読書な日々

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『銀の橋を渡る』

2021年05月02日 | 作家マ行
松本薫『銀の橋を渡る』(2021年、今井出版)

待望の、松本薫さんの新刊本だ。

米子の中海を舞台にした小説。錦海テレビというケーブルテレビで働く藤堂麻矢が主人公。

ローカルな錦海テレビの新米社員として、社が進める中海の復活事業の中心となって奮闘する麻矢と米子の人々、そして戦後すぐに駐在したイギリス軍の将校であったマイヤーズと麻矢の祖母である光子の恋愛を絡まってくる。

私は1970年代初めに米子東高校に入学して、すぐにボート部に入ったが、その頃にはすでに埋め立てがかなり進んでおり、埋め立て中の安来側の水路で練習をしたり、この小説で観月楼があったという萱島に上陸して遊んだりしていたが、やはりすでに水質はものすごく悪くなっていて、とても泳げるような状態ではなかった。

いまは湊山公園と呼ばれているが、かつては錦公園と言っていた場所も昔の状態をよく覚えている。鳥取大学医学部付属病院(通称、医大)があって、加茂川を渡ると、艇庫が並んでいる。東高校、鳥大医学部、南高校、工業高校などの艇庫だが、ほぼ部員が来ていたのは東高校と工業高校だけだった。

私が入部したころは、そこまでは干拓が来ていなくて、艇庫の前はすぐに海だった。四人がかりでナックル艇を運び出し、水に浮かべて、オールを持って艇に乗って漕ぎ出す。

たしか三年になった頃にはすでに埋め立てられて、しばらくナックル艇をえっちらおっちら運ばねばならなくなっていた。私たちが高校生の頃がちょうど埋め立てが急ピッチで進んでいた時期だったのだろう。

大学生になってから何度か錦公園に行ったころがあるが、すでに今と同じコンクリート護岸になっていた。しかしこの小説に描かれているような、中海をきれいにして、また泳げるようにしようというような運動があったことは知らなかった。

この小説が始まるのは1999年の春ということだから、それから20数年もあとのことなので、それも当然のことかもしれない。コロナでまったく帰省できなくなったのが残念だが、とにかくコロナが終息したら、また錦公園やその裏にある米子城跡に登ってみたい。

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松本薫さんの過去の小説はこちら
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こちらは米子城跡を紹介するYoutubeだが、中海もいい感じで見ることができる。


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