のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

山田晃士「鍵穴から覗き見」

2017-08-27 | 音楽
金曜日のことでございますが
山田晃士独り舞台巡業「鍵穴から覗き見」in京都へ行ってまいりました。
何せライブバーなんて行ったことがないのでドキドキものでございましたが、仕事は早番、翌明日は休み、しかも大阪ではなく京都に来てくれるという絶好の機会を逃すわけにはまいりません。

山田晃士 - ヤマダコウシ - オフィシャルサイト*孤独中毒*

湿度高めの選曲、心に突き刺さり身体に沁みわたる唄声、そしてナイトプールのきれいなおねえさんからカズーホルダー問題を経てなぜかマリオブラザーズ3へと至る小ネタ満載トーク。濃ゆい夜でございました。

会場のパーカーハウスロールは入ってみるとこぢんまりとしたお店でございまして、…






とまあこんな具合で、いつもスピーカーの向こうにいた人の声がいきなり頭の後ろから聞こえてきたワタクシのキンチョーのほどをご想像くださいませ。

氏の楽曲と美声と演奏を聞くにつけ、ああ何と豊かな才能であろう、こんなアーティストと同じ時代に生きていられるなんて何て幸運なのだろうとしみじみ思うわけでありまして、常日ごろ早くくたばることばかり考えているような輩をここまで引き上げてくださるんですから、本当に本当にたいしたものなのです。

そもそもあまり音楽に詳しくないのろさんが山田晃士氏のことを認識した、つまり顔と名前と楽曲が一致したのは、2002年の年末に偶然耳にしたNHK-FMの特集番組『Bellows Lovers Night』(アコーディオンやバンドネオンなど蛇腹=bellows楽器の奏者が集うライブイベント)で、氏とアコーディオン奏者の佐藤芳明氏のふたりぼっちユニット、「ガレージシャンソンショー」がナビゲーターを務めていらっしたことに発します。ガレシャンが2006年に活動休止宣言をお出しんなった時には、建前上は休止といっても、もう復活は望み薄かなあと残念に思っておりましたが、昨2016年10月13日に13曲から成るデヴュー13年記念アルバムその名も『13~treize~』をめでたく世に送り出され、のろを狂喜乱舞せしめたのでございました。

↓アルバムの冒頭と最後を飾る13拍子の曲『13』
ガレージシャンソンショー 『13~treize~』 PV


このアルバムを買って以来、駐輪場やコインロッカーで13番が空いていると、ヤレ特等席だとばかり喜び勇んで利用する有様でございます。
そのガレシャンも10月に大阪に来てくださるのです。去年の大阪公演へは行かれませんでしたが、今回はどうにかこうにか都合をつけて、是非とも足を運ばねばと心を固め、今からそわそわしております。



タキシード姐さん

2014-10-29 | 音楽
2ヶ月ほど前から休日も空き時間も全て潰してかかり切りになっていた作業(多分タダ働き)が、ようやっと終了しました。
『ショーシャンクの空に』終幕のティム・ロビンスの気分でございます。

さておき。
PCで延々と作業をしながらYoutubeで「セサミストリート」の懐かしい楽曲などを聴いていたのでございます。
そしたらまあ、最近のセサミにジャネル・モネー姐さんが出てらっしゃるじゃございませんか。

Sesame Street: Janelle Monae- Power of Yet


うひょーカッコイイ。
ワタクシ彼女のCDを1枚だけ持っているんでございますが、購入してからまだそれほど経っていない時、数日間窓辺に置いていたら、結露がしみてライナーノーツがベコベコになってしまったのでございます。おまけに開こうとしたら湿気でくっついた印刷面同士がビリビリにはがれてしまい、見るも無惨な有り様に。それ以来、そのCDを見るたびに罪悪感にさいなまれるので、奥の方にしまい込んで聴かなくなってしまいました。
しかしこう改めて見ますと、やっぱりカッコイイですね。罪滅ぼしも兼ねてもう一度CDを買い直そうかと思っております次第。

天国的半睡

2014-05-01 | 音楽
のろさんが音楽カテゴリの記事を書くのはたいていの場合、他のネタが間に合わなかった時です。

それはさておき

目覚ましの補足として、ラジオのタイマーをセットしております。
今日は収入源のお仕事の方は休みでございましたが、タイマーはいつも通りに作動し、枕元から何やら天国的な響きが聞こえて来るわい、と半分まどろみながら聴いておりました。

あとで調べてみたらば、この曲でございました。

スペインのフォリアと12の変奏曲 フランシスコ・ペトリー二


あらためて聴いてみると、ずいぶん物悲しげな曲ではあります。
まあのろさんの天国にはこのぐらいがちょうどいいのよ。
Francesco Petriniの名前で検索してみても、ネット上にはたいした情報はございませんでした。こちらによるとハープ奏者兼作曲家であった人物で、メクレンブルク-シュヴェリーン(現在のドイツ北東部)で宮廷仕えをしたのち、1769年にパリへ赴き、作曲や執筆にいそしんだとのことです。こんなに美しい曲を作曲(編曲?)したのに、あんまり有名ではないのですね。そんなもんか。

この勢いで、作業用BGMとしてyoutubeでハープの曲を聴いていたらば、超有名作曲家がマイナーな楽器で出てまいりました。

ええ、「鼻から牛乳」でございます。

トッカータとフーガニ短調


パイプオルガンの荘厳で強靭な音色も結構ですが、この今にもパリンと砕けそうな、危うく張りつめた響きもいいですね。

Joker's songの歌詞

2014-04-22 | 音楽
生まれてしまったので仕方なく生きているというこのぐだぐだ感。

それはさておき

Gooブログではアクセス解析サービスが有料でございまして、ワタクシは使っておりません。しかし半年に一度くらいの割合で10日間のお試し無料期間があり、その時は検索キーワードやら、閲覧数が多かった時間帯やらの情報を見ることができます。今が丁度その期間であり、昨日のアクセス解析を見てみました所、「joker's song miracle of sound 翻訳」というキーワードで当ブログに行き当たったかたがいらっしたようです。
Joker's Songは以前の記事で取り上げましたが、せっかくなので再度歌詞付きでご紹介しようかと。
こうして展覧会レポがどんどん遅くなっていく。

なお「You'd be lost」はそのまま訳すると「お前は茫然自失になるだろう」とか「お前はどうしたらいいか分からなくなるだろう」という意味になるかと思いますが、これですと歌詞として納まりが悪いのと、もっとバットマンを馬鹿にした感じを出したいという理由から、「迷子ちゃん」と意訳しました。
また「I have studied the mind of this bat」は直訳すれば「このコウモリの精神について研究してきた」となりますが、同様の理由により「こいつの考えは分かってる」と意訳しました。

誰かの権利を侵害しているつもりはございませんが、怒られたら引っ込めます。



Music and Lyrics by: Gavin Dunne

Grinning down through the gates
にたりと笑いながら門の外を見下ろす
Watch the night suffocate
見ているのさ、夜が
All the light as it smothers the sun
太陽を覆い隠して、すべての光を窒息させるのを

I can tell by the moon
月の光で俺にはわかる
You'll be joining me soon
お前はもうじきここへ来る
As a guest in my fortress of fun!
俺の”お楽しみの砦”の客として

And I can't wait to see you
待ちきれないぜ
And once again free you
またお前を解放してやるよ
Released from your humorless air
ユーモアを欠いた空気から

Someday I will replace
いつの日か替えてやるよ
That big frown on your face
お前のひどいしかめっ面を
With a smile and a murderous glare
ニコニコ顔とギラつく眼差しに


