のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『くるみ割り人形』

2009-11-22 | 美術
先週11/15、国立サンクトペテルブルク・アカデミー・バレエの『くるみ割り人形』を観てまいりました。

生でバレエを観るのは初めてでございます。会場が広くないということもあってか生演奏ではございませんでしたが、そのぶん間近で舞台に接することができました。マーシャ(クララ)の可憐なことといったら、伸ばした指先からはらりはらりと花びらが舞い落ちるかのようでございました。ねずみの王さまを演じていたのはシャープな顔立ちの美女でございまして、憎々しげな表情もサマになっておりました。しっぽを鞭のように鳴らしたり、家来のねずみどもに担がれてさも得意げに舞台を横切って行くコミカルな演出も楽しい。



しかしまあ
何と申しましても
ドロッセルマイヤーおじさんでございます。
そのかっこいいことといったら。(のろ基準)



黒地に金刺繍の衣装に身を包み、くるみ割り人形を従者のように引き連れて、のっけから「何かやらかしますよワタクシは」という怪しげなオーラをみなぎらせてのご登場。ちゃちゃっと人差し指を振り立てるポーズをはじめ、パントマイムのような身のこなしはちと香具師的でございます。彫りの深い顔から下弦の月の如く突き出した鋭い鷲鼻、怪しげな身振りにひょろっとした体躯。こうした風貌にアクロバティックな踊りが相まって、魔術師の老人というよりもトランプのジョーカーじみた雰囲気でございます。
いかに(のろ的に)かっこよくてももちろん脇役なのでございますが、第一幕では主役そこのけのご活躍で、舞台狭しと躍りまくっておりました。



いやあ
のされました。参りました。王子様なんて全然目じゃないっすよ。(のろ基準)
ジョーカーじみた人が好きなのかって。そうですよ。
それはさておきドロッセルマイヤーさん、カーテンコールでも大いに客席を沸かせてくれました。

初めのカーテンコールのあとに...


この他にも、主役の二人を指差しながら感極まったとばかりに涙をぬぐったり、芸術監督のペトゥホフ氏が出ていらした時にはキャー信じられない!というゼスチャーをしてみせたり、その合間には客席に手を振ったりと、大いにサービス精神を発揮してくれました。
調べてみると,演じていたのはウラジミール・ドロヒンというかたで『白鳥の湖』では道化師を、『ロミオとジュリエット』ではマキューシオを演じていらっしゃるようです。狂言回し的な役がお得意なのかしらん。
↑リンク先の記事で"a new star"と呼ばれている所を見ると、これからの活躍が期待されるダンサーなのでございましょう。バレエ門外漢ののろは別に追っかけをするつもりはございませんけれども、極東の地から心密かに応援しておこうと思いました次第。

奈良観光

2009-11-12 | 美術
死ぬはずではなかった人たちが死んで行き、彼らの席にわたくしが居座って不当に生きているような気がいつもしております。

さておき

興福寺国宝特別公開2009 -お堂でみる阿修羅- に出かけて行ったのでございますよ。

お昼前に近鉄奈良駅の改札を出て、かの醜悪な「せんとくん」の看板を横目に奈良公園への坂道をてくてく上がってまいります。5分ほどで興福寺についてみたらば既に2時間待ちの行列が出来上がっておりました。待つのはやぶさかではございませんが、この様子では場内が「止まらずにお進みくださーい」状態であることは想像に難くはございません。わがまま者ののろはそんなコンディションで阿修羅像を拝むのは嫌でございましたので、特別拝観はあきらめて、かといってそのまま帰るのも癪なので、そこらをぶらつくことにいたしました。

構えも色どりも華やかな南円堂を見上げて


春日神社方向へぶらぶら上って行き、国立博物館前で正倉院展のために並んでいる行列を冷やかし、溝を飛び越そうとして滑ってこけ、道行く人に大丈夫かと気遣われ、ものすごく痛かったけれどもつとめて何でもない顔をして春日の森方面へと歩いてまいります。



1:しか。
ああ、帽子をかぶってぶらぶら歩いてデジカメで鹿の写真なんか撮って、まるっきり観光客みたいだ。まあ実際観光客なんですけれども。
2:春日の森を新薬師寺方面へと抜ける小径。なかなか鬱蒼としております。
3:三船敏郎が刀ぶん回しながら走り出て来そうな。
森を出ると静かな住宅地。奈良公園では夕方のムクドリのごとくわんさと群れていた修学旅行生も、ここまで来ると自由行動のグループをちらほら見かけるだけでございます。
4:民家の塀でツタが色づいておりました。傾いているのは水平をとるのを怠ったからではなく、坂道だからでございます。

