のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

よかったよかった

2010-06-24 | Weblog
ドイツがなんとか1次リーグを通過しました。いや、よかったよかった。ハラハラいたしましたよ。
しかし今回のろはドイツとイングランドとアルゼンチンを応援しているというのに



いきなりこのカード。

まあ、こうなってしまった以上しかたがございません。本命のドイツを一生懸命応援しますとも。
とりあえず本日はじゃがいもと(第三の)ビールで祝杯なのでございます。

『ドゥシャン・カーライ展』

2010-06-19 | 展覧会
クローゼえええぇ



それはさておき

滋賀県立近代美術館で開催中の『ドゥシャン・カーライの超絶絵本とブラチスラヴァの作家たちち』へ行ってまいりました。
東欧絵本作家の第一人者、ドゥシャン・カーライ。例年の国際絵本原画展でもおなじみでございますね。本展は原画初公開のものも含めほとんどがカーライ作品で構成されているというファンには感涙ものの展覧会で、たいへん見ごたえがございました。

奥さんに誕生日プレゼントとして贈ったという、外にも内にも幻想的なイラストが描かれた化粧品箱や、氏の版画作品を挿絵とした限定出版本といった珍しいものも展示されており、絵本作家としての側面しか知らなかったのろには嬉しい驚きでございました。
と言っても、もちろんメインの展示は絵本原画でございまして、これはもう質も量も圧巻でございます。浮遊感を伴う幻想的な色使いと「詰め込み式」とでも呼びたい独特の空間表現、そして細密描写が相まって、画面の中にひとつのアナザーワールドを作りあげております。それが、お客さん、驚きの総勢250点ですぜ。
ほとんどの作品はグアッシュ(不透明水彩)と紙、というごく月並みな画材で描かれておりまして、意外な感じがいたします。だってこの、鮮やかで、しかも深みのある、この世ならぬ色彩でございますよ。何か特別なものを使って描かれているに違いないと思うではございませんか。


「船乗りシンドバッド」を題材にしたアニメーションの企画もあったらしく、その背景画やセル画も展示されておりました。媒体が異なるというだけでこんなにも印象が変わるものか、と、これまた面白いものでございました。デザインは確かにカーライそのものでありながら、マットな塗りや黒一色のはっきりした輪郭線の絵は絵本原画とはまったく違う雰囲気でございます。むしろ仏コミックアートの巨匠メビウスっぽい。しかしこの企画、プロジェクトが壮大すぎて実現しなかったとのこと。残念至極でございます。

また魚やキノコを博物学的な精密さで描いた切手用イラストなんてものもあり、小さいながらこれまた興味深いものでございます。そのモノクロの、しかし生き生きとしたイラストレーションを見ますと、絵本挿絵に見られるかの幻想の王国は、生物のかたちに対する緻密な観察眼と描写力という地盤の上にこそ築かれているのだということがよくわかります。想像力の羽ばたきを紙の上に定着させる力、かたちや遠近法を自由に崩してデフォルメする技量。そうしたものの根底には、たゆまぬ技術的研鑽と対象に向かう謙虚なまなざしがあるのでございます。

本展で唯一の不満は、図録の絵を縮小しすぎであること。点数が多いのでいたしかたのないことだったのかもしれませんが、ただでさえ細かいカーライの絵を、一部とはいえ花札サイズにまで縮めてしまうのはいかがなものか。結局いつもの「実物を見たあとでは買う気にならんシンドローム」に見舞われて購入を見送りました。何年か前に京都で開催された月岡芳年展の図録も、展覧会自体は素晴らしかったのに、図録は縮小しまくりなのにげんなりして買わずじまい。少々高くなっても、かさばっても、いいものが買いたい、と思うのは決してワタクシだけではないと思うんでございますがねえ。





個展終了

2010-06-15 | 展覧会
個展「豆本生活」は12日をもって無事終了いたしました。
ご来場いただいた皆様、まことにありがとうございました。

会場風景。



いただいたお花。



仕事があるのをいいことに、会期中ほぼ全日ほったらかし状態。ギャラリーさんにはいろいろお世話になりました。

12日に終ったのになにゆえ報告が今日なのかと申しますと、12日の夜はアルゼンチンとイングランドを応援するのに忙しく、13日と14日は『暗黒街のハリー』を読むのに忙しくしていたからでございます。いやあ、面白かった。冷徹、凶悪、頭脳明晰、大胆不敵でナイーヴなハリー・スタークス。「拷問好きのハリー」。んもう最高ざんすね。さて原作を読んだところで、晴れて『The Long Firm』のDVDに取りかかるのでございます。輸入盤なので日本語字幕がないのですが、聴覚障害者用の英語字幕と電子辞書を頼りに、がんばって観賞しますとも。椅子に縛り付けた哀れな裏切り者をあつあつの火掻き棒で拷問するマーク・ストロングが見られるんですもの。ああ楽しみだ。