We are two of a kind
俺とお前は同類だ
Violent, unsound of mind
暴力的で精神異常
You're the yin to my yang, can't you see?
お前が陰なら俺は陽、分かるだろ?
And if I were to leave
もし俺がいなくなったら
You would grumble and grieve
お前はうだうだ言って悲しむだろうぜ
Face it, Bats…You'd be lost without me!
認めろよバッツ、俺がいなけりゃお前は迷子ちゃんさ

You'd be lost (You'd be lost)
迷子ちゃん(迷子ちゃん)
You'd be lost (You'd be lost)
迷子ちゃん(迷子ちゃん)
Face it, Bats…You'd be lost without me!
認めろよバッツ、俺がいなけりゃお前は迷子ちゃんさ

I'm just trying to show you
お前に説明したいだけなんだよ
Just how well I know you
俺がお前をどんなによく知ってるか
I understand just how you feel
お前の気持ちは分かる

Threw your reason away
理性なんか捨てちまえ
'Cause you had one bad day
”あるひどい一日”を経験したからには
And your mind let go of the wheel
まともな精神なんかさよならだ

Still we're fated to battle
それでも俺たちは闘う宿命
You pout and I prattle
お前は膨れっ面、俺は喋りっぱなし
Don't you ever tire of this game?
こんなゲーム、くたびれないか?

But you'll not make it end
だがお前はこいつを終わらせない
'Cause I'm your only friend
だって俺はお前の唯一の友だもんな
We are opposites but we're the same
俺たちは正反対、でもおんなじなのさ

*繰り返し

We have so many wonderful stories
俺たちにはいくつもの素晴らしい物語がある
I have studied the mind of this bat
こいつの考えは俺には分かってるんだ
A hero with no praise or glory
賞賛も栄光もないヒーロー
Just his cape and his cave and his...
あるのはただケープと、洞窟(ケイブ)と...
MEOW!!! AAHHHAHAHAHOOOOHOHOHHAHAH!
ニャーオ!(げらげら)

*繰り返し

ついでにこちらもご紹介しておきましょう。
音楽は「こうもり」序曲、使われている映像はゲーム『アーカム・アサイラム』のジョーカー操作モード(と、一瞬シーザー・ロメロ)。
実によくできております。



さらについでに今年没後10周年になるカルロス・クライバーの『こうもり』序曲を。
アンコールの気楽さゆえかとってもご機嫌で、まずは客席に向かって「こおもり!」と宣言してからすかさず指揮。



おお、何て楽しそうなんでしょう。
こんなのがあるから、もうちょっと生きてみようかなんて思ってしまうのよ。


JUNKFOOD JENNY

2014-03-27 | 音楽
高校生の頃好きだったミュージシャンに、「ICE」という日本のユニットがございました。
過去形で申しましたが、別にその後も嫌いになったわけではなく、住環境の変化に伴ってCDが棚の奥の方に行ってしまい、何となく聴かなくなったというだけのことでございます。彼らの楽曲の中でもとりわけ好きな曲のひとつが『JUNKFOOD JENNY』でございます。
昨今のSTAP細胞や難聴の作曲家をめぐる騒動、また劇場型政治のなれの果てとでも呼べそうな大阪市長選挙の有り様を見るにつけ、この曲のことが思い出されるのでございました。



ICE JUNKFOOD JENNY 歌詞

もちろんJennyの場合とは違って、上記の騒動は「ただのジョーク」から発したものではございませんし、渦中の人たちと「とても内気な少年」Jennyとの間には、あんまり共通点はないかもしれません。少なくとも6億円もの税金を自己顕示のために費やしたも同然の現大阪市長は、Jennyとは全く似ても似つかないと言ってよろしいかと。
しかし、実際の業績(とおぼしきもの)よりも、それをなした(とおぼしき)個人にむやみやたらとスポットライトを当てて祭り上げたあげくに、一旦彼らのいわば商品価値にかげりが見えるや否や、それっとばかりに手のひらを返して袋だたきにする、甚だワイドショー的なマスメディアの取り上げ方が何とも気持ちが悪く、この点において、何の根拠もないままにスーパースターに持ち上げられたのちに、またわけも分からず引き摺り下ろされるJonnyの物語を彷彿とさせるのでございました。

NSAがやって来る

2014-01-17 | 音楽
わっはっは、なんですかこれ。

The NSA is Coming to Town


気をつけなさい
スカイプはしないこと
ログアウトなさいな
そう、文字を打っちゃダメ
NSAが街にやって来る

みんなリストに載せられて
やつらに二重チェックされちゃう
あらゆる電子機器を監視する
NSAが街にやって来る

寝ている人は監視して
起きてる人は盗聴する
電話の相手もメールの相手もお見通し
だからお願い、暗号化して!

議会は暗闇、法廷も剣呑
満足な解決策は得られないまま
NSAが街にやって来る

みんなリストに載せられて
やつらに二重チェックされちゃう
あらゆる電子機器を監視する
NSAが街にやって来る
NSAが街にやって来る
NSAが街にやって来る


アメリカ自由人権協会(ACLU)というNGOが署名の呼びかけのために制作したこの動画と替え歌、昨年末から出回っていたもののようですが、ワタクシはついさっきBBCワールドで流れているのを聞いて初めて知りました。
米国民ではないので署名には参加できないようですが(郵便番号の記入が必須)、ACLUには拍手を送りたいと思います

真面目な事柄をユーモアに包んで訴えるのはセンスを要することでもあり、勇気のいることでもありますから。

もっとも、問題はとうに米国民だけのものではなくなっているわけでございますが…。

米NSA、世界中で携帯メッセージを大量収集=英紙 | Reuters
NSAが10万台のPCを無線で監視しマルウェアを送り込んでいる疑いが浮上 - GIGAZINE

イルヴィス兄弟

2013-10-16 | 音楽
早く死んじまいたいと思っているということだけを唯一の免罪符としてなおもぬくぬく生きているのであり。

それはさておき。
何故このごろ急に、当ブログの人気記事として「ヤン・エーゲランを讃える歌」が表示されるようになったのかといぶかしんでいたのでございますが、どうやらイルヴィス兄弟の新作The Fox””がTVで放送されたのがきっかけのようでございます。




**********

犬はウー、猫はニャー、鳥はピーチク、ネズミはチュー
牛はモー、蛙はケロケロ、象はパオーン
アヒルはクワー、魚はブクブク、アザラシはオウオウオウオウ

でもたったひとつだけ
誰も知らない鳴き声がある
狐はいったい何と鳴く?

*(ヒップホップっぽい擬音語いろいろ)
狐はいったい何と鳴く?

*繰り返し×2

大きな青い瞳、とんがった鼻 ネズミを追いかけ、穴を掘る
ちっちゃな足先で 丘を登って行く 急にお前は立ち止まる

お前の赤い毛皮 なんて美しいんだ
まるで変装した天使みたいだ

だがもしお前が フレンドリーな馬に出会ったら
会話のためにモールス信号でも使うのかい?

どうやってその馬に話しかけるんだい?
狐はいったい何と鳴く?

*繰り返し×4

狐の秘密 太古からの謎
森の奥深く お前はどこかに隠れている
お前の鳴き声は? それを知る日があるだろうか?
それとも謎のままなのか
お前はいったい何と鳴く?

お前は俺の守護天使
森の中に隠れてる
お前はいったい何と鳴く?

(狐、歌う)

それを知る日はいつか来るのか?
知りたいよ!...

