のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

ウガンダの反同性愛法・続報

2010-02-27 | Weblog
ハプスブルク展レポートの途中ではございますが、Avaazからのメールを紹介させていただきたく。

以下、メール本文(和訳文責:のろ)

Dear friends,
たった二週間の間に、全世界の約50万人におよぶ人々から署名が届きました。同性愛者やその友人を投獄また死刑にするというウガンダの法案に反対する署名です。

今回集まった署名は、この恐ろしい法律に対抗する大きな力となるでしょう。しかし、さらなる行動が必要です。(同性愛を認めない)過激派は、誇張表現をさらにエスカレートさせています。ある聖職者は騒ぎをかき立てるために、同性愛者のポルノ画像まで持ち出しました。それでも、この過酷な法案の内容について、詳しく知っている人はほとんどいないというのが現状です。その上、このような大量処刑を支持するかどうかについて、ウガンダ国民への世論調査は全く行われていないのです。

法案に反対するウガンダ国内の動きは、全世界的な結束によって力を得てはいるものの、この法案の苛烈な内容について、自国の人々に周知するための資金がありません。

もし充分な募金が集まれば、ラジオでのスポット放送、新聞広告、広告板などによるキャンペーンを展開し、多くのウガンダ国民に真実を、そして人権を守るための力強い要求の声を、伝えることができます。ウガンダの人権を守るため、皆様のご支援をお願いします。

Support Ugandan Voices

(のろ注:↑リンク先から寄付できます。寄付のしかたは当記事の*****以下をご覧下さい)

世界とウガンダ国内にホモフォビアが広がる一方で、基本的人権への意識も広がりつつあります。そしてこの法案は根本的に、人権に対する攻撃です。

国籍、宗教、性的志向にかかわらず、すべての生命は等しく価値あるものだという基本的な信念は、この法案と根本的に対立するものです。だからこそ、かくも多くの人々が、法案に反対する署名を行ったのです。集まった署名はウガンダ政府と各支援国の政府に送られました。来週にはウガンダの国会でも、署名の対象となった請願書が公開される予定です。だからこそ、ウガンダの教会指導者たちや数々のゲイグループ、そして人権活動家たちは、公正のため手を取り合って立ち上がったのです。

今回の活動の最前線にいるウガンダ市民たちは、すでに彼らにできるかぎりのことを行っています。私たち一人一人が、ほんの少しの援助を惜しまなければ、事態を大きく好転させることもできるでしょう。

With hope,
Ben, Alice, David, Paula, Benjamin, Ricken, and the whole Avaaz team

同性愛者に対する恐怖、嫌悪、憎悪、偏見など、非合理的な感情志向。

*****
寄付の方法

1 Enter your Details
First Nameに名前、Last Nameに姓、Emailにメールアドレスを入力。
CountryでJapanを選んでProvince/Stateに都道府県、Cityに市区町村、Postcodeに郵便番号を入力。

2 Choose currency and amount
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Type でカードを選んで、Card Numberにカード番号を入力。Verification Number にカード裏側の名前欄に印字されている番号の下3桁を入力。Expiration Dateで有効期限を選んで、その下にあるピンクのDONATEボタンを一回クリックしますと「◯◯円募金するけどいいんですね?」という確認のウインドウが出て来ます(多分)。いいよという方はOK、やっぱやめようという方はキャンセルを。

送信後、ご寄付ありがとうございますページに移動します。入力したメールアドレスにはご寄付ありがとうございますメールが届きます。

THE ハプスブルク展 1

2010-02-26 | 展覧会
京都国立博物館で開催中のTHE ハプスブルクへ行ってまいりました。

のっけからラファエロやティツィアーノといった大御所がぽんぽん登場いたします。逸品も多く、充実度の高い展覧会でございました。

常のごとく第一室は押し合いへし合いでございますが、第三室あたりまで来ると意外にゆったりと鑑賞することができました。(ただし平日)。
モデルの性格的特徴をしっかり捉えつつも、威厳をたたえた見目よい姿に描いてのけるティツィアーノの肖像画イザベラ・デステや、いかにも悲劇的な場面でありながら奇妙な静けさの漂うクレオパトラの自害を眺めつつ、ぶらりぶらぶら進んでまいります。

そうしてやや散漫な気分でいた所へズバッと舞い降りたのが


バッティステッロ「オリーブ山のキリスト」

自らの運命を予期したイエスがローマ兵に捕えられる前夜、オリーブ山にて、できることならこの苦しみを取り除いてください、と父なる神に祈りを捧げる場面。いかに人類の罪をあがなうためとは言っても、手足を釘で打ち付けられたり吊るされたりするのはやっぱり嫌だったようでございます。そらそうよねえ。

