のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

ゆく年のこと

2012-12-31 | 映画
まあそんなわけで
クリストファー・ノーランのバットマン三部作が美しく完結した2012年も暮れていったわけです。



この一年、これ以外に何か美しいことってあったっけ。

という記事を何故2013年1月1日の夜にupしているかといいますと、イラストが間に合わなかったためです。
頑張ったのですよ。すごく頑張ったけど間に合わなかったのですよ。
新年早々これですよまったく。

いーのいーの人類なし崩しよ。(by山口晃)

ちょっと大声で言ってみよう。
いーのいーの人類なし崩しよ!

ああ、なんかこれでいいような気がして来ましたよ。

というわけで
年ふるごとに高まる希死念慮と人間嫌いをずりずり引きずりつつ
今年は「なし崩し人生」をモットーに生きてみようかと思いました次第。

ところでイラストや漫画の類いをお描きんなるかたは大なり小なりご経験のことと思いますが、人の顔を描いている時は、自分も自然とそれと同じ表情になってしまうものでございます。
ジョーカーさん描いてる時ののろさんの顔ったら。


シリアのこと

2012-12-26 | Weblog
シンプルで、とっつきやすく、しかも伝えるべきことをきちんと伝える手段として、アニメーションというのは実に強力なツールでございます。

国連UNHCR協会「てとてプロジェクト」難民の子・サト


うっかり泣いてしまったではありませんか。

そんなわけで
日本の未来もたいがい暗いような気はしておりますが、レバノンやヨルダン、トルコ、エジプト、イラクなどの国境沿いには、50万人以上のシリア難民が未来どころか今まさに、生活の破壊に直面しております。
50万人という数字は内戦状態のシリアから周辺国へと逃れた人たち、その中でも難民として登録できた人数のみをカウントしたものであって、未登録の人たちも含めると80万人以上に上ると予想されております。さらにシリア国内の避難民は400万人に達すると見られております。
そこへ容赦なく冬がやって来ているわけです。

ヨルダンの難民キャンプの様子がこちらこちらで紹介されております。写真多数。
中東というと暖かいイメージですが、乾燥帯なので昼夜の温度差が激しく、シリアでは氷点下まで気温が下がったり、雪が積もることもあるということです。実際↑リンク先の写真を見ると、日差しが強くて暖かそうな日中とはうって代わり、夜は本当に寒そうです。

シリア難民の緊急支援に必要な予算は2億4500万米ドル(約196億円)ですが、目下の所、その60%しか集まっていないということです。
そんな数字を聞きますと、ワタクシごときがミソサザイの涙一滴ほどの募金をした所で何になろう...と、ついうらぶれた気分になってしまいますけれども、どんなに小額でもゼロよりはいいのであって、3000円で毛布7枚、10000円あればビニールシート、水汲み容器、石けん、調理器具などの緊急避難生活セット10家族分をまかなえるのだそうです。

募金・寄付のお願い | 国連UNHCR協会

UNHCR

『エル・グレコ展』

2012-12-23 | 展覧会
これ何やらすごくおっかない話なのですが。

不正選挙の疑惑は深まる【選挙システム会社ムサシと (社)原子燃料政策研究会との関係】 今日の驚き/ウェブリブログ


それはさておき
やっとこさ行ってまいりました。

「エル・グレコ展」

国内史上最大のエル・グレコ展と銘打つだけあって、代表的な作品から珍しいもの、肖像画に宗教画に陰影の習作めいた作品、受胎告知のヴァリエーション、比較的細やかなタッチで描かれた小さめの作品から巨大でダイナミックな祭壇画などなど各種取り揃えで、たいへん見応えがございました。

