のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『おーい、でてこーい』他

2013-11-21 | 
すみません。
一応まだ生きているのです。残念ながら。
世の中が色々と酷すぎて、ブログを更新する気にもならないでいるってぇだけです。
そりゃもうこんな感じ。

Ugh Whatever. - Cheezburger

だー。

ことのついでにお気に入り動画をご紹介しておきましょう。
困った時のyoutube頼み。

おーいでてこーい


星新一は10代の頃ずいぶん読みましたが、一番印象深かった作品をひとつ挙げるとすれば、この『おーい、でてこーい』でございます。
その他に今も強く心に残っている作品をざっと挙げますと、以下の通りになります。

『鏡』
ある男が13日の金曜日に、合わせ鏡を使って小さな悪魔を捕まえる。
悪魔は非力で何もできないが、いくら虐待しても死なない。
それをいいことに、男も、男の妻も、日常の鬱憤ばらしに捕まえた悪魔を虐待し続けるが…。

『最後の地球人』
カップルの間に一人しか子供が生まれなくなった未来。
原因は不明のまま、人類は粛々と滅亡に近づいて行く。
最後に残った2人の男女はアダムとイヴのように暮らし、やがて人類最後の子供を授かり…。

『囚人』
何の罪も犯していないのに収監されている、一人の「囚人」。
塀の外から毎日、彼を狙って、飢えた民衆が押し寄せて来る。
人口爆発によって食糧難が続く世界の救世主ともなりうる彼を狙って…。

『生活維持省』
戦争もなく、渋滞もなく、人口密集もなく、何もかも美しく整った世界。
主人公は今日も相棒と共に仕事に乗り出す。
やがて無邪気な女の子を狙ってレーザー銃を構え…。

『凍った時間』
仕事中の事故のせいで、脳以外はサイボーグの身となった主人公ムント。
彼の身体に奇異のまなざしを向ける社会を避けて、地下でひきこもり生活を続けていた。
ある日異変に気づいて地上に出てみると…。

『冬の蝶』
全てが電化された未来都市で、猿をペットに快適な生活を営む夫婦。
真冬のある日、突然大停電が起き、暖房も衣料も温かい飲み物も供給されなくなる。
人々は寒さの中でなすすべもなく息絶えていき、翌朝…。

などなど。
こう振り返ってみるとディストピアものが多いなあ。
昔は、ディストピアってのはお話の中だけのものでございました。少なくとも、そうであってほしいと思っておりました。ところが気がつけばオーウェルの『1984』そのままの世界を生きようとしているではございませんか。なんじゃあこりゃあ。


↓最近よく読んでいるブログさん。正直、タイトルとトップの絵には尻込みしましたが、内容はごく真面目です。

村野瀬玲奈の秘書課広報室

最後にこれも星新一作品から、せめてもの慰めに、ほっこりするものをひとつ。
アニメーションも独特で、なかなかの味わいです。

星新一 ショートショート 海





『竹内栖鳳展(前期)』

2013-11-09 | 展覧会
辺見庸がうちにやって来てトイレの貯水タンクをなおしてくれる、というわりとわけの分からない夢を見ました。

【時流自流】作家・辺見庸さん「現在は戦時」 -- 神奈川新聞社

それはさておき

どうも身体の具合がかんばしくないわい、と思いながらも
京都市美術館で開催中の竹内栖鳳展へ行ってまいりました。

竹内栖鳳展 近代日本画の巨人/2013年9月3日(火)~10月14日(月・祝):東京国立近代美術館/2013年10月22日(火)~12月1日(日):京都市美術館

スケッチや下絵がもっと見られるかと期待していたのですが、そういうのは別の展示室で開催中の京都市美術館 > 展覧会案内 > 京都市美術館開館80周年記念展 下絵を読み解く ~ 竹内栖鳳の下絵と素描で展示中のようでございます。
こちらには後期展示の際に寄ることにして、いざやと会場へ入って行きますと、平日にも関わらずけっこうな人出でございました。

さもありなん。
可愛らしく心なごむ小品から、その構成力と描写の巧みさに圧倒される大作、そして誰もが一度は目にしたことがあるであろう有名作品まで、各種取り揃えのたいへん充実した内容で、美術好きな人ならずとも見ておいて損はなし、そして美術好きならば行かずには死なれまいというほどのものでございました。
ただ展示作品の量的な充実度ゆえのことではございますが、展示空間に余裕が鳴く、特に後半はややせせこましい見せ方にになっていたと思います。屏風などの大きな作品も含めてあれだけの数を、あの限られたスペースに並べるために、京都市美術館の皆様が相当骨を折ったであろうことは想像に難くはございません。よって文句を言うつもりはないのですが、作品ひとつひとつが素晴らしいだけに、窮屈そうな展示はなんとも勿体ないような気はいたしました。