新薬師寺はお堂のこぢんまりとした清楚な雰囲気や十二神将像の峻厳たるたたずまい、そして周辺のひなびた町並みと、歴史が醸成する魅力に恵まれた場所でございます。
しかしながらこのお寺には、そうした風情にそぐわぬ不粋な所がございます。
随分、ございます。
以下、独善を承知でぼやかせていただきます。
新薬師寺ファンの皆様、どうぞご寛恕のほどを。

まず「重要文化財 新薬師寺 ここ」というトタンの看板や婆娑羅大将の写真をフィーチャーした門前の立て看板。風情を損なってもとにかく観光客に入ってもらおうというなり振りかまわぬ感じが漂っていて、品がいいとは申せません。山門にはなぜか金銀一対の大きな蛙の置物が鎮座しておりまして、撫でられて頭部のメッキがすり減っている所を見るといささかの信心を集めてはいるようですが、古寺の趣を削ぐこと甚だしい。境内に雑誌『フォーカス』や新聞記事のコピーを貼り出しているのはいかにも俗っぽく、美しくございません。賛否両論のステンドグラスについてはワタクシは「賛」の方なのでございますが、「東方瑠璃光をお浴びください」などという書き付けは全くもって蛇足、余計なお世話でございます。それに暗い堂内にステンドグラスを通した光がさすという趣向でございますのに、その両脇に明々と火の灯った燭台を置いてしまっては効果半減ではございませんか。そして何より、相変わらず堂内でビデオを流しっぱなしになさっているのにはがっかりでございます。耳を閉じるわけにもまいりませんから、はなさんのナレーションが嫌でも、エンドレスで、聞こえてまいります。上映するなとは(1000歩譲って)申しません。しかしわざわざ十二神将像のうち最も緊張感みなぎり最も迫力に満ちた、間違いなく日本の仏像中屈指の傑作である伐折羅(バサラ)大将のすぐ側でやらんでもいいではございませんか。できることなら本堂以外の場所でやっていただけないものか。お茶やら湯豆腐やら頂ける所があるんでしょう。そちらでゆっくりお茶でも何でも飲みながら鑑賞していただいたら如何。

とまあ散々な感想を申しておきながら新薬師寺に足が向いたのは何故かと申しますと、やはりかの十二神将像が掛け値なしに素晴らしいからでございます。
小さな画像ですが新薬師寺のホームページで一体一体の姿が見られます。

初めてこちらの十二神将像にお目にかかった時には、伐折羅大将の総身に雷の満つるがごとき迫力にひたすら圧倒されたものでございます。今回訪れた際は、静のたたずまいを見せる摩虎羅(マコラ)大将像も心に残りました。伐折羅や迷企羅(メキラ)が火を噴かんばかりの形相をしているのに対し、摩虎羅は唇を引き結び、休めのポーズにも見える、力みを感じさせない立ち姿をしております。しかしきっと正面を見据える透徹の眼差し、四指をきっちり揃え緊張をはらんだ左手、そして胴体から少し離れて緩く湾曲する右腕は全体としてしんとした威厳を発しておりまして、神将の名にふさわしい造形でございます。他の神将像とは違ってすね当ての上からストンと垂れている下履きも、落ちついた印象をかもし出していて特徴的でございますね。

新薬師寺の十二神将像はよく「躍動感溢れる...」と形容されているようでございますが、のろはこの神将像にそれほど躍動感があるとは見えないのでございます。これを「躍動」と称したらラオコーン興福寺の金剛力士像が額に青筋立てて怒るこってしょう。
むしろ躍動を押さえに押さえた緊張感こそが、この神将たちの素晴らしさなのではございませんか。「躍動」として発散される寸前の激しい緊張をその全身にみなぎらせているからこそ、伐折羅大将のあの厳しさ、あの迫力があるのではないかと、のろは思います次第。

まあそんなことで
ばさらさんやまこらさんにいたく感動して、てくてくと帰路を辿って16:00過ぎに再び興福寺に戻ってまいりますと、依然としてチケット売り場前には「入館80分待ち」の看板が出ておりました。
ううむ興福寺さん、拝観は17:00まででしたよね。
というわけで、今回は阿修羅像とお会いすることは断念いたしました。なんでも、阿修羅さんが普段いらっしゃる国宝館は来年春に館内リニューアルを予定しているということでございます。おうちリフォームでございますね。国宝館は建物も展示方法も中途半端に無機質で、展示品の素晴らしさに釣り合わない投げやりな雰囲気がございましたので、改装は大歓迎でございます。