珍しいものと申しますのは、例えば20代前半の、まだ生まれ故郷のクレタ島にいた頃、つまりまだ「エル・グレコ=ギリシャ人」と呼ばれていなかった頃に描かれたと見られるイコン、聖母を描く聖ルカなんてのがございました。
いやはやビザンチンでございます。聖母の顔や陰影の付け方はいかにも様式的でございまして、ちっともエル・グレコらしさはございません。この同じ画家がせいぜい5年後に燃え木で蝋燭を灯す少年を描くとは信じられないようではございませんか。いやいやまさかたった5年でここまで変貌はするまい、きっとクレタ時代は注文に従って、いかにもイコンらしい型通りのイコンを描かざるをえなかっただけであって、影ではもっとこう、ぎらりとした作品を描いていたんじゃないかしら、などと思ったわけです。しかし後に展示されているイタリアでの修行時代の作品群を見ますと、やっぱりちょっとたどたどしい感じがいたしますので、やっぱりクレタにいた頃のドメニコスさん(本名)は没個性ないちイコン画家にすぎず、イタリアでの研鑽を経なければ巨匠エル・グレコの登場もなかったのかもしれない、と思い直しました。

まあ巨匠と申しましても、そもそもエル・グレコは決して技術的にものすごく「上手い」画家というわけでもございませんけれど。いかに時代はぐにゃぐにゃ上等のマニエリスムとはいえ、時々「それ、いいんすか...」と小声でつっこみたくなるほどに顕著な歪みが見られます。画面の中でバランスをとるために平気で腕を引き伸ばしたり手を寸詰まりで描いたりなさいますし、『修道士オルテンシオ・フェリス・パラビシーノの肖像』の椅子の歪みようなど一目瞭然すぎて、あえて手直ししなかったのが不思議なほどでございます。この修道士さんはわざわざ斜めに傾いだ床の上に左右非対称に末広がりな椅子を置いて座るのが常だった、というなら別ですが。



そうはいっても、その歪んだ椅子のデッサンや人物の顔色の悪さにも関わらず、ひどく生き生きとして魅力的な肖像画であることは否めません。見ていると何だか、細かいことはいーのいーのと押し切られたような気分になります。いや、いーのですよ。いーのですけれども、死後長らく貴方の存在が忘れられ、20世紀にそのアヴァンギャルドな表現が再評価されるまで歴史に埋没していたことの要因というのも、このへんにあるような気もするのですよドメニコスさん。

さて、「肖像画としての聖人像」と題された第二セクションで、暗い背景に内省的な面差しの人物像といういかにもグレコグレコした作品が続いたのちにハッと胸を突かれたのがこの作品でございます。


『フェリペ2世の栄光』

フェリペ2世といいますと、ワタクシの認識では「イベリア半島からユダヤ人やイスラム教徒を追い出してフランスのユグノー戦争に介入してネーデルラントを苛めぬいたあげくイングランドのエリザベスに喧嘩売って負けた人」なわけですが、スペインの黄金時代に君臨した押しも押されぬ絶対君主ではあり、この絵においては主役でございます。下の方でひとり目立つ黒服に身を包み、ひざまずいて天国入りの順番を待っているような恰好の人がフェリペさん。
この作品の何に驚いたかと申しますと、いとも明るく軽やかな色彩でございます。こんなに透明感のある色彩を使う方とは存じませんでした。とりわけ画面上半分の、天上界を描いた部分のきらきらしさといったら。下にはグロテスクな地獄の入り口が、けっこうな割合の大きさで描かれているにも関わらず、「地獄の口」自身の尖った鼻先や、上へ上へと向かう人々の視線、そしてダイナミックな明暗の雲に誘導されて、鑑賞者の視線も自然と天上の世界へと引き寄せられて行きます。その中央に輝いているのが、父なる神でも聖母でもイエッさんの姿でもなく、アルファベットのIHS(=救世主イエス)と十字架を組み合わせたイエズス会のロゴマークというのは、若干の笑いどころではございますが。
笑いどころといえば、神妙な表情フェリペさんですが、ひざまずきながらも下にきっちり2枚もクッションを敷いているというのも面白い。審判前という切羽詰まった場面を描くにしても、「太陽の沈まぬ国」一番の偉いさんを露地に座らせるわけにはいかなかったのでございましょう。

さて本展最大の目玉はもちろん無原罪の御宿りなわけでございますが、これは何だかもうもの凄すぎて、もの凄いという以外の形容が浮かびませんのでそれ以上突っ込まないことにして、最後に本展で一番のお気に入り作品、『キリストの復活』をご紹介いたしたく。
ばばーん。



悔い改めし者、C'mon!