イスラエルのこと

2010-06-07 | Weblog
メールがなぜかスパム認定されて迷惑フォルダに直行していたことや、忙しさという態のいい口実を得た怠惰のせいで、ここしばらくAvaazからの呼びかけをご紹介できずにおりました。以下のメールはもう2日前に届いたものでございますけれども、まだ署名には参加できるようですので、遅ればせながらご紹介させていただきます。
この度のイスラエルによる援助船攻撃についてでございます。この国家テロに対して国際的非難が高まる中、例によってアメリカは「まあいいじゃないのイスラエルが自分で調査すれば」とぬけぬけおっしゃって事実上容認、追従する日本もだんまりを決め込んでおります。国際社会との関係が冷えようとも、自国民との関係が冷えようとも、アメリカとの関係だけはぬくめておこうとする日本政府のポリシーをワタクシはいまいち解せずにおります。

以下、メール本文。転載自由です。(訳責:のろ)

Dear friends,
ガザへの救援物資を積んだ小型船団をイスラエルが急襲し、民間人を死傷させた事件は、世界に衝撃を与えました。

他の国々同様、イスラエルには自衛権があります。しかし今回の非道かつ恥ずべき行為は、ガザ封鎖という非道かつ恥ずべき政策を守るための武力行使に他なりません。封鎖のせいでガザでは、全世帯の3分の2が明日の食事にも困る状況に追い込まれているのです。

国連、EU、その他ほとんどの国家や国際組織は、ガザ封鎖を解除するよう求めています。今回の援助船襲撃に対しては、国連人権理事会は調査団の派遣を計画していますが、各々の国民からの大きなプレッシャーがないかぎり、各国のリーダーたちは言葉での非難のみに終始することでしょう。今まで何度もそうしてきたように。

彼らが無視できないほど大きな声を挙げて、今回の襲撃に対する国際的調査と責任の追及、そしてガザ封鎖の即時解除を求めまようではありませんか。下のリンク先から、署名にご参加ください。

Gaza: investigate the raid, end the blockade

(のろ注:署名のしかた、請願のメッセージなどは当記事の*****以下をご覧下さい)

今回は24時間で20万を超える皆様から署名をいただき、それらは第一弾としてすでに国連と各国の首脳らに届けられました。さらに大きな声として、50万を数える署名を届けましょう。単なる言葉や記者会見だけでは不十分であり、人々はこの問題を注視し、かつ行動をもとめている事、状況が進展するか否かはは私たちにかかっているという事を、彼らにはっきりと示すために。

EUがイスラエルとの通商関係を拡大させるかどうか、オバマ政権がイスラエルに対する来年度の軍事支援予算をどうするか、そしてトルコやエジプトといった隣国がこれからの外交政策をどう踏み出すか。こうした問題が目前にある今この時にこそ、世界中から大きな声を上げましょう。今回の襲撃について、真実と責任が追求されねばなりません。イスラエルは国際法を遵守し、ガザ封鎖を解除するべきです。

世界中のほとんどの人が、いまだに同じ夢を共有してます。自由で独立したふたつの国、イスラエルとパレスチナが、隣り合って生きていくという夢です。しかし封鎖と、かつては防衛のためであったはずの暴力が、その夢をむしばんでいます。イスラエルのあるコラムニストが今日の新聞に書いているように、「私たちはもはやイスラエルを守っているのではない。ガザ封鎖という状態を守っているのだ。封鎖はイスラエルの”ベトナム”となりつつある」

イスラエルに住む多くの和平推進活動家たちは、今回の襲撃とガザ封鎖を非難し、世界中で行われたのと同様に、ハイファやテルアビブ、イスラエルでデモを行いました。どちらが先に手を出したにせよ(イスラエル軍は先制攻撃はしていないと主張しています)、イスラエルの首脳たちは、公海上にあってガザへの医療・支援物資を運んでいた船にヘリコプターと武装した兵士を送り込んで襲撃させ、その結果、数名の命が失われたのです。

犠牲になった人々の命は、戻ってはきません。けれども、この暗い悲しみのときを転換点にすることができるかもしれません。私たちが公正さと、平和というゆるぎない夢の実現を求めて、声を上げさえすれば。

With hope,

Ricken, Alice, Raluca, Paul, Iain, Graziela and the rest of the Avaaz team



*****

送られるメッセージ
各国政府および各国際組織への請願書
我々は今回の援助船襲撃に対する、即時の国際調査実施および責任追及、そしてガザ封鎖の解除を求めます。

(以上)