**********


というわけで
相変わらず素敵なバカバカしさでございます。
ついでに2011年に発表された『ストーンヘンジ』もご紹介しておきましょう。




**********

俺の人生、順風満帆
必要なものはみんな手に入れた
一回1000ドルのヘアカットも
TVでトークショー番組も持った

というわけで俺はハッピーであるはずなんだが
どうしても頭から離れない疑問がひとつ

ストーンヘンジって何なんだ?
誰も知らないなんてひどすぎる
5000年前、あれは何のために作られたんだ?

ストーンヘンジは何のために作られたんだ?
どうやって石をあんなに高く持ち上げたんだ
今みたいな技術なんか全然なかった時代に?

ハラペーニョやイカスミ、それに生ハムで料理を作ってる時
俺はまさしく王様だ
キッチンでは女房が俺を讃える
食材は全部近くのスーパーで買ったものさ、と言ってやるとね

子供たちがベッドに入ると 俺たちは2人きり
彼女は俺に微笑みかけて 俺のボール(お察しください)で遊び始める

でも俺の頭の中はストーンヘンジのことだけ
夢の中でも考えてる
あんなにでかい環状遺跡は他に見たことがないぜ

ストーンヘンジはどんな目的で作られたんだ?
でっかい石造りのバースデーケーキ?
それとも、ものすごく脱獄しやすい監獄?

(コーラス:ストーンヘンジ!ストーンヘンジ!石がいっぱい並んでる!)

一つの石が25トンもあるんだぜ、マイフレンド!
なのにどうやったのか、砂の上におっ立てたんだぜ
動かして、引っ張って、ウェールズから46マイル(訳注:約74キロ)も転がして来たんだぜ!

ストーンヘンジって、いったい何なんだよ
ちょっとぐらいヒントを残してくれてもいいだろ
こんなものすげえ石のラビリンスを作ったからにはさ!
ストーンヘンジって、いったい誰が作ったんだ?

石器時代に2人の男が、何をしようかと考えていた
そして言ったのさ、「おい、ひとつ円環遺跡でも作ってみるか!」

俺はなんでもやるよ
ストーンヘンジのことを知るためなら
ああ、俺の全てを与えてもいい

(コーラス;車もくれる?)

エ~...いやもちろん車をあげてもいいさ

(コーラス:どんな車に乗ってるの?)

シビックだよシビック!

(コーラス:「あなたが信頼できる車」!)

いや車なんかどうでもいいから!遺跡に話を戻そうぜ!

(コーラス:どんな遺跡のことだっけ?)

ストーンヘンジ!ストーンヘンジだよ!
史上最高の円環遺跡さ!
ストーンヘンジっていったい何なんだろう!

**********


うーん。
何なんでしょうね笑。

どれも既存のポピュラー音楽のパロディとしてたいへん面白いのですけれども
ワタクシはやっぱり「エーゲラーン!(エーゲラーン!)」が一番好きですね、目下の所。

When you're evil

2013-08-16 | 音楽
送り火の支度




とは全然何の関係もない話でございます。

先日のノミ話でvoltaire(ヴォルテール)と名乗るミュージシャンについてちと触れましたけれども、それで終わりにするのもなんだか悪うございますので、もうちょっときちんとご紹介しておこうかと思ったわけです。
といっても『Devil's Bris(悪魔の割礼)』というアルバム1枚しか持ってないんですけれども。
ワタクシが購入したのは発売13周年記念盤とかで、何とご本人のサイン入りカードがついて来ました。

voltaire氏がどんなミュージシャンかと一言で申しますと、ゴスなシンガーソングライターでございます。
別に世の中を風刺したような曲を書いてらっしゃるわけでもないのに、何でこの芸名なのだろう、と思いましたら、本名の一部(ミドルネーム)がvoltaireなのだそうで。ちなみに『カンディード』の作者であるヴォルテールは本名ではなく、ペンネームでございます。本名はフランソワ=マリー・アルエ。いやはや、どうも可愛らしすぎて、かの喧嘩っ早い皮肉屋には似合わないようでございますね。

さておき。
ワタクシは別にゴス音楽のファンではございません。
クラウス・ノミが好きでも80年代カルチャー全般に興味があるわけではなく、クラフトワークが好きでもテクノファンなわけではなく、フランシス・ウォルシンガムが好きでも政治的タカ派を支持しているわけでは全くないのと同様でございます。要するに、ものごとをピンポイントで好きになる傾向があるのでございます。

で、ゴス好きでもないのろさんが、voltaire氏の10年以上前に出たアルバムを購入するに至ったのは、その中の『When You're Evil』という一曲がのろさんのピンポイントなツボにすっぽりとはまったからでございます。

何がいいって、歌詞がいい。
悪役loverの心をわしづかみでございますよ。




勝手に訳してみました。
国内版は出ていないようですし、商業目的ではないのでフェアユースの範疇だと思いますが、怒られたら引っ込めます。

When the Devil is too busy
悪魔は忙しすぎ
And Death's a bit too much
死神ではちょっとやりすぎって時には
They call on me by name you see
俺にお呼びがかかる
For my special touch
俺の特別なタッチを求めて

To the gentlemen I'm Miss Fortune
殿方にはミス・フォーチュン(「ミス・幸運」と「ミスフォーチュン(不幸)」をかけている)
To the ladies, I'm Sir Prize
ご婦人方にはサー・プライズ(「素晴らし卿」と「サプライズ(驚き)」をかけている)
But call me by any name
だが好きなように呼んでくれ
Any way it's all the same
いずれにしても同じこと

I'm the fly in your soup
俺はスープの中の蝿
I'm the pebble in your shoe
お前の靴の中の砂利
I'm the pea beneath your bed
お前のベッドのえんどう豆(アンデルセン『えんどう豆の上に寝たお姫様』から)
I'm a bump on every head
全ての頭にできたこぶ
I'm the peel on which you slip
お前が滑って転ぶ皮
I'm a pin in every hip
全ての尻にささるピン
I'm the thorn in your side
俺はお前の心配の種
Makes you wriggle and writhe
そのためお前は身をよじる


And it's so easy when you're evil
それもこれも簡単なことさ、邪悪な者にとってはな
This is the life, you see
これが人生ってものさ、そうだろ
The Devil tips his hat to me
悪魔も俺に挨拶するよ
I do it all because I'm evil
それもこれも俺が邪悪だからさ
And I do it all for free
全部タダでやってやるよ
Your tears are all the pay I'll ever need
報酬はお前の涙で充分さ

While there's children to make sad
悲しませるべき子供がいるなら
While there's candy to be had
取られるべきキャンディがあるなら
While there's pockets left to pick
すられるべきポケットがあるなら
While there's grannies left to trip down the stairs
階段を転げ落ちるべき婆さんがまだ残ってるなら
I'll be there, I'll be waitin' round the corner
俺はそこにいる、すぐそこに
It's a game, I'm glad I'm in it
これはゲームなんだ、参加できて嬉しいね
'Cause there's one born every minute
カモはいくらでもいるからな(注:以前の訳から訂正しました 11/3)

*繰り返し

I pledge my allegiance to all things dark and dire
俺は忠誠を誓う、全ての暗く恐ろしい者どもに
And I promise on my damned soul
俺の呪われた魂にかけて誓う
To do as I am told, Lord Beelzebub
指令通りにやることを。ベルゼバブ様も
Has never seen a soldier quite like me
俺ほどの戦士はご存知あるまい
Not only does his job, but does it happily
仕事をこなすだけでなく、喜んでやるのだからな

I'm the fear that keeps you waked
俺はお前を眠らせない恐怖
I'm the shadows on the wall
俺は壁に落ちる影
I'm the monsters they become
その影から生まれ出る怪物
I'm the nightmare in your skull
お前の頭蓋の中の悪夢
I'm a dagger in your back
お前の背中に刺さったナイフ
And extra turn upon the rack
拷問台では追加のひと締め
I'm the quivering of your heart
俺はお前の心臓の震え
A stabbing pain, a sudden start
突然に襲う、刺すような痛み

*繰り返し

It gets so lonely being evil
邪悪でいると孤独がつのる
What I'd do to see a smile
どうしたら微笑む顔を見られるのか
Even for a little while
ほんの少しでもいいんだ
And no-one loves you when you're evil...
誰も邪悪な者を愛してはくれない...

