のろや

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シーレ忌

2009-10-31 | 忌日
本日はエゴン・シーレの忌日でございます。

夏から猛威を振るっていたスペイン風邪に、妊娠中の妻ともどもやられたのでございます。享年28歳。
大成功を収めたその年の展覧会でオーストリア芸術界の新星として注目を集め、念願だった広いアトリエを借りた矢先のことでございました。

28歳という若さで命を失わざるを得なかったシーレの運命は、深い悲しみには違いないが、彼の人生、そして生涯残した作品は、比類ないほど本質的な完成を遂げている。

年老いた画家たちは若かりし日々を思い焦がれながら振り返るが、シーレは現在進行形で若き日々を体験し、またそれを卓抜した技量で表現することのできた数少ない芸術家のひとりだった。

『エゴン・シーレ ドローイング水彩画作品集』 ジェーン・カリアー著 2003 新潮社 p.447

シーレがもっと生きていたら、どんな作品を描いていただろう。
卓越した技量に「青年らしい」繊細さと荒々しさを兼ね備えたこの画家が壮年となり、あるいは老年にまでなったとしたら、どんな線を引き、どんな色を使ったのだろう。
こう考えてみることもないではございません。しかし白樺に杉やケヤキのような「数百年の老木」が存在しないように、シーレと老齢というものはどうあっても両立しないもののように思われるのでございます。

どういうわけか、シーレのように青年らしさを拭いきれない特色とする芸術家が、成人期に差し掛かる直前にその生涯を終えることが多い。だが、もしかするとそれが相応しいのかもしれない。
前掲書 同頁


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