のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

2014年度『日展』

2015-01-12 | 展覧会
相変わらずやる気のなさMAXで記事の投稿が遅れまくりでございます。

それはともかく
京都市美術館で開催中の『日展』へ行ってまいりました。

印象に残った作品と作家さんをメモ的に挙げておきます。
日展のサイトで作品が見られるものはリンクを貼りましたが、実物と比べてがっかりするほど平板で、色彩的な魅力も乏しい画像になってしまっております。

・村山春菜「記憶:KYOTO」(日本画)
こちらで見られます。→公益社団法人 日展(日本美術展覧会)- 主な作品
村山春菜さんの絵は大好きなのです。2009年の日展で初めてその作品にお目にかかって以来、毎年楽しみにしている作家さんの一人です。
勢いと執拗さが渾然となった、ゴトゴトと力強くてちょっと猥雑な感じがたまりません。
同時代ギャラリー 村山春菜

当ブログ内での関連記事はこちら。
『日展』2 - のろや
2009日展2 - のろや

・鵜飼雅樹「椅子」(日本画)
こちらで見られます。→公益社団法人 日展(日本美術展覧会)- 主な作品
白い背景に椅子のシルエットが3つだけ。
ものすごくよかったのですが、どういいのか言語化するのが難しい、切り詰めた詩のような作品でした。

・上田とも子「ときめく街へ」(日本画)
上田さんの作品も以前の記事でご紹介したことがありました。
2009日展2 - のろや
都市特有の幾何学的な美、というモチーフ自体は現代日本画ではわりとよく見かけますけれども、上野さんの作品はものやわらかな押さえ気味の色彩がとても美しく、かつ描写に妙なてらいがないところが大きな魅力でございます。人間が作り、行き交い、生活していく場である「都市」というものの体温、そして視覚的な面白さを、冷静に、かつ愛情を込めて表現してらっしゃる感じがなんとも。
Art Annual online 上田とも子「美しき街」

・生島潔「It goes on-時間は続いてゆく」(日本画)
こちらで見られます。→東信ジャーナル[Blog版] | ◆「日展」2014「改組新第1回日展」 生島潔さん(56)が日本画で特選!=長野県上田市浦野= リンゴを見つめる自身の姿を描く!
象徴的な作品ながらあれこれ語りすぎない所がよろしいと思います。量感のある描写、虚をつかれたような男の表情、落ちかかるリンゴの鮮烈な赤に目を奪われる作品でした。


・李暁剛「井」(洋画)
こちらで見られます。→公益社団法人 日展(日本美術展覧会)- 主な作品
日展で目にするスーパーリアル系の人物画は、実を言うとそんなに心惹かれないものが多いのですが、これはグッと来るものがありました。早朝あるいは夕方の斜めに差し込む日差しの中、異国の女性が井戸で水汲みをしております。鈍く光る金属のバケツを片手に腰を屈め、巻き上げ用のハンドルに手をかけた女性の、その姿勢の確かさ。日常の中で何度となく繰り返されてきたであろう動作を、その繰り返しの日々ごと描き込んだような誠実な描写がとても美しく、胸を打つ作品でした。
李暁剛(リシャオガン)の世界

・森田隆司「どこに行く?」(陶芸)
これは...「ザムザ氏の散歩」へのアンサー陶芸でしょうか。イソギンチャク的、ナマコ的、あるいは巻貝的な形状の、ヘンテコリンな物体が、やさしい乳白色のからだをくるりんと外巻きに丸めて、そっくりかえっております。ぱらぱらと放射状に伸びた足(?)のリズム感が心地よく、仰々しさはまるでなく、何だかとぼけていて、変に可愛らしい。展示室内を移動しながらもたびたび振り返って見てしまう可愛らしさ。日展の会場ではあまりお目にかからないタイプの作品であったように思います。
森田 隆司 | 京都山科・清水焼の郷 清水焼団地


・坂本健「奪われた十の言葉」
こちらで見られます。→公益社団法人 日展(日本美術展覧会)- 主な作品
どこかエル・グレコの描いた人体を連想させる像でございます。極端に大きく反り返った姿勢、力なく垂れ下がる両腕、ふくらはぎから鋭く細まった痛ましくも強靭な足首、天を仰ぎながらも閉じられたままの瞳。大声で泣き叫ぶのでもなく、苦痛に顔を歪めるのでもない、深く激しい苦悶の佇まい。


そんなわけで
よい作品と巡り会うことのできた今回の日展ではございましたが、毎年楽しみにしている古澤洋子さんの作品が展示されていなかったのは、実に残念なことでした。出品はされているのに、何故京都に来なかったんだろう。