リンク先画面右側に出ておりますピンク色のバーと数字が、現在署名に参加している人数です。のろがこの記事を書いている時点で、45万6495人が参加しています。

署名のしかた
水色のバーで出ております Sign the Petition 欄

以前にも署名したことがあるという方は一番上のAlready Avaaz member?の空欄にメールアドレスを入れてピンクのSEND:送信ボタンをクリックしてください。
初めての方はその下に、
Name:お名前
Email:メールアドレス
Cell/Mobile : 電話番号(必須ではありません)
Country:国籍(選択)
Postcode:郵便番号
を入力の上,右側のYour personal massage欄にあるピンク色の Send:送信ボタン をクリックすると参加できます。

入力したアドレスにはご署名ありがとうメールが届きます。
その後も署名を呼びかけるメールが随時届きます。
それはちょっと...という方は、送られて来たメール本文の一番下にある go here to unsubscribe.(青字)という所をクリックして、移動先の空欄にメールアドレスを入力→SENDをクリックすれば登録は抹消されます。

カフカ忌など

2010-06-03 | 
本日は
カフカの命日でございます。

パレスチナへの移住を夢見ながらも結局果たせずに亡くなったカフカ。現在かの地でなされていることを知ったら、憤りと羞恥のあまり、寝苦しい夢など待たずぽっくりと虫になってしまうかもしれません。

さておき。
先日広報させていただきました個展でございますが、去年出品したものに加えて、新作3点を出せる運びとなりました。



左端の黒い本はカフカの短編「夢」。ゴム版一色刷りで製作しました。
カフカを社会的に読むつもりが毛頭ないワタクシにとって、カフカ作品の多くは「自分からさっさといなくなるべきなのにその事に気付きもせずのうのうとこの世に居座り続けて周りの皆様に我慢してもらっている甚だ察しの悪い野郎の話」というまことに身につまされる物語であり、とりわけこの短編にはそうした要素が、文庫本にしてほんの3ページほどの中に凝縮されておりますので、昔からたいそう好きな作品なのでございました。



自らが掘った墓穴に、立派な墓石つきで埋葬されるという幸福な夢を見ているヨーゼフ・K。
最後のページの絵は死んだフリをしているブラックウッド卿の顔を参考にさせていただきました。
どうでもいいですね、はい。

ときに準備というものは時間があればあるだけ費やしてしまうもので、結局搬入が済むまでは普段の生活に戻れそうにないのでございました。

追悼デニス・ホッパー

2010-06-01 | 映画
『CUBE』や『SAW』のような密室殺人ゲームに閉じ込められ、脱出の手段が見つからぬまま周りの人がひとりまたひとりと死んで行き、息を殺してああどうすればいいのかと焦っている所へモーガン・フリーマンが助けにやってきて、みんなを解放した上にゲームの卑劣なからくりを解き明かしてくれる
という夢を見ました。

まあそれはそれとして、夜が明けるとデニス・ホッパーが亡くなっておりました。

のろは「余命わずか」と平気で言い立てる報道の無神経さにはむかっ腹を立てながらも、ハリウッドの「ウォーク・オブ・フェイム」入りを祝う式典で姿を見せたこの不良オヤジの、別人のようなやつれぶりにぎょっとして「確かにこれは...」と思ってしまった覚えがございます。
振り返ればあれからたった2カ月、本当にわずかな時間で鬼籍に入っておしまいんなりました。74歳という年齢は決して早世とは申せませんけれども、この年齢だからこそできる役がたくさんあったはずと思うと、惜しいの一言でございます。

レンタル店の名作コーナーにタイトルを連ねる作品から「スペース・トラッカー」や「魔界世紀ハリウッド」のようなB級バカ映画(いや、ワタクシは好きですが)まで幅広い作品に出演していらしたホッパー親爺、中でも代表作といったらやはり「イージー・ライダー」と「ブルー・ベルベット」になりましょうけれど、ワタクシが観た中で最も強烈な印象を受けたのは「パリス・トラウト」でございます。鼻持ちならない人種差別主義者で、妻を精神的にも肉体的にも虐待し、はては猜疑心をつのらせて次第に狂気へと近づいていく男、パリス・トラウトを演じたホッパー親爺、まことに鬼気迫るものがございました。ついでに申せばもの静かで理知的な弁護士エド・ハリスもまことに結構でございました。

Paris Trout (1991)


さても、デニス・ホッパー。
のろは映画の中では変人か頑固者(あるいはその両方)の姿しか見た事がございませんでしたし、映画の外では、これまたあんまり穏やかならざる人らしいことを聞き知っておりました。だから、というのも何でございますが、氏に写真家や画家という側面のあることを知った時には驚いたものでございました。
しかもその作品は単に趣味や手なぐさみというレベルではなく、実にいいのでございますよ。
↓こちらで少し見ることができます。おおむね60年代の作品のようです。

Dennis Hopper on artnet


いいでしょう。
だけどこんな写真を撮った人も、もういなくなってしまいました。
チャーリー・パーカー好きの殺し屋も、宇宙のトラック野郎もいなくなってしまいました。
さようなら。
安らかなれかし、魂なるものがあるならば。