ジンバブエのこと

2009-11-05 | Weblog
昨日届いたAvaazからの署名呼びかけメール。ちょっと緊急でございます。

以下、メール本文(和訳文責:のろ)


Dear friends,

ジンバブエの独裁者ロバート・ムガベはかの国のダイヤモンド鉱山を強制収用し、私たちの結婚指輪やジュエリーから得る利益を暴力的な軍や警察の資金に注ぎ込んでいます。

今ナミビアで、世界のダイヤモンド取引を規制するための国際会議が開かれています。ムガベ大統領の辞任を求め、血塗られたダイヤモンドを世界市場に流通させることを阻止するべきか否かが話し合われているのです。

会議に参加している国々を説得するのに、残されている日数はあと二日しかありません。請願書に寄せた大量の署名で、ナミビアの会議に直接訴えかけようではありませんか。下のリンク先から署名に参加してください。そしてどうか、愛の贈り物が憎しみに資することを望まないであろう人々に、この署名のことをメールしてください。

BAN ZIMBABWE BLOOD DIAMONDS
(のろ注:署名の仕方はメール本文の下、*****
のあとにご紹介しています)

どのダイヤモンド産国も、ダイヤモンドの収益はそのブランド力(りょく)にかかっているということを知っています。広く知られつつある「血塗られたダイヤモンド」の真実が、ブランドに傷をつけるということも分かっています。こうした国々は、世界的な、かつ大量の署名が集まることで、世界のダイヤモンド購入者が彼らに何らかの行動を求めているということに気付くでしょう。

ジンバブエのダイヤモンドはもともと地元の住民たちによって採掘されていました。ところが数ヶ月前、ムガベによって暴力的に押収されました。その際に200人に上る市民が命を落としたのです。7月に行われた国際機関による調査は「国民に対する恐るべき暴力」があったと指摘しています。

血塗られたダイヤモンドを資金源とする軍隊は、これまでに何千人ものジンバブエ市民を殺害してきている上、もともと脆弱なかの国の政治的安定をさらにおぼつかないものにしています。ムガベにダイヤモンドからの収益を与え続ければ、新たな戦争の火種となりかねません。

人々が何を買い何をするかが、地球の反対側に暮らす人々の生活に影響しているということを、私たちは学びつつあります。結婚指輪は愛のもとに贈られ、愛のもとに身につけられるべきものです。ダイヤモンドの流通について話し合っている人たちに、この路線を守っていただこうではありませんか。

With hope,

Ricken, Alice, Benjamin, Graziela, Luis, Milena, Paul, Ben, Paula, Pascal and the whole of the Avaaz team

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(送られる文章)
ジンバブエのダイヤモンドはキンバリー・プロセス(のろ注:「紛争ダイヤ」などダイヤモンドの不正取引を阻止するための認証制度)を満たしていません。コンフリクト・フリー(のろ注:紛争や利権争いがからんでいない商品)でもありません。我々は会議参加国の皆様に強く要求します。ダイヤモンド産地マランゲから軍が撤退し、暴力が止み、権力乱用や虐待に対する調査が行われるまで、そしてキンバリー・プロセスの基準が満たされるまで、ジンバブエを国際取引に参加させるべきではありません。さもなければキンバリー・プロセスの信用は失墜し、ダイヤモンド業界そのものが打撃を受けるでしょう。
(以上)

水色のバーで出ております Sign the Petition 欄

以前にも署名したことがあるという方は一番上のAlready Avaaz member?の空欄にメールアドレスを入れてピンクのSEND:送信ボタンをクリックしてください。
初めての方はその下に、
Name:お名前
Email:メールアドレス
Cell/Mobile : 電話番号(必須ではありません)
Country:国籍(選択)
Postcode:郵便番号
を入力の上,右側のYour personal massage欄にあるピンク色の Send:送信ボタン をクリックすると参加できます。
右側に表示されている数字(*** have signed the petition)の***は現在の署名の総計です。
送信後、ご参加ありがとうページに移動します。
入力したアドレスにはご署名ありがとうメールが届きます。
その後も署名を呼びかけるメールが随時届きます。
それはちょっと...という方は、送られて来たメール本文の一番下にある go here to unsubscribe.(青字)という所をクリックして、移動先の空欄にメールアドレスを入力→SENDをクリックすれば登録は抹消されます。
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参照
ジンバブエの軍と警察、子供にダイヤモンド鉱山での労働を強制