のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『パンズ・ラビリンス』1

2007-11-08 | 映画
もう11月だというのにまだ生きておりますよ。
まったく何なんだか。

ところで

ワタクシは泥田坊について誤った認識を持っていたようでございます。

泥田坊といえば、泥の中から痩せこけた上半身を突き出して「田んぼをかえせ~ 田んぼをかえせ~」と叫ぶ妖怪で
顔には目がなくて、その代わりに両手のひらに目玉がついている奴、と思っておりましたが
手のひらに目があるのは泥田坊ではなく、手の目という妖怪でございました。
この誤りに気付いたきっかけは、映画『パンズ・ラビリンス』に登場していたこのひとでございます。



この姿を見た時、のろは心中で「ああっ泥田坊!」と叫んだのでございますが
しかし後で調べてみました所、むしろこのひとは「手の目」であることが判明したという次第。

と いうわけで
『パンズ・ラビリンス』を観てまいりました。

ストーリーを大ざっぱに申しますと
舞台は独裁者フランコ政権下のスペイン。
内線で父親を亡くした読書好きの少女オフェリアは、母親とともに、母の再婚相手であるヴィダル大尉のもとへ赴きます。
山深い陣営で、フランコ将軍に対するレジスタンスの掃討作戦を指揮しているヴィダル大尉は
自己中心的で冷酷な人物で,オフェリアには全く愛情を示しません。
その上、身重の体で無理な旅をした母親の容態も思わしくなく、オフェリアは暗澹たる思いにとらわれます。

しかし、そこで彼女は大地の神であるパンと出会います。
パンは、オフェリアが、実は遥か昔に死んだ地底の王女の生まれ変わりであるということ、
そして彼女の故郷、悩みや苦しみの存在しない地底の王国に戻るためには
3つの試練を経なければならないことを告げ、彼女に1冊の不思議な本を手渡します。---------

と、こう書きますと無害なファンタジーのような感じがいたしますが
予想以上に凄惨な描写の多い作品でございました。
視覚的にも、心理的にも。
R-12のダークファンタジーということで、それなりに心構えはしていたのでございますが
残酷さに目をつぶりたくなる場面が何度もございました。

オフェリアが体験する幻想世界の描き方はまことに素晴らしく
不思議な本や金の鍵や魔法のチョークなど、
ファンタジー好きのツボを刺激する小道具使いも心憎い。
全編を通じて流れる、鎮魂歌のような、美しく物悲しい子守唄のメロディが耳に心に残ります。

しかしファンタジーの世界においても、また「現実」の世界においても
オフェリアは悪や暴力や傷みに、容赦なく直面させられるのでございます。

この作品を「ファンタジーの中に幸せを求めた無垢な少女のお話」として観ることもできましょうが
ワタクシはむしろ、悪と暴力がはびこる「現実」の世界に生きる無力なオフェリアが
ファンタジーを経ることによって、そうした悪や暴力に加担しない心的な強さを育んだお話、と観ました。

本作で描かれている悪については、また次回に語らせていただきたく。


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