どうです!
ロックスターのごとく颯爽と墓穴から登場するイエッさん!
それをモッシュしようと待ち構えるファンたち!...ではなく、奇跡におののいて天を仰ぎ地に転げる、見張りの兵士たち!
例によって青白く歪みがちに引き延ばされた身体で、問答無用の神の子オーラを漂わせるイエッさんもさることながら、下の兵士たちののたうちようの凄さといったら。荒木飛呂彦もびっくりでございます。劇的にねじれた肉体、ぎらぎらと激しい陰影とハイライト、そして衣装の波打ちまでも総動員して醸し出される混沌のただ中に、導きの糸のごとくピーンとまっすぐ旗の柄が突き経っており、それを上にたどって行くと後光まぶしいイエッさんのご尊顔がキラーン!
思わずハハーと拝みたくなってしまいますな。

そんなわけで
ぐにゃぐにゃドドーンぎらりんのビカビカのうねうねのグレゴグレコでお腹いっぱいになった展覧会でございました。胃もたれ気味でよろよろと2階のコレクション展会場へと上がって行きますと、「もの派」の寡黙な作品が並んでおりまして、これがカレーライスの後のブラックコーヒーのごとく食べ合わせがよろしく、美術館の心遣いにほっと感謝した次第でございます。

のろうい

2012-12-17 | Weblog
夜中に突然の発熱と嘔吐に見舞われたわけです。
横になってはみたものの、変な汗をずっぷりとかき、起きちゃ吐き起きちゃ吐き、いっそトイレに寝た方がよかろうと思われる塩梅。おまけに水を飲んでももどしてしまうので、水分がすっかり抜けて切り干し大根のごとく伸びておりました。
精神はめっぽう虚弱ながら身体は丈夫なたちで、普段やれ疲れたのくたびれたのと申しておりましても、本格的に具合が悪くなることは滅多にございません。こんな強烈な症状はなおのこと経験がなく、これが噂のノロウイルスかしらん、のろさんがノロウイルスなんて笑い話だわあっはっは、などと思いながらもわりと死にそうでございました。

枕元のラジオで選挙結果の報道を聞きながら、このタイミングで死んじまえたらそれが一番かもしれない、少なくともこれ以上の惨状には立ち会わなくて済むだろうて、そうは言ってもこんな散らかり放題な部屋で発見されるのはちょっと嫌だなあ云々と器の小さいことを考えつつ、一晩寝たらそれなりに回復してしまいました。
そういうわけで明日からも生きてゆかねばなりません。
良かったのやら悪かったのやら。

『Welcome To The Punch』のことなど

2012-12-13 | 映画
なんかもう
時代錯誤という形容すら超越しちゃった感がございますな。

自民党が公式に国民の基本的人権を否定し、さらに改憲案で日本国憲法第18条「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない」を削除してしまいました - Togetter



さておき。
ソーターさんことマーク・ストロングと、ハリウッド御用達英国産悪役俳優の一人であるチャールズ・ダンスが声優として共演するという、のろさんにとってはたいへんおいしい企画であるところのアニメーション作品『JUSTIN AND THE KNIGHTS OF VALOUR』のトレーラーが公開されたわけです。

JUSTIN AND THE KNIGHTS OF VALOUR - Official Teaser Trailer


うーむ。
悪くはないんでございますが
『ヒックとドラゴン』の大幅劣化版のように見えてしまうのはワタクシだけでしょうか。
大幅、とまで申しますのは、とりもなおさず『ヒックとドラゴン』という(日本ではそれほどヒットしなかった)作品が、ストーリー、映像、音楽、演出、そしてテーマ性と、あらゆる点において完成度が非常に高い映画であるからでございます。
このトレーラーも『ヒックとドラゴン』を念頭に置かずに、これ単独で見るならば、冒険コメディとしてなかなか楽しそうな代物ではございます。しかし、ヒーロー志望のひ弱な主人公やら、愛はあっても理解のない父親やら、気が強くてしっかり者のヒロインやら、サポート&コメディ担当の変人やら、機能不全気味のドラゴンやら、こう並べてみますとあまりにも『ヒック~』と重なる要素が多く、あの傑作との比較は免れ得ないのではないかと懸念いたします。
できれば続編を作ってほしくなかった『ヒック~』の続編も、同じく2013年公開予定であることを考えますと、ううむ、どっちも心配でございます。
ちなみに↓によるとソーターさんはここでもやっぱり悪役。笑

