして父として実感を持つのか?
「僕にしかできない仕事がある」という良多に、「父親だって、代えの利かん仕事やろ。
どんだけ一緒に過ごすかでしょ」という雄大の言葉が胸に響く。
「忙しい」という字は「りっしん編(心)に亡」つまり「心をなくす」と書くもんね。
「歩いても…」を見直すきっかけになったのは、
信田さよ子氏の「父親再生」という本を読んだからです。
カウンセリングの経験を通して「父になる」とは、「家庭を築くには何が必要か」
について、事例をあげて客観的に分析しておられ、一気に読了。
本作を見るうえでも、納得するところが多かったです。
衝撃的な重いストーリーの中に、不用意な第三者の毒と笑いを散りばめる。
台詞の一言一言に、夫々の心に渦巻く様々な思いが見え隠れしハッとさせられます。
是枝監督に脱帽です。
この2家族の10数年後、子供たちが思春期を迎えた頃の姿を、子供たちの視点で是非見てみたいです。
***** 見た 映画 *****
9月26日 「そして父になる」 @TOHOシネマズ海老名
どうせ東京だけでしょ。横浜じゃ先行はないな~。と思い、
「マン・オブ・スティール」3D字幕の上映館を探していたら、最寄りの映画館でも
横浜の映画館でも「そして父になる」の先行上映をやってるじゃないですか!
だったら、もう公開しちゃおうよ~っと悪態をつきつつ映画館に足を運びました。
先日、たまたま是枝監督の「歩いても、歩いても」を見直す機会があって、以前見た時とは違う
衝撃を受けました。
それは私の心境に変化があったからなのですが・・・、
意図して放たれたものなのか無意識なのか?何げない会話の中に隠された棘のある言葉。
相手を思いやりながらも、傷つけあったり、敢えて知らないふりを決め込んだり。
家族の中に漂う緊張感。そんな危機的緊張感をほぐすため、道化を演じる子供。
「歩いても…」ではYOU演じる娘夫婦(心理学ではトリックスターと呼ぶそうな)がそんな役回りを
演じています。
こういう脚本を書ける是枝監督は、いったいどういう家庭環境でお育ちになったのか?
どういう家庭を築いておられるのか?に、非常に興味が沸きました。
「誰も知らない」はあまりに重くて…最後まで見れませんでした。
いま、是枝監督の作品を順番に見ています。「誰も…」も、もう一度挑戦してみます。
************************
そ し て 父 に な る
LIKE FATHER, LIKE SON
************************
< ストーリー >
大手建設会社に勤務する野々宮良多は、妻と息子と供に高級マンションで暮らすエリート。
子育てを妻に任せ、仕事優先だが、躾に厳しく自分の通った私立小学校を受験させる。
ある日、息子慶多(けいた)が産院で取り違えられた他人の子供であることが発覚する。
本当の息子は電気店を営む斉木夫婦の長男琉晴(りゅうせい)。両家は面会し、交流を深める。
本当の子供と6年間自分の子供として育てた子供。病院を相手取った裁判が進む中、
交流を通して深まる苦悩。血のつながりか?共に過ごした時間か?
二つの家族はどのような決断を下すのか?
毎回、是枝監督の問いかけは重い。
もし自分がこのような状況になったら…どんな決断を下すのか?
辛い!辛いなぁ~。
しかも、こういう形での取り違えって
嫉妬や妬みは、人が不幸な時に顔を出す。幸せな時には出てこない感情です。
この設定も血のつながりか?共に過ごした時間か?という問いかけの答えを良多に確信させ
自分の心の枷(かせ)に気付かせるというところ、よく練られた脚本だなぁ~と思います。
野々宮家は、エリート街道まっしぐらの良多が描く理想の家庭。
良多が仕事に打ち込み不在がちのため、家事・育児は従順な妻みどりが一人で頑張る。
「家族」を、「不在者と残された者を描いている」といわれる是枝作品。
本作の良多も、ある意味家族という枠の中では存在するけれど不在といえる。
良多の不満は息子・慶多の優しすぎる性格。
斉木家は、ちゃらんぽらんで頼りなく見えるが愛情深く子供を可愛がる父・雄大と
口は悪いが肝っ玉母さんタイプのゆかりを軸に、笑いの絶えない楽しい家庭です。
経済状態も暮らしぶりも、子供との接し方も全く異なる二組の家族。
病院との裁判に共同して臨み、血のつながりを取るか?6年間共に過ごした子供をとるか?
で、双方が葛藤するが、主に野々宮家の葛藤が描かれる。
母親なのに気が付かなかったのか?と責められ、自らを責める母みどり。
相手を見下し何とか有利にことを進めようとする良多。
自分のやり方が絶対と信じてきた良多だが、事件をきっかけに、自分と父親・継母との確執を
振り返り、心を閉ざし何事にも事務的だった自分に気付き、無意識に封印してきた感情が迸る。
この事件がなければ、野々宮家は住んでいるマンションの如く、生活感のない希薄な家族を
演じ続けていたのかも。
本作は主に親の立場からの葛藤が描かれているけれど、子供たちの心境・不安は如何ばかりか?
大人は「子供はすぐに馴れるから」と言うけれど、そんなことはない。
琉晴は「なんで?」を繰り返し、自分の気持ちを言葉にできる子供だけれど、
慶多はじっと状況を観察し親の意向を汲み取ろうと我慢する子供。
慶多の心の傷を考えると心が痛い。最後に決め手となるのは、やっぱり子供の気持ちだよね。
結局、予想したところに落ち着くけれど、この家族の葛藤はこれからも続く。
いや、これから子供たちが大きくなるにつれ、子供たちも含め彼らの苦悩は続くよね。
女は産みの苦しみを経て母になるけれど、男はどのようして父として実感を持つのか?
「僕にしかできない仕事がある」という良多に、「父親だって、代えの利かん仕事やろ。
どんだけ一緒に過ごすかでしょ」という雄大の言葉が胸に響く。
「忙しい」という字は「りっしん編(心)に亡」つまり「心をなくす」と書くもんね。
「歩いても…」を見直すきっかけになったのは、
信田さよ子氏の「父親再生」という本を読んだからです。
カウンセリングの経験を通して「父になる」とは、「家庭を築くには何が必要か」
について、事例をあげて客観的に分析しておられ、一気に読了。
本作を見るうえでも、納得するところが多かったです。
衝撃的な重いストーリーの中に、不用意な第三者の毒と笑いを散りばめる。
台詞の一言一言に、夫々の心に渦巻く様々な思いが見え隠れしハッとさせられます。
是枝監督に脱帽です。
この2家族の10数年後、子供たちが思春期を迎えた頃の姿を、子供たちの視点で是非見てみたいです。
***** 見た 映画 *****
9月26日 「そして父になる」 @TOHOシネマズ海老名
会話の中で交わされるさり気ない台詞にドキッとさせられます。
一様収まったようにみえる両家。本当の戦い・子供たちの苦悩はこれからなのでしょうね。
罪なことをしたもんです。事故でなく事件だったということで、ますますやるせなくなります。
是枝監督の作品はあまり説明がなく、見る側に判断させますね。