しかしまあどうです、この劇的な陰影、迫真の描写力。
バロック万歳ののろはこういうものが大好きでございます、ええ。
この主題を扱った作品には、オリーブの林や岩がちの山肌、迫り来るローマ兵や、師匠の苦しみをよそに眠りこける弟子達の姿などが一緒に描かれているものでございます。が、バッティステッロはそうした説明的な付帯物をいっさい廃して、ひたすらイエスと天使にのみフォーカスしております。

暗闇の中、眉間に皺を寄せたイエスの青白い顔と、束縛を待つかのように力なく重ねられた手が、画面左上、即ち天使の来た方向からの強い光に照らし出されております。横ざまに頭を垂れ、視線を上に向けてじっと天の声に聞き入るイエスの姿は、その内面の苦悶を見る者に強く印象づけます。
その「声」たる天使は今しも空から舞い降りた所でございましょう、暗い空間の中に鮮やかな衣をなびかせ、片足を踏み出し、イエスを庇護するように頭上に翼を広げて語りかけます。

天使の表現もちと独特でございます。この場面ではお祈り中のイエスが天使と差し向かいでしっかり見つめ合っている、あるいはがっくりうなだれて天使に抱きかかえられている絵が多いようでございますけれども、そういう作品においては、イエスはいかにも神の子、ワタクシども凡人とは違う、立派で純粋でたいそうなお方、という感じがいたします。
それに対しこの作品のイエスと天使は、視線の上でも身体の上でも、直接触れ合ってはおりません。しかしそれによって、あくまでも霊的な存在としての天使を表現し、かつ、イエスを鑑賞者にとって身近に感じさせる効果を上げております。ここに描かれているイエスは、天使と触れ合ったり視線を交わしたりする幻視者ではなく、後光をいただく超越的な存在でもなく、避けられない運命を思ってひとり身悶えする弱々しい「人の子」だからでございます。

それにしても、逆光をしょったこの天使、恐るべき美青年ではございませんか。難しい角度から光が当たっている顔の陰影や、動きのあるつややかな布地の描写がまた素晴らしい。この作品はカラヴァッジオ作と考えられていた時期があったそうですが、カラヴァッジオの青少年像って、もっとこう、肉感的と申しますか、卑俗な色気を漂わせておりましょう。こういう凛とした雰囲気ではなくて。
イエスのほっそりした手の描写もよろしうございます。下世話ついでに申せば、イエス像はそれなりに細身であってほしいと思うのでございますよ。この人ちっとやそっとのことでは死なんだろうと言いたくなるがっちり体型のイエスを描く方も少なからずおりますけれども、十字架降下の時とか、抱えてる周りの皆さんが大変そうで。


次回に続きます。

ウガンダの反同性愛法

2010-02-13 | Weblog
だけどもう疲れてしまった。疲れる資格もなかろうに。

それはさておき

Avaazより、2/10に届いたメールでございます。

Dear friends,
ウガンダの議会は、同性愛者を収監し、死刑さえ適用するというとんでもない新法を採択しようとしています。

当初、ウガンダ大統領は国際的な非難を受けて、法案の見直しを呼びかけました。しかし過激派の豊富な資金と敵意に満ちたロビー活動により、今やこの法案は議会を通過しようとしています。そうなれば、多くの人々が迫害と流血の危機にさらされることでしょう。

アングリカン・チャーチ(英国国教会)をはじめ、法案に反対を唱える声は高まりつつあります。ウガンダのゲイ人権運動の活動家、フランク・ムギシャはこう述べています。「この法案が成立すれば、私たちに深刻な危険をもたらすでしょう。どうか私たちを支持する請願書に署名していただけないでしょうか。世界的な、かつ大規模な反発があれば、我が国の政府は、この法案によって国際的に孤立することを知り、法案を取り下げるでしょう」

法案の採択は数日後に迫っています。フランクをはじめ、ウガンダの同性愛者たちの生活と生命を救えるのは、ウガンダ政府が無視できないほどの世界的なプレッシャーです。下のリンク先から、このアクションにご参加ください。そして、お友達にも知らせてください。

Uganda: Rights Not Repression

(のろ注:署名のしかた、請願のメッセージなどは当記事の*****以下をご覧下さい)