Justin and the Knights of Valour (3D) | Timeless Films

それからワタクシが目下の所、ソーターさん関連の新作の中では一番楽しみにしているクライムドラマ『Welcome To The Punch』も、つい先頃トレーラーが公開されました。

Welcome To The Punch Official Trailer _ James McAvoy - Mark Strong


ソーターさん、年齢とともに眉間の皺がますます深まっていらっして、実に素敵でございますね。
共演はジェームズ・ザ・童顔・マカヴォイ。Wikipediaによると、スコットランドに拠点を置くサッカーチーム、セルティックの大ファンなんだそうで。ロンドンに拠点を置くアーセナルの大ファンで、俳優業のかたわら趣味でサッカーを続けて来たソーターさんとは、サッカー談義でさぞ盛り上がったことでございましょう。
そのソーターさんの今回の役どころは、悪人ではあるものの、トラブルに巻き込まれた息子のために、マカヴォイ演じる刑事と協力して巨悪に立ち向かうという、いわば準主役的な位置づけでございまして、単純な悪役というわけではないようで
ございます。そうそう、こういう「ワルだけど人間的」な役柄にこそソーターさんですよ!

『The Long Firm』の極悪非道かつナイーヴな悪党ハリー・スタークス、『リボルバー』の情緒不安定かつ心優しい殺し屋ソーター、悪人だらけの『ロックンローラ』の良心にして犯罪組織の有能なNo.2であるアーチーおじさん、『ワールド・オブ・ライズ』の善とも悪とも呼びがたいヨルダン諜報局長ハ二・サラーム、そして人情無用のスパイ稼業に従事しつつも、人間味を捨てきれず、またそれを隠しきれない『裏切りのサーカス』のジム・プリドーなどなど、複雑で繊細で多面的な役柄こそ、マーク・ストロングの俳優としての力量が存分に発揮される所でございましょう。
極悪街道を脇目も振らず突き進む『スターダスト』のセプティマス王子や『Kick Ass』のダミーコ親分、そしてオモシロ系悪人な『オリバー・ツイスト』のトビーなどもワタクシは大好きですけれどね。

英国ではこれまた来年に公開予定の『Welcome To The Punch』、監督・脚本は御歳36歳のイーラン・クリーヴィーというかた。前作『Sifty』はなかなか好評であったようですが、これが初監督作品ではあり、監督としての技量はまだ未知数と申せましょう。トレーラーを見る限りでは、冷たい色合いのスタイリッシュな映像にはそれなりに期待できそうでございます。アクションシーンにおけるスローモーションの多様は、ちと引っかかる所ではございますがね。


マララさんのこと

2012-12-07 | Weblog
すみませんね。
ほんとにくたびれておりまして。
いやはやです。

さておき。
マララ・ユスフザイさんのことは皆様ご存知と思います。パキスタンで女性の教育の権利を訴えたために、イスラム武装勢力に銃撃された14歳の少女でございます。
スクールバスの中で頭部に2発の銃弾を受けた彼女は、現在英国の病院で治療中で、当面は英国内に留まるとのこと。しかし武装勢力TTP(パキスタン・タリバーン運動)は今もマララさんや彼女の家族の殺害を公言している他、女性の権利を訴えるパキスタン国内の活動家やその家族、そして今回のような事件を報道するジャーナリストまでも脅迫しております。

パキスタン政府に対し、人権活動家たちの身の安全を保証し、今回の事件の加害者たちを法に則って裁くよう要請する署名をアムネスティが取りまとめております。

パキスタン:命を狙われる少女、マララを守ろう : アムネスティ日本 AMNESTY

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