読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

2016年に読んだ本ベスト5

2016年12月31日 | 日々の雑感
2016年に読んだ本ベスト5

年々読書数が減っており、ベスト5を選ぶのも気が引けるのだが、今年はとくに興味深いものがあったので、難なく選ぶことができた。たぶん来年からはまた通勤電車のなかで、仕事以外のものが読めるようになると思うので、読書数も増えてくると期待している。

1.立花隆『武満徹・音楽創造への旅』(文藝春秋、2016)
武満徹の音楽がどうやって創造されてきたのか、出生から戦争経験、音楽教育も受けずに始めた作曲、肺結核で生死の境をさまよったこと、そして研ぎ澄まされた音への感覚など、実際に武満徹の音楽が好きでたくさん聴いてきたという立花隆によるこの評伝は、音楽の素人にも分かるように噛み砕いて説明している武満徹の声をできるだけ多く引用し、また素人である立花隆自身が理解している言葉で語ることによって、じつに読みやすいものになっている。

2.三野博司『カミュを読む 評伝と全作品』(大修館書店、2016年)
2013年はカミュの生誕100年にあたっていて、その記念に出版された本。日本でカミュ研究の第一人者として知られる人の本だけあって、興味深い。それ以上に、私としては、この著者が2015年3月に奈良女子大学を定年退職する直前に、著者の出身大学である京都大学の仏文学会で特別講演を行ったものを収録した「アルベール・カミュとともに」という講演のほうが感銘を受けた。著者のカミュとの関わりが何の衒いもなく書かれており、この著者の幸運な研究生活と著者の朴訥とした人柄が伝わってくる、よい講演である。
こちらをクリック

3.ミシェル・ウェルベック『服従』(河出書房新社、2015年)
来年2017年4月にはフランス大統領選挙がある。現在の大統領である社会党のオランドが出馬を断念し、共和党のジョスパン、社会党のバレス、国民戦線のル・ペンの三つ巴の戦いになりそうである。今年のアメリカ大統領選挙の結果やヨーロッパ諸国の情勢は排外主義的傾向に国民の支持が傾きつつあることを示しており、2022年のフランス大統領選挙で排外主義を訴えるル・ペンとイスラム主義者の候補者の対決になって、イスラム主義者が大統領に当選するという、この小説の設定もあながち夢想と切り捨てることができない様相を呈している。本当にウェルベックというのは面白い作家だ。目が離せない。

4.前田洋平『国立がんセンターでなぜガンは治らない?」(文春新書、2015年)
最近のいろんな報道を見ていると、がん治療は新しいステージに入ったことが分かる。例えばオブジーボのように、人間がもともと持っている、ガン細胞によって弱体化扠せられている免疫細胞へのガンによる作用をやめさせてこの免疫力を活性化させることによってがん細胞を弱化させるという治療がある。またこの間NHKでやっていた番組によると、個々の患者に固有の遺伝子を調べることで、確実に効く薬を処方することで、ほとんど副作用のないがん治療ができるようにもなっているらしい。そうした方法を国立がんセンターが中心になって地方の医療機関で先進的に検証していくことをしていると報道していた。つまりこの本で指摘されていた国立がんセンターの弱点が克服されたのかなと思ったのだが、どうなんだろうか。いずれにしても、「神の手」とか言って特定の技量をもった医者にしかできないという治療を普遍化するような行政が進んでいくことを願っている。

5.千葉優子『箏を友として評伝宮城道雄』(アルテスパブリッシング、2015年)
『春の海』で知られる宮城道雄の生涯を明らかにした評伝で、宮城道雄そのものが非常に稀有な人生を送った人として興味深いだけでなく、彼の作曲が明治から大正時代において位置づけられ、つねに宮城道雄の生きた時代の背景を解き明かしている点も、この著書の価値を高めている。同じ著者が書いた『ドレミを選んだ日本人』(音楽之友社、2007年)も興味深い