この請願はウガンダのムセベニ大統領、諮問委員会、世界各地のウガンダ大使館、そしてウガンダ支援国政府へと届けられます。

問題となっている法案には、同性愛行為をした人物への終身刑、及び「違反常習者」への死刑適用が含まれています。HIV感染の拡大防止のため活動するNGOさえ、「同性愛の促進」という咎で最大7年の収監を言い渡される恐れがあります。同性愛行為を24時間以内に通報しなかったということでさえ、禁錮3年の罪にあたるというのです。

法案の支持者たちは、国の文化を守るための措置だと主張しています。しかし最大の批判はウガンダ国内から上がっているのです。ギデオン・ビャムギシャ参事司祭もその一人です。

「この法案は、不寛容と不正と憎しみをしりぞけよ、という我々の文化・伝統・宗教上の教えに反するものです。我々が欲するのは、人々を守る法律です。人々を辱め、迫害し、殺す法律ではありません」

この危険な法案を拒否し、反対派を支持することにより、重要な前例を作ることができます。ウガンダの人権擁護派を支持し、法案成立を阻止して人々の生活・生命を守るため、どうか署名にご参加ください。

希望と決意と共に
Alice, Ricken, Ben, Paul, Benjamin, Pascal, Raluca, Graziela and the whole Avaaz team


*****
送られるメッセージ
ムセベニ大統領、諮問委員会、及びウガンダ支援国政府の皆様へ
我々は反同性愛法の法案撤回、ならびにウガンダ憲法にうたわれている普遍的人権の擁護を求める全ウガンダ市民の要請を支持します。ウガンダの指導者及びウガンダ支援国政府の皆様が、迫害を拒否し、公正と寛容という価値をを支持されるよう求めます。

(以上)

リンク先画面右側に出ておりますピンク色のバーと数字が、現在署名に参加している人数です。のろがこの記事を書いている時点で、24万4094人が参加しています。
とは申しましても、こうしている間にもどんどん数字が増えております。

署名のしかた
水色のバーで出ております Sign the Petition 欄

以前にも署名したことがあるという方は一番上のAlready Avaaz member?の空欄にメールアドレスを入れてピンクのSEND:送信ボタンをクリックしてください。
初めての方はその下に、
Name:お名前
Email:メールアドレス
Cell/Mobile : 電話番号(必須ではありません)
Country:国籍(選択)
Postcode:郵便番号
を入力の上,右側のYour personal massage欄にあるピンク色の Send:送信ボタン をクリックすると参加できます。

入力したアドレスにはご署名ありがとうメールが届きます。
その後も署名を呼びかけるメールが随時届きます。
それはちょっと...という方は、送られて来たメール本文の一番下にある go here to unsubscribe.(青字)という所をクリックして、移動先の空欄にメールアドレスを入力→SENDをクリックすれば登録は抹消されます。

『Dr.パルナサスの鏡』

2010-02-04 | 映画
フィリップ・シーモア・ホフマンが鍋奉行をしてくれました。夢で。
意外とノリのいい人でしたよ。

それはさておき

ギリアム待望の新作『Dr.パルナサスの鏡』を観てまいりました。
『Dr.パルナサスの鏡』公式サイト

日本版予告編


イギリス版予告編



ううむ!
いささかスケールの小さめだった前作『ローズ・イン・タイドランド』(当のろやでの記事はこちら)や良作ながら随分おとなしかった『ブラザーズ・グリム』と比べますと、毒や皮肉や横溢する妄想といった要素がふんだんに盛り込まれており、その点ではギリアム往年の傑作を思い起こさせる作品でございました。
それだけに、もったいない。

トム・ウェイツは良かった!
男衆4人も良かった!
ストーリーも(意外なほど)よく練られてた!
ちょっとドスのきいた声のヴァレンティナも良かった!
映像は言うまでもなく素晴らしかった!単に美的というだけでなく、毒とわざとらしさ満載の悪夢的な仕立てがたまりませんです。
中盤以降、特にジュード・ロウがあのテカテカの笑顔で、嘘くさいメルヘン風景の中を巨大竹馬でのし歩き→警官ダンス→ママの首がポンッと取れて中からトム・ウェイツ登場!のあたりはほんと最高だった!立ち上がってギャハハと笑って拍手しながらブラボーと叫びたいほど素晴らしかった!
ほろ苦くもニヤリとさせるラストも良かった!
エンドロール後のおまけもしみじみ来た!