あけましてまたぱぶこめ

2015-01-01 | Weblog
あけました。

それはさておき、福井県の高浜原発3、4号機の最稼働について政府がパブコメを募集しております。

1500万人の飲料水を守れ!高浜原発再稼働パブコメ、政府が国民の意見を募集中。あなたも書きませんか?たとえば、こんなことを。 | 国際環境NGOグリーンピース

2011年に起きた福島原発事故はいまだ原因が究明されておらず、収束もしておりません。
高浜原発は、集中立地、複数ユニット(1カ所に2機以上の原子炉を置くこと)、そして老朽化という福島原発と同様の問題を抱えております。今回審査の対象になったのは1985年に建てられた3、4号機ですが、同じ敷地内にある1、2号機は福島第一原発とはたった1年違いの1974年製で、昨年で運転開始から40年目となりました。
ちなみに九州電力は昨年、老朽化問題が常々指摘されていた玄海原発1号機を廃炉にするとの方針を発表しました。この原子炉が運転を開始したのは1975年、つまり高浜原発1、2号機の方が1歳年上です。
さらに関電は今回の3、4号機のみならず、ゆくゆくはこの古い1、2号機の最稼働も視野に入れております。

関西電、高浜原発1・2号機の40年超運転延長へ点検実施 | Reuters

ご存知のように、福島原発事故由来の放射性物質は200km離れた東京や千葉にも降下しました。
東京の水道水から放射性ヨウ素が検出されたこともありました。

東京の水道水から検出 乳児基準超えるヨウ素 - 47NEWS(よんななニュース)

↓科学誌『ネイチャー』が作成した汚染地図。2011年5月~9月の間に捉えた淡水魚(鮎)のセシウム汚染度を測定して地図上で色分けしたものです。
The isogram map shows average active cesium (quasi-Cs137) contamination level of the Ayu (Plecoglossus) captured in between May and September 2011 on each prefectures in eastern Japan. : Overview of active cesium contamination of freshwater fish in Fukushima and Eastern Japan : Scientific Reports : Nature Publishing Group

そして京阪神の水瓶・琵琶湖は高浜原発から同心円でたった60km圏内にあります。

また規制委は審査対象の3、4号機が新しい規制基準に適合したとしておりますが、住民の避難計画については審査の対象外となっております。
その上、以下の東京新聞の記事によると、内浦半島内の高浜原発に車で行ける道は県道1本のみであり、これが途中寸断されると孤立してしまいます。のみならず、途中には崖の崩壊や土砂流の警戒区域もあるというのに代替ルート建設は検討されていないということです。
これでは「事故は起きない」ということを前提にしているのも同じではないでしょうか。福島の教訓はいったいどこに吹き飛んでしまったのか。

東京新聞:高浜3、4号機 審査書案了承 原発集中、リスク不問:社会(TOKYO Web)

以下は2012年2月の記事ですが、ここで述べられている「根拠の無い楽観的空気」は原子力規制委員会の皆様方の間にも充満しているのであろうか、疑わざるを得ません。

「原発事故の最悪シナリオが避けられたのは“幸運”に恵まれたからです」:日経ビジネスオンライン

 そして、私が、敢えて、この「幸運だった」ということを申し上げるのは、いま政界、財界、官界のリーダーの方々の中に、「根拠の無い楽観的空気」が広がっているからです。残念ながら、これらのリーダーの方々の中には、今回の事故の深刻さを直視することなく、また、事故原因の徹底的な究明をすることなく、「もう福島原発事故は収束した」「もう同じ事故を起こすことはない」という楽観的意見を語る方がいます。
実は、そうした「根拠の無い楽観的空気」こそが、今回の福島原発事故を起こした遠因であることを、我々は、肝に銘じるべきでしょう。




さて原発の話はとりあえずここまでにして、もうひとつ正月早々縁起の悪い話を。

東京新聞:国が企業向け促進策検討 武器輸出に資金援助:経済(TOKYO Web)

東京新聞:武器購入国に資金援助 途上国向け制度検討:経済(TOKYO Web)

戦場ジャーナリストが問う「武器輸出三原則」撤廃の行方-「死の商人」化する安倍政権(志葉玲) - 個人 - Yahoo!ニュース

日本が「死の商人」にー安倍政権、武器輸出三原則撤廃を目指す(志葉玲) - 個人 - Yahoo!ニュース

「イスラエル兵の投げ込んだ爆弾で、パパは首から上が吹き飛び、ママはお腹が裂け、内蔵を飛び出させて死んだわ…」日本が武器輸出三原則の例外としてF-35共同開発に関わろうとしていることを話すと、ザイナブさんはこう訴えた。「米国やイスラエルに兵器を売らないで下さい。その兵器が私達を殺します。日本の人々がいい人達だと、私は信じています」と。

これらをお読みになって何か思う所がおありでしたら、ぜひとも一言こちら↓にお寄せいただくのがよろしいかと。

防衛省・自衛隊:防衛省・自衛隊に対する御意見箱
パブコメではございませんが、とりあえず意見を受け付けてはいるようです。名前もメールアドレスも不要。


以上、年明けから実にめでたくないトピックでございました。