さて市美や近美のコレクション展示でも、栖鳳作品がひとつでも出ているとたちまち嬉しくなってしまうのろさんではあります。初対面時の衝撃と感動が今も鮮やかな『雄風』(←リンク先一番下の絵)や『驟雨一過』(←リンク上から3番目の絵)、そして見るたびにほっこりする、とはいえ筆さばきの巧みさや鋭く徹底した観察眼にうならずにはいられない、『若き家鴨』『清閑』といった思い入れのある作品にも会うことができて、そりゃもうニコニコでございます。

また思い入れがあり、かつ初対面の作品というのもございました。
即ち栖鳳の代表作のひとつ『鯖』でございます。



高校生の折、美術の副教材の日本近代絵画のページに、福田平八郎の『波』と並んで載っていたこの作品を見て、ワタクシはそりゃもう大感動したわけでございます。あんまり素晴らしいので、サバという魚自体が好きになったくらいでございます。まあそれ以前にも別に嫌いだったわけではありませんけれども。
ブリッと引き締まったいかにも新鮮そうな姿を、最小限の筆致で描き出す技量、ハッとするほど鮮烈な青と絶妙なにじみ、誤摩化しのない籠の描写など、この絵を構成する全てが、高校生のワタクシにはほとんど奇跡のように思われたのでございました。
むろん実物のサバはここまで鮮やかに青くはありませんけれども、それがいったい何でありましょう。会場では多くの人が、この絵の前に立ち止まっては「うまそう」とつぶやいておりました。

そう、だって、サバでございますよ。
そのイメージは美的ななにごとかよりもむしろ「食」に直結している、とても卑近なモチーフでございます。例えば栖鳳がよく描いたライオンのように立派なイメージもありませんし、これまたよく絵にしたスズメや犬猫といった小動物のように可愛らしいわけでもございません。繊細とか風雅とか雄大さといった形容ともほぼ無縁でございます。そのサバを(しかも何の象徴性・物語性を持たせることもなく)ただただサバとして描いて、ここまでものすごい作品ができるというのも、冗談抜きで衝撃的なことでございました。

というわけで長年の憧れであったこの作品と、今回初めて実物にお目にかかれて、まことに感慨深いものがございました。これで体調が万全ならもっとよかったのですが。
幸いこの作品は11月24日まで展示されているとのことですから、後期展示に行った折にもう一度まみえることもできましょう。
素描展もとっといてあるし、いやあ後期も楽しみだ、とわくわくした気分で家路についた…

のでございましたが。
帰宅後、耳-首-顎にかけてリンパ腺がどわわっと腫れて、普段の貧乏顔が嘘のようにおたふく状に膨れ上がり、顔・首・手・腕には痒いけれどもアトピーともヘルペスとも明らかに違う正体不明の発疹がぶわわっと吹き出し、あまりのしんどさに仕事を2日間休まねばなりませんでした。
さてははしかか風疹かと疑い(もしそうならもう何日か休めるかしらん、とちょっぴり期待しつつ)病院へ行ったものの、熱がないのでそら違う、とそこはあっさり否定され、とりあえず薬を貰って帰って来ました。おかげさまで大分楽にはなったのですが、まだ病原が身体のあちこちを移動しているようで、ここかと見ればまたあちら、と渚のシンドバッド状態で腫れと発疹が出ます。痒さのあまり夜中に目が覚めるというのも、アトピーが一番酷かった高校の時以来のことでございます。
何なんでしょうか。高校時代リバイバル月間なんでございましょうか。
だったら「キッチュのバーチャルプレイゾーン」がネットラジオで復活、とか、橋爪功の朗読による吉川英治『三国志』の再放送とか、レニングラード・カウボーイズ来日とか、木城ゆきとが無印『銃夢』の頃のような濃密な作風に戻るとか、そういうのがあったら嬉しいんですが。

あと消費税も3%に戻るといいなあ。…..



当ブログにおける竹内栖鳳関連の記事は↓こちら。もっとあるかと思ったのですが、二つだけでした。
のろや 竹内栖鳳