ああ、ならばいったい何が不満なのだ。

***以下、若干ネタバレでございます。***



飽くまでも私感ではございますが

俳優は皆それぞれにいい演技を見せてくれたものの、トム悪魔ウェイツ以外の主要キャラクターがいささか魅力に乏しく、どの登場人物にも、ストーリーを牽引するだけの力がない。
特にギリアム作品特有の、想像力で武装して困難な現実を乗り切る、という役どころの人物が不在である上、その位置づけに近いはずのパルナサスとアントンのキャラクターが、ちと弱すぎる。
それゆえに、パルナサスとアントンのダメさが目立つ現実(=鏡の外)のシーンが多く、イメージが氾濫するファンタジー(=鏡の中)のシーンが細切れにしか登場しない前半は甚だテンポの悪いものに感じられました。そしてせっかくギリアム節が炸裂している後半も、誰の視点に寄り添うべきか分からないままにクライマックスを迎え、そのまま終息してしまったのでございます。

物語なんかなくたってこの世は安泰だよ、と言う悪魔に向かって「世界のどこかで、物語は語られ続ける。それが宇宙を支えている」と語ったパルナサスは確かに、ギリアム的人物の片鱗を見せました。しかしここで自称「物語なんかいらない派」の悪魔と「物語る者」パルナサスの1000年におよぶ対決が始まって今に至るのかと思いきや、パルナサスは早々に凋落してしまい、精神的にもすっかり打ちひしがれて死を望む始末。つまり「物語ること」を辞めたくて仕方がない人物になってしまうのでございます。
何も、かのミュンヒハウゼンの向こうを張るぐらい颯爽としてくれ、とは申しません。しかし、曲がりなりにも主人公の位置にある人物なのでございますから、せめてもう少しシャキッとしていただかないと、肩入れしたくってもできないのでございますよ。

それからパルナサスの弟子的な位置づけのアントン。彼に好感を抱けるか否かで、この作品の印象がだいぶ違って来ることと存じます。
彼を不器用だけども一途で一生懸命な奴、として見ることのできるかたは幸いなるかな。残念ながらワタクシには、彼が関西弁で言う所の「いらんことしい」な、甚だ鬱陶しい男に思えてなりませんでした。それがために終盤に見せる彼の必死の活躍も、ちっとも応援する気にはなれませなんだ。
『未来世紀ブラジル』のサムや『ブラザーズ・グリム』のジェイコブ(おお、ヒース・レジャー)は、妄想がちの不器用男でありながら-----あるいは、だからこそ-----、手に汗握って応援したくなるような、崖っぷち人間の魅力がございました。一方アントン君には変に器用さや馴れ馴れしい所があり、決して「ファンタジー/物語」がないと生きていけない人物ではない。

そしてインテリア雑誌に載っている作られた「幸せ家族」像にあこがれるヴァレンチナも、その「幸せ家族」ファンタジーを、生きる糧にするほど切望しているというわけではない。
つまりこの作品の中で、居場所としてのファンタジーを本当に必要としているのは、パルナサスの敵対者であるはずのトム悪魔ウェイツだけなのでございます。

多くのギリアム作品において「ファンタジー/物語」の有効性は、当の「物語る」人物にとって、文字通りの死活問題だったはずでございます。
本作でも生死をめぐる諸々の選択や決断がございますが、それが全てファンタジーの内部においてなされるため、ファンタジーと現実との相克・対決はほとんど描かれません。
現実に押しひしがれて死ぬか、ファンタジーを武器に生き延びるか。
その瀬戸際を行くはみ出し者たちの、あの狂おしい切迫感と高揚は、どこへ行ってしまったのか。

ファンタジーを奉じる者の不在。
ギリアムが創作の視点を変えたのさ、と言われればそれまででございますが、この作品を見た時にワタクシが抱いたモッタイナイ感をつきつめると、どうやらここにたどりつくのでございます。

どうも期待が高すぎたせいか、色々と愚痴を並べてしまいました。
しかし誓って申しますが、決して凡作の範疇に入る作品ではないのでございます。死と破壊と笑いが融合したギリアム的ユーモアや、独特のまがいもの感溢れる美術、そして俳優達の演技は皆本当に素晴らしかった。主要キャラクターにいま少し魅力があれば、もう一度劇場に足を運びたい作品でございました。

ギリアムの次回作は(今度こそ)ドン・キホーテがテーマのあれになるとの噂が聞こえてきております。問題は(常のごとく)資金が集まるかどうかという点らしいので、パルナサスがヒットしておおいに儲かるってくれるといいなあと願っております。

クストリッツァとギリアムには何があってもついて行くと心に決めているのろとしては、彼らが次の作品を撮れるかということが何より気がかりなのでございます。
まあ、クストリッツァはたぶん大丈夫だろうけど。
.....。