I'm lying through my teeth!
な~~~んちゃんてな!
Your tears are all the company I need!
俺のツレにはお前の涙で充分さ

以上

And extra turn upon the rack(拷問台では追加のひと締め)ってのが実にいいですね。この拷問台というのはウォルシンガム話5でご紹介した人間引き延ばし機のことでございます。

他の収録曲は、元恋人の今の彼氏を殺して川床に埋めることを妄想する男の歌(Ex Lover's Lover)や、「頼むよ、上の階に住んでるうるさい馬鹿を殺してくれよ、お前俺の友達だろ」と迫る(The Man Upstairs )、恋人への猜疑心と嫉妬にのたくる男の歌(Snake)、妄想の恋人を妄想の中で殺したのちにおそらくは自殺する男の歌(The Chosen)などなどでございまして、要するに、ゴスです。「毎日が僕らの記念日みたいだ」と歌う2曲目の『Anniversary』だけは、なぜか5月の風のような直球さわやかラヴソングなのですが。

ご本人はこんな人。相棒の無言のツッコミが笑けます。




わっはっは。面白いあんちゃんです。
「北米版山田晃士」と思った人、手を挙げて。
この30秒足らずのラヴソング(?)も『Deil's Briss』に収録されております。

ご本人の言葉によると、彼の歌は「電気が発明されず英国の女王がモリッシーであるパラレルワールドのための音楽」なだそうです。Wikipediaによると音楽活動の他、コミックを描いたりアニメーションを作ったり小説を書いたりなさっているようです。
HPはこちら。

Voltaire | voltaire.net

うーむ、こういうの、好きな人は大好きだろうなあ。冒頭で申しましたように、ワタクシはとりわけゴス好きというわけでもございませんので、今の所『When You're Evil』以外の作品にはあんまりのめりこんでおりません。もっと何回も聴けば、より好きになるかも知れませんが。年を取るにつれ、そういうこともあるのだと分かってまいりました。
昔、ニック・ケイヴの『マーダー・バラッズ』というアルバムが出た時、テーマに惹かれて購入し、3、4回聴いたものの、あんまり好みじゃないやと判断して、洋楽好きの飲み仲間にあげてしまったことがございました。あれももう少し聴き込んだら、また評価も変わったかもしれないと思うと、ほのかに残念ではあります。
後日そのお返し(ということだったと思う)に、当の飲み仲間が菅井君と家族石...ではなくスライ&ザ・ファミリー・ストーンの『暴動』をくれました。「なんか好きそうだから」と。正直言いますと、これも3、4回以上は聴いておりません。久しぶりに聴いてみたら以外とよかった、というケースもあることですし、この機会にまた引っ張り出して聴いてみようかしらん。

さてもさておき。
他の作品はともかく、『When You're Evil』は文句なしにのろごのみの一曲でございます
のろさんのと同様、世界中の悪役loversの心もまたがっしりと捕らえたようで、youtubeにはこの曲と映画やゲームやアニメーションに登場する悪役の映像を組み合わせたクリップが、そりゃもうたくさんupされております。ざっと数えただけでも100以上。ディズニーの悪役のみをフィーチャーしたものだけでも、少なくとも20本ございます。また媒体は様々ながら、キャラクターとしてジョーカーさんのみをフィーチャーしたものは、さすがと言うべきでございましょう、少なくとも21本ございます。

こんなナイスな曲にのせて、ステキな悪役たちがその全身で生き生きと悪を表現しているのを見ますと、のろさんはもう世の中の憂さを忘れるほどに嬉しくなってしまうのでございました。

でも別にゴス好きってわけではないんざんすよ。

ごぶさたをしております。

2013-06-05 | 音楽
すみません。
何もかもがわりと激しくまんべんなく面倒くさくて。
考えることがしんどいのですよ。

困った時のyoutube頼み。
というわけでお気に入り動画をひとつ。

Friedrich Gulda-Light my Fire!


うぉーう!

演奏しているのはのろさんの大好きなフリードリヒ・グルダ。
こんな映像を見ますと、まるっきりジャズピアニストのようで、バッハやベートーヴェンを端正に弾く人とは思われませんね。

ともあれ
たとえ箸の上げ下ろしが面倒くさくともフランシス・ベーコン展には這ってでも行かねばなりますまい。

みんなのうたのこと4

2013-05-19 | 音楽
悲しいとか腹が立つのを通り越して吐き気のするニュースが、昨今嫌でも耳目に入って来るので辟易しております。
何であんなどこへ出しても恥ずかしいような人物が首長をやってるんだか。

それはさておき
5/12 みんなのうたのこと3の続きでございます。

曲も絵も、初見からけっこう強烈な印象を残したのがこれ。
ラジャ・マハラジャー 【動画】

イントロから疾走感満点で突っ走る曲そのものもいいのですが、影絵のようなアニメーションが独特で、とてもきれいでございました。「まあ!まあ!」の所で出て来る猫がまた、妙に可愛かった。
色彩感溢れるおとぎ話のような歌詞もまた魅力でございます。「赤い飾りの象牙の馬車」に「銀の孔雀の羽から取った、夢から覚めない薬」、「月や星から集めた光でともす、お城のランプ」、どれもこれもファンタジー好きの心をくすぐる魅惑的なフレーズでございます。
こんな素敵な歌詞を書いたのは何者かしら、と思って調べてみましたら、岡本真夜『tomorrow』の作詞家さんなんですと。なんと、「涙の数だけ強くなれるよ」のあれですか?!曲のイメージギャップが大きすぎて、ちと驚きました。


何かわからんけどカッコイイなあと思っていたのがこれ。

種ともこ『ファット・マ・イズ・クリーニン・ザ・ルーム』


うーむ、年代を感じさせる映像ではありますが、歌は今聞いてもカッコイイ。掃除機にハタキそしてぞうきんという、いたって日常的なものを、かくもパンクに歌い上げるというのがいいではございませんか。後ろのテレビで映っているのが、みんなのうたで使われていたアニメーションでございます。「みんなお外へ行って遊んで来な」→ドラム猫、の流れがたまりません。
掃除の歌は好きでも掃除好きにはついぞならなかった。
そういうものだ。とトラルファマドール星人なら言うだろう。


さて、みんなのうたには不思議な歌も悲しい歌もございますが、これはその中でも異色の一曲ではないかと。

父さんのつくった歌 ‐ ニコニコ動画(原宿)

おそらく、音楽家だった父親が死んでしまったことを歌った曲。身近な人の死と別離を歌った曲ではあっても、『ちいさな木の実』のようにセンチメンタルではなく、『かんかんからす』のようなわびしさも、『大きな古時計』のような泣かせどころもない。暗くはないけれども『グリーングリーン』(日本版)のようなぐんぐん前向き感とも違う。悲しみと明るい透明感とが、奇妙に併存する曲でございます。

明るい曲調やボーイソプラノの澄んだ歌声。「もういないよ」という、寂しいけれどもきっぱりとした、喪失の表現。そして「父さんはもういない」ではなく「歌を作った人はもういない」という、距離感のある語り。また何より、父親が「ぼく」に遺したものというのが、この世を生きて行くためのポジティヴなメッセージといった、明確な意図と方向性を持ったものではなく、「すてきな歌」や「でたらめな歌」というより開放的なものであるという点が、この曲に独特の爽やかな印象を与えていると思うのですが、いかがでしょう。
シュルレアリスム風味の謎めいたイラストを描かれたのは上野紀子さん...なんと、『ねずみくんのチョッキ』のかたではありませんか?!これまた、ちょっと不気味な『父さん~』のイラストと、モノクロームの可愛いねずみくんのギャップが大きくて驚きました。


さても思い出しては懐かしく、新たに聴いても新鮮な名曲ぞろいのみんなのうた。
中から好きな曲をひとつだけ選べと言われたら、ワタクシのチョイスはこれになるのでございました。

まっくら森の歌


↑1:15~1;45で使われている画像は佐川美術館でございましょうね。佐川美術館2 - のろや

子守唄のような旋律に乗せて歌われる不思議な世界。幻想的なおとぎの国かと思いきや、道理が通らない悪夢の中のようでもあり、人の心の暗部を歌っているようでもあり、いずれにしてもほんの少しの怖さと、深い魅力をたたえた名曲でございます。イラストがちょっと可愛すぎるのが不満といえば不満であったのですが、のちのち知った所によると、まずコンセプトとしてのイラストが先にあり、そこに浩子さんが曲をつけたという成り立ちのようです。

ワタクシが人生で初めて買ったCDは谷山浩子作『歪んだ王国』だったのでございますが、おかしなことにその時は、彼女が『まっくら森』や、まったくトーンの違う『恋するニワトリ』の作者であることも、またタイトルも分からないままに好きな曲であった『風になれ~みどりのために~』(胃薬のCMに使われていた)の作者であることも存じませんでした。
ですから、これらの曲とラジオドラマ『悲しみの時計少女』の作者として認識していた浩子さんが結びついた時は、たいそうう驚きましたし、好きなものってどこかで繋がっているんだなあ、としみじみしたことでもございました。
逆の例で言えば、子供の頃からなんとなく気に入らなかった『アップル・パップル・プリンセス』を歌っているのが竹内まりやであると知った時は、あ~なるほど、と妙に納得いたしました。まあ曲自体は彼女の作ではないようですけれども。
ファンのかたがいらっしたらごめんなさいね。単に好き嫌いの問題でございます。

ことのついでに、みんなのうたの中で嫌いだった曲もちょっと挙げさせてくださいまし。

まず
天使の羽のマーチ 歌詞

何が嫌って、ここです。

「木登り 跳び箱 できない男の子 
 あやとり お手玉 忘れた女の子
 君にも あるのさ 天使の羽がホラ」

ここ、暗に「木登りや跳び箱ができない男の子とか、あやとりやお手玉を忘れた女の子は、基本的にはダメ野郎なんだけど」って言ってませんか。
言ってない?いいや言ってる。

それから
それ行け3組 歌詞

歌詞にもメロディにも歌唱にも溢れる、元気いっぱいポジティヴ満開みんないっしょにGoGo!感がすごく嫌でした。

そして
ありがとう・さようなら 歌詞

ええ、要するに学校が嫌いだったんです。


まあそんなわけで...

えっ
美術館へ行こうとうたっているブログのわりには、あの曲がないじゃないかって。
はい。『メトロポリタン美術館』でございますね。あれが押しも押されぬ名曲であることについては、異論はございません。しかし最後の「大好きな絵の中に 閉じ込められた」ってやつ、あれがワタクシも、ちょっと怖かったクチでございまして。

メトロポリタン美術館 歌詞

だって、色々考えるじゃございませんか。
大好きな絵ったって色々あるのに、その中のたった一枚に閉じ込められるなんてむごい、とか、いくら大好きな絵でもずっと閉じ込められていたらきっと嫌になってしまうだろう、とか、絵の中に閉じ込められたら、もうその絵を絵として外側から鑑賞することはできなくなるわけで、つまりは身動きできないまま、額の中から展示室内の様子や来場者の顔を見ることしかできなくなるわけで、それはかなり苦痛では...とか、とか。

それに、歌詞の他の部分にも、子供心にも突っ込みたい所がままございました。
冷えるから服を貸してほしいって言ってるのに、「赤い靴下かたっぽ」だけで寒さがしのげるわけないじゃん、せっかく天使の像が話しかけて来てくれたのにケチくさいなあ、とか、「目覚まし時計ここにかけておくから」って、その人(ファラオのミイラ)はそもそも起こすべきではないのでは?とか、バイオリンのケースじゃあんまり荷物が入らないと思う、とか、とか。
ああなんてつまらない小理屈を並べる子供だろう。
きっとろくでもない大人になるに違いない。
なったさ。

まあそんなわけで
こどもの日企画を月の後半まで引っ張るあたりにもろくでもなさがよくよく表れているような気がするわけですが、とりあえず今回のみんなのうたばなしはこれにて。


みんなのうたのこと3

2013-05-12 | 音楽
みんなのうたのこと2 - のろやの続きでございます。

さて、今回はみんなのうたの華にして、その問答無用の無意味さで日本の子供たちの音楽生活を彩って来たいちジャンル、即ち”ナンセンスのうた”を取り上げたく。

まずは『まるで世界』。
作詞 別役実 作曲 池辺晋一郎
そして
歌 山田康雄

ルパンですよ、ルパン!
ルパン三世が歌っているというだけでもう立派な笑い所でございます。歌詞がまたすごいんですな。
↓曲のみ聞けます。

みんなのうた 「まるで世界」 - ニコニコビューア

山田康雄さん、今更ながら、惜しい人をあまりに早く亡くしたものでございます。最高の聞き所は、二番なかばのあくびかと思うのですが、いかがでしょう。
世界そのものの信憑性を疑う、というデカルト的懐疑にある朝突然捉われた少年の心の叫び...にしては、軽い。
チャールストンなノリ、明るく屈託のない歌声、誰へともないオーイという呼びかけ、全てが朝のそよ風に舞う鳩の羽毛のごとくに軽い。
むしろ昨日まで抱いていた世界への懐疑が、今朝目覚めるとともに解消していたことを表現した、喜びの歌と解釈すべき所でございましょうか。それにしても、「どうしちゃったんだ僕は」ではなく「どうしちゃったんだ世界は」と、違和感の要因を自分ではなく世界の方に帰している所がすごい。

坊や、君は将来、大学の哲学科に進んで4回生になって初めて就職活動という言葉を耳にしてとりあえず院に進んで時間を稼いだのちに母校の専任教員の退職に期待しつつ幾つかの大学の非常勤講師をして食いつなぐ、という進路を取りそうな気がする。


お次は『へんな家』。
日本語の音源は見つけられませんでしたが、ポルトガル語版がyoutubeにありました。ミニマルにして雄弁なアニメーションが素晴らしい。




日本語の歌詞はこちら

屋根も床もなくトイレもない、小さな空間。普通、人はそれを「家」ではなく「囲い」と呼びます。
しかしそれをあえて「可愛らしい家」と呼んでいる所が清々しいではございませんか。
機能からも、地所からも、意味からも解放された「家」。この歌はそんなナンセンスな道具立てを用いつつも、孤独や不安を和らげてくれる、世界への信頼=楽天性と、それを何となく信じることができた子供時代への郷愁を唄った名曲でございます。
心配事はあるし、何もかもが上出来ではないけど、きっと大丈夫、何とかなる。
雨は降らないし、お日様は見守っていてくれるし、素敵な家はいつでも待っていてくれる。

ただ、最後に「大人には見えない 子供だけの家だもん」とハッキリ言ってしまうのはいささか蛇足ではないかと、ワタクシ思うのですよ。冒頭の「住みたかった家があった」という一節だけで「ぼく」が実際にはその家に住めなかったことは分かりますし、終盤の「0街の0番地」というフレーズで、現実には存在しない、想像の家であったということも充分に語られております。ですから「大人には~」の一節は、求めてはいなかった手品の種明かしをされたようで、ワタクシにはちょっとがっかりと申しますか、興ざめな感じがしたのでございました。


最後に、これはみんなのうたではなく「お母さんといっしょ」の中の曲でしたが、そのナンセンスっぷりがあまりに素晴らしいので、ぜひご紹介いたしたく。
↓映像付き。

しまうまグルグル - ニコニコビューア

しまうまのしまをどうやってぐるぐる取るのか、それをなぜくまやママにつけるのか、どうやってつけるのか、そもそもしまうまのしまは1本線じゃないんだから「ぐるぐる」は取れないだろう、等々全ての小理屈を一蹴する、このステキに破壊的な無意味さ。なんて爽快なんでしょう。
ただひとつ不満なのは最後の「しまそら」でございます。せっかく「しまくま」、「しまママ」と「ま」揃いで来たのですから、ここはぜひとも「しまうまの しまを ぐーるぐる取って...(中略)...島に つけたら しましま! しーましましましま しましま...」とやっていただきたかった。 


次回で終わり。多分。

みんなのうたのこと2

2013-05-09 | 音楽
5/7 みんなのうたのこと1の続きでございます。


(↓音楽ソフトで再現したもののようです。オリジナルの楽曲は見つけられませんでした)
MinnanoUta : Chameleon (1984) (カメレオン)


これ、せめて「月夜のカメレオン」とか「くいしんぼうのカメレオン」ぐらいに限定したタイトルにしないと、カメレオンという種族に対して失礼な気がするのですが。

これに「動物のうた」以外のジャンル名を付するならば「徒労のうた」となりましょう。
みんなのうたにはこの「徒労のうた」、即ちやってもやってもどうにもならない、とか、待っても待っても結局来ない、という内容のものが少なからずございます。
タイトルそのまんまの『われないタマゴ』、いつになってもまともな鳴き方を覚えない『ぼくんちのチャボ』、手袋を貸してくれた”あの子”を待ち続ける『子だぬきポンポ』。『オナカのおおきな王子様』は永遠にダイエットできそうにありませんし、『泣いていた女の子』のママは夕暮れになっても帰って来ませんし、婆さまが数珠を振って祈ろうとも、大地主の良左衛門が膏薬たんと買うて来ようとも、村中の若者どもが月夜の山で願掛けようとも『ひげなしゴゲジャバル』の切られたひげが復活するかどうかは、歌の中では分からないままでございます。

これは子供の頃から人生に対する締念を身につけさせようという目論み、ではもちろんなく、歌の中だけで話を完結させないことによって、歌われている物語に広がりや奥行きを生じさせるというワザなのでございましょう。
してみると、この『カメレオン』のように徒労を徒労のまましっかり完結させてしまうというのは、珍しいケースでございます。

カメレオンのお父さんが、おいしそうなお月様を味見してやろうと一晩中舌を繰り出し続け、明け方にようやくひとなめできたもののぜんぜんおいしくなかった、という、不毛さにかけてはちょっと他曲の追随を許さない内容は、いっそ爽やかですらあります。
その取り組みがバカバカしい分、カメレオンの奥さんの「あなた~、もうやめたら~?」という、いたって現実的なツッコミも輝いております。そりゃ、ダンナがこんなことに熱中していたら、ひとこと言わずにはいられますまい。

夜通し月の光を浴び続けたおかげで、身体が金色になってしまったカメレオンのお父ちゃん。翌朝その身体を自慢げに見せびらかしているアニメーションを、エンディングに挿入することによって、結局何もかも無駄でしたという身もふたもないしょんぼりエンドは回避されております。
しかし、一過性ならいいけれど、あんな派手な身体になってこれから彼はカメレオンとして生き延びて行けるのだろうかと、のろさんは子供心に要らぬ心配をしたものでございました。

さて物心ついた時からなぜか恐竜、爬虫類およびドラゴンの類いが好きでございました。人生で初めて劇場に二回観に行った映画は『ジュラシック・パーク』でございます。ゴジラとかガメラは、あれは「怪獣」なので興味の範囲外でございます。ドラゴンと怪獣は違うのかって。違うのです。違うったら違うのです。ですから「♪Puff the magic dragon」が「♪不思議なパフ、かいじゅうだ」になってしまうのはイカンと思っております。

ともあれ、みんなのうたには爬虫類はもとより、恐竜やドラゴンが主役の歌もほとんどなかったように記憶しております。そんな中での例外が上述の『カメレオン』であり、また『サラマンドラ』という歌詞も歌唱もメロディも壮絶にもの悲しい曲でございました。

作詞 加藤直  作曲 高井達雄 唄 尾藤イサオ

燃える火に棲みつき ひとりぼっち 星を数えて ためいきひとつ
サラマンドラ サラマンドラ 炎(ひ)の中の竜

思い出数えて ひとりぼっち 黒いからだの 幻の竜
サラマンドラ サラマンドラ 炎の中の竜

最後の夢から 一万年 仲間もいない おどけもの
夜空を鏡に ひとりごと こぼれる炎 ぐちひとつ

キバもなくした おかしな竜 誰か来て 彼と話して
サラマンドラ サラマンドラ ひとりぼっち


映像は見つけられませんでしたが、音源のみこちら↓で聞くことができます。

サラマンドラ - ニコニコビューア
 
つ、つらい。
どうです。子供向け歌番組のために作られたとは思えないばかりの、この凄まじいわびしさ。この寂寥感に比べたら「悲しきマングース」の悲しみなんて屁でもねえでございますよ。1万年以上もの長きに渡って、炎の中でひたすら孤独な日々を送って来たサラマンドラ。そもそものはじめからジャッキーを欠いたパフのごとしではございませんか。

ワタクシもちろん『パフ』も大好きでございますけれども、パフを残して遠くへ行ってしまったジャッキーが何としても許せませんでしたし、友好的なドラゴンがあんなにも辛い目にあう歌を作った見知らぬ作詞家を、恨みさえしたものでございました。
一方『サラマンドラ』では、この”幻の竜”がどうしてこんなにも孤独な生を送らねばならなくなったのか語られることはなく、しかも最後は「誰か来て彼と話して」と聞き手に行動をゆだねる恰好で終わっております。そりゃ、駆けつけてお話したいのは山々ですよ。山々ですけれども、いったいどうしろと。『サラマンドラ』においてはかきたてられた哀れみも悲しみも、どこへも持って行きようがなく、やるせなさばかりがつのるのでございました。

それでものろさんはこの歌が大好きであり、子供の頃に口ずさんだ回数としてはおそらく『パフ』よりも多いというのは、この歌における悲しみが自己完結型であり、そのぶん受容しやすいからでございましょう。『パフ』においては、幸せあるいは愛着の対象である少年ジャッキーが、パフにひとたび与えられたのちに失われるのに対し、『サラマンドラ』においては、幸せも愛着の対象も歌にはまるっきり現れません。
愛や幸福がひとたび与えられたのちに失われるのと、そうしたものがはじめから経験されないのと、どちらがより耐えやすいのか。人によって様々ではございましょうが、ワタクシには後者の方が断然耐えやすいように思われます。
仲良しだった子犬が突然姿を消す『子犬のプルー』や、その猫版とも言える『わたしのにゃんこ』(作詞作曲・矢野顕子 編曲・坂本龍一)が、メロディの親しみやすさやアニメーションの可愛らしさにも関わらず、ワタクシに何か堪え難いような印象を与えるのも、同様の理由でございましょう。


次回に続きます。

みんなのうたのこと1

2013-05-07 | 音楽
ぶり返すの「ぶり」って何なんだろう、と思ったわけです。
調べてみましたら「振り」なのだそうです。なるほど。

というわけで
10年以上まったく静かにしていたアトピー性皮膚炎が突如ぶり返し、ガサガサかゆかゆなのでございます。
何をしても身が入らないのでさっさと布団に入るものの、かゆくてすぐ目が覚めるという、関西弁で言う所の「どーせいゆうねん」状態。

そんなわけで、こどもの日とやらに事寄せて、NHKの「みんなのうた」の話でもいたそうかと計画していたわけですが、かゆかゆに妨げられて5月5日までに記事ができませなんだ。
といって新しい記事を用意する元気もございませんので、とりあえずしばらくはみんなのうたばなしをさせていただきたく。
大人になってから知った歌や好きになった歌もございますけれども、当初の企画に沿いまして、ここでは「子供の頃好きだった歌」のみに限って取り上げることにいたします。

まずは
定番のうたから。

『赤鬼と青鬼のタンゴ』 Dailymotion

↑リンク先で視聴できます。
この歌の何がいいって、きびきびとした緊張感とメリハリのある曲調に、「夕焼けピーヒャララ」だの「だんだらづのツンツン」といった何となく間の抜けた歌詞、そしてカールおじさんを思い起こさずにはいられないほのぼのイラストの絶妙なブレンドがいいじゃございませんか。
お囃子風の前半部分とまるっきりタンゴな後半部分が、何の違和感もなく繋がっているのもすごい。
あとは、まあ、うさぎにつきます。

動物のうたも色々ございますね。

谷山浩子 / 恋するニワトリ


これは曲も歌詞もアニメーションもかわいいの一言につきる歌でございました。ところが作者であり歌い手でもある谷山浩子さんは「わりとリアルなニワトリさんをイメージして曲を作ったので、アニメーションがかわいくて驚いた」のだそうです。
さすがと言おうか...この曲でリアルなニワトリを思い浮かべるのは、世界広しといえども浩子さんくらいのものございましょう。「私はここよ ここ ここよ」ってリアルなメンドリに言われてもなあ。

みんなのうた オランガタン


ユーモラスなアニメーションと、「オランガタン」の繰り返しと、単純なメロディとコーラスが醸し出すちょっとつっけんどんな感じが好きだったのですが、改めて聞いてみると、了見の狭いことをやっとらんと仲良くしようぜ、というしっかりしたメッセージのある曲だったのですね。
ちなみに、当時ワタクシの実家には、中に綿だか羽毛だかがもこもこに詰まった、裾の短い青い防寒ジャケットがございまして、形と色の類似からうちではこれを「オランガタン」と呼んでおりました。


うう。
かゆかゆなので
次回に続きます。

さよならカウント伯

2013-03-03 | 音楽
うわあん。

いや、何がうわあんって、長年セサミストリートのマペット使いとしてご活躍されたジェリー・ネルソンさんが、去年の8月にお亡くなりになったというじゃございませんか。
それを何で半年も経った今嘆いているかと言えば、昨日までこのことを知らなかったからじゃございませんか。

彼の演じた愛すべきマペットたちの中には、トチってばかりなのにいつも自信満々な自称大魔術師アメイジング・マムフォードや、気は優しくて力持ちなコワモテ、ヘリー・モンスターなどもおりますけれども、ジェリー・ネルソンさんといえば、そう、何と言っても、カウント伯爵でございます。

東欧的巻き舌と、数えることへの常軌を逸したこだわりと、超絶マイペースなご性格で、善良なるセサミストリートの住人をしばしば困惑の渦に叩き込んみ、降り注ぐ雷鳴と共に放置し去るのが常であった、セサミ屈指の変人、カウント伯爵。ワタクシはこのひとをゴミ箱の住人オスカー・ザ・グラウチと並んで敬愛しておりました。

そして名曲ぞろいのセサミの楽曲の中でも、ワタクシが一番好きだったのはカウント伯のレパートリーでございました。ネルソンさんの訃報に接したのも、楽曲がきっかけでございます。

いえね、そもそもはカウント伯とは関係なく、Youtubeでジョーカーさんの歌”Joker's Song"を聞いていたのでございますよ。

Miracle of Sound: Joker's Song (Batman: Arkham City)


歌詞がサイコーなのはさておき、繰り返し聞いているうちにふと思ったわけです。なんかこれと似たような曲があったなあ、と。ズンチャッチャ、ズンチャッチャな節回しで、特に結びの「Face it, Bats...」の所が似ているあれは...Bats..Batsy...そうそう!カウント伯の歌う”The Batty Bat”ですよ!

Sesame Street: Batty Bat


まあ要するにどちらも短調のワルツというだけのことであって、同じような曲、というかもっとよく似ている曲は、他にいくでらもあるこってございましょう。しかしコウモリつながりという所がよろしいではございませんか。
で、この動画に対するコメントを読んでいて、氏がお亡くなりになったことを、遅ればせながら知ったのでございます。

カウント伯、いやジェリー・ネルソンさん、今更ながらご冥福をお祈りいたします。
初学期のワタクシに素敵な英語体験を与えてくだすって、本当にありがとうございました。


ヤン・エーゲランを讃える歌

2012-10-26 | 音楽
ノルウェー赤十字国際部の事務局長をつとめたのち、2003年から2006年に渡って国連の人道問題担当事務次長、兼人道援助調整官として活躍し、現在はアムネスティ・インターナショナル・ノルウェー支部代表およびヒューマン・ライツ・ウォッチ代表代理として活動中のヤン・エーゲラン氏を讃える歌。

Ylvis - Jan Egeland [official music video HD]


ご覧いただければお分かりのように、一種のコミックソングでございます。
2:57の「エーゲラーン!(観客:エーゲラーン!)」がツボ。バカバカしいことを大真面目にやるって大事なことです。とっても。
パフォーマーはイルヴィス兄弟というノルウェーのコメディアン2人組。ミュージシャンとしての才能もおありのようで、作詞作曲も演奏も彼ら自身のものであり、普通のロックの楽曲としてもなかなか聴ける代物でございます。PVで使われているライヴ風景も実際に25000人の観客の前で演奏した折の映像なのだそうで。もっとも観客はみんな他のバンドのライヴに集まったファンたちで、そこにサポートバンドとして参加していたイルヴィス兄弟が、前座としてちゃっかりこの曲を演奏して、PV用の映像を撮らせてもらったのだとか。

歌詞や映像に見られる過剰なマチズモは、もちろんハードロックの楽曲に見受けられるマチズモのパロディなのであって、額面通りに受け取るべきものではございません。
訳すまでもないような歌詞ではございますが、一応日本語訳してみますとこんな感じになります。

*******

グレーの頭髪、眼鏡にスーツケース 謙虚で賢明で
いつだって平和のために働いている
ウガンダ、コンゴ、それにオスロ合意のプランのためにも 
ああ、素晴らしいあのプラン

ガール・ストーレ(外相)ほど有名じゃないし
イェンス(首相)みたいにファザコンでもない
だが手榴弾が飛び交っている時、頼れる男はただ一人

戦争が起きて何もかもめちゃくちゃなら
ヤン・エーゲランを送り込め
国連のスーパーヒーローを

狂った独裁者が銃をかまえてるなら
ヤン・エーゲランを送り込め
ああ、俺がヤン・エーゲランだったらなあ

青い目、力強い手、カッコいい脚
きれいに剃り上げた身体
プロテイン・シェークを飲み
日焼けスプレーにスキンクリーム
おまけに18歳みたいないいお尻
あいつはピースキーピング(平和維持)・マシーン

そしてあいつは見つめる、鏡の中の自分を
夜中に力こぶを作ってみながらひとりごちる
「よし、いいぞ。人権を守る戦いの準備は万端だ」と

戦争が起きて何もかもめちゃくちゃなら
ヤン・エーゲランを送り込め
国連のスーパーヒーローを

コフィ・アナンとゴルフをやり
ジョージ・クルーニーと一緒に地図を覗き込む
ああ、俺がヤン・エーゲランだったらなあ

悲しい時には葬式に行く
激しい雨の降る中を
大量の水がその顔を覆っても
その悲しみを隠すことはできない

ホモ野郎のように取り乱し
女のように泣き出しもする
だがたとえ涙を流しても、男でいることはできるさ
世界を救うことが君の仕事なら

あいつは筋トレを欠かさないマッチョ
神に向かって叫ぶ

信じられる男がたった一人いるとしたら
そいつはジャニー・ボーイ(我らがヤン君)さ
ああ、俺がヤン・エーゲランだったらなあ

*******

イルヴィス兄弟いわく「彼はすごいヒーローなのに、ノルウェーの街中を歩いていても誰も彼のことに気づかない。少なくとも僕らの世代の若者は気づかないだろう。それで、彼に脚光を当てるのはクールなことだと思ったんだ、それに値する人だからね」と。
イーゲラン氏ご自身はこの曲に対して「とても驚いた。おかしな歌詞に素晴らしいメロディ、すごく面白いね」とコメントなさったとのこと。冗談の分かる人って好きさ。

この曲のおかげで、ワタクシもエーゲラン氏がどういうかたなのか、ちょっと調べてみる気になりました。
といっても主にWikipedia英語版を見ただけですが。日本語版にはエーゲラン氏のページはございません。イェンス・ストルテンベルグ首相のはありますのにね。

経歴をざっと見ますと、アムネスティ・インターナショナル国際執行委員会の副委員長に、史上最年少の23歳で就任という点にまずもってたまげてしまうわけですが、そののちは冒頭に列挙した様々な肩書きの他、ノルウェー外務省政務次官、国連事務総長コロンビア問題特別顧問、アンリ・デュナン(←赤十字を設立した人)協会の開発研究部長、おまけにノルウェーの公共放送NRKの記者などもつとめておいでとのこと。

で、そのキャリアの中で実際にどんなことをなさって来たのかというと...

・中東和平
1992年、イスラエルとPLOの対話チャンネルを共同で開き、交渉を組織。
この交渉により’93年、イスラエルとPLOがお互いを承認し、パレスチナの暫定自治、およびイスラエルによる占領地の去就をめぐる交渉の枠組みを定めた、要するに紛争の平和的解決を目指した歴史的な「オスロ合意」が実現。
ちなみに前年のマドリード中東和平会議では、双方の代表団が顔を合わせるのは一日のうち数時間に限られていたのに対し、オスロでは双方が同じ建物で寝起きし、三度の食事も同じテーブルで行った結果、お互いに敬意と親愛の情が育まれたということです。セキュリティを含めた諸々の費用を負担し、交渉が外野の監視にさらされないよう配慮したのは、ノルウェー政府でございました。

2006年、イスラエルによるレバノン侵攻を受け、人道支援のための72時間の停戦双方に提案。イスラエルは一旦は拒否するも、のちに48時間の空爆停止に応じる。
レバノンの難民支援や破壊された地域の再建のため、1億5000万ドルの緊急支援金アピールを行う。
エーゲラン氏はイスラエルに批判的であったものの、この時は人道的見地から、それまで国連の誰もがあえてしなかったほど厳しい言葉でヒズボラを非難しました。
「ヒズボラは女性や子供たちの間に身を隠すという卑怯なことをやめるべきだ。攻撃の矛先が市民に向けられたおかげで、兵士たちの犠牲が少なくて済んだことを、彼ら(ヒズボラ)は誇っているというが、何者であれ、武装した男たちよりも女性や子供が多く死んだことを誇ったりすべきではない。戦闘をやめるべきだ。この戦いで犠牲になっているのは民間人なのだから」

・中米和平
国連主導によるグアテマラ政府と反政府ゲリラURNG(グァテマラ民族革命連合)の和平交渉において、ノルウェーによる交渉促進活動を指揮。’96年オスロでの停戦合意が実現し、36年に渡る内戦に終止符が打たれる。

・対人地雷禁止条約
条約の起草会議が行われた1996年のオスロ国際会議では、ホスト国ノルウェーの代表団長をつとめる。「地雷を使うのも、持つのも、作るのも、人にあげるのもやめようじゃん。今持ってるのも捨てようじゃん」という目標を明記した「オタワ条約」は同年12月にめでたく採択。

・災害援助
2004年のインド洋大津波の際は国連の緊急援助調整官として各国に支援を要請し、全OECD加盟国は支援金としてGDPの0.7%を拠出すべきだと提案。その流れでの「クリスマスの期間、我々はいかに西欧諸国が裕福であるかに思いを致すべきだ。多くの国が国民総所得の0.1~0.2%しか拠出していないというのは出し惜しみではないか」という発言は、当初1500万ドルしか提供していなかった米政府の不興を買ったものの、結果的には米国をはじめ各国からより多くの寄付金を引き出すことに繋がった。
そのあたりのことはこちら↓のブログさんが詳しく書いてらっしゃいます。
アメリカはケチか? - 海外のニュースより

前年2003年の米GDPは約11兆ドルであり、ワタクシの計算が間違っていないとすると、1500万ドルというのはその0.002パーセントにも満たない額ということに。うむ、ケチです。

のちに『タイム』誌はエーゲラン氏のことを「世界の良心」と呼んで讃えました。

・そのほか
ノルウェー外務省政務次官に就いていた折に2つのノルウェー緊急事態対応システムを発足し、国際機関に2000人以上の専門家と人道支援活動要因を派遣。
ウガンダ、スーダン、コンゴなどの内戦で住む場所を追われた難民や国内避難民など、緊急に支援を要する人々の困窮を軽減することに尽力するかたわら、津波やハリケーンといった大規模自然災害の被災者のためのキャンペーンも行う。
ジェンダー平等に向けた啓発や、性搾取・性暴力問題への意識喚起、紛争解決や人権・人道問題に関するレポートや記事を発表する他、環境問題に関する提言も行っている。


おおっ
かっこいいぞエーゲラーン!(エーゲラーン!)
ちょっと回顧録も読みたくなってきましたよ!
これまた、日本語版は出なさそうですけれど。

まことに、こういう人こそスポットライトを浴びてしかるべきでございましょう。
日本でメディアのスポットライトを浴びている人のことを思うと...
いや、やめよう。虚しくなります。
(追記:この記事を書いた頃は、某大阪市市長の言動が毎日のようにメディアに取り上げられていました)

実際のエーゲラン氏はこんな人。

Coping with climate change


Assad's licence to kill? Syria interview with Jan Egeland


Go!Go!ピースキーピン・マシーン!

関連記事
イルヴィス兄弟 - のろや