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大そうじ

2016年12月29日 | 日々の雑感
大そうじ

大そうじ。大でもないけど、年末にやるそうじは、決まって大そうじと言う。大そうじなんかをするという習慣は、日本海側の、しかも雪深い地方では、ないと思う。実際、鳥取県の山奥の、私の実家では、年末に大そうじなんかしなかった。年によって多い少ないはあるにしても、たいていすでに雪が積もっていて、そうじどころではない。

年末に大そうじなんかするのは、冬には、風が冷たいけれども、天気がいいという太平洋側の典型的な冬の気候に住んでいる人たちが作り出した習慣だろう。

そういうわけで、私には年末に大そうじをするという習慣がなかったし、いまだにこの寒いのに外に出て、水をジャバジャバ使って、そうじをするなんて、嫌で仕方がないのだが、決して太平洋側の出身というわけでもないのに、大そうじをしたがる上さんが一生懸命にやっているので、一人で好き勝手をしているわけにもいかず、毎年のように、年末に大そうじをすることになっている。

今日は天気がよかったし、それほど寒くもなかったので、大そうじ日和だった。体を動かしていると、体も暖まってきて、ユニクロのヒートテックのインナー一枚でも平気だった。(あくまでの家の中ではの話だが。)

ベランダの網戸、窓ガラス、窓の枠を水をかけて雑巾できれいに拭く、リビング、和室、トイレ、洗面室、廊下などの壁を掃除機で一通りきれいにして、普段は放ってある高いところのホコリを拭く、部屋のドアなどを雑巾がけ、などなどで午前中全部と午後4時位までかかった。最後に、玄関周りをきれいに雑巾がけ。

ついでにいつも気になっていた壁紙が反り返って剥がれそうになっているところに木工ボンドを使って貼り付けた。木工ボンドってすぐには付かないので、上手くいくか不安だったが、けっこう上手くいった。これならもっと早くにするんだった。

やれやれ、上さんに淹れてもらったコーヒーを飲みながら、カーペンターズのお気に入りのCDを聞きながら、これを書いている。

まぁ上さんが喜んでくれるのなら、大そうじもいいか。



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遠方より友来る

2016年12月20日 | 日々の雑感
遠方より友来る

浜松市に住んでいる友人が高野山の町石道を登山するために来た帰りに、私の最寄り駅に寄ってくれたので、1時間ほど喫茶店で話をした。(左の写真はあべのハルカスの庭園から)

1200年前に空海が初めて高野山を登ったのが11月27日だとかで、それを新暦にすると12月17日になるらしい。それでこの友人が師と仰ぐ先生が空海の研究をしており、その関係でここ10年ほど12月17日に九度山から町石道を登山している。

この友人もまだ仕事があるので、昨年は都合が悪かったようで、二年ぶりらしい。今年はちょうど土曜日で、週初めはなんとか休みが取れたので、一緒に登山した大阪の人が岩湧山を紹介したいというので、月曜日に一緒に上がって来たらしい。土曜日に20Kmくらい登山し、一日おいて月曜日にまた岩湧山に登山してくるとはたいした体力だ。

この友人が浜松市でマンツーマンでフランス語を教える教室を開いたという話をしてくれた。どうも浜松市というのは河合楽器とかヤマハ楽器などがあるせいか、シャンソンなんかが盛んで、毎年シャンソンコンクールが行われている。そういうこともあってか、人口80万人くらいの町だが、そこそこの生徒さんが来てくれているというのだ。

普段は大学で教えいている人なので、教え方は分かっているし、リスクを出さないために、教室を借り切って人クラス5人から10人程度のクラスを運営する方式ではない。これだと生徒が集まらなかった場合でも決まった出費が必要になるが、マンツーマン方式なら、生徒の自宅やこの人の自宅などで授業ができるので、そういったリスクがないからだ。それにマンツーマンだから、生徒の希望と能力にあった教え方ができるという。

まぁまだこの9月に初めたばかりだから、どうなるのか分からないが、それなりに本人も満足の様子だった。

この人、以前は専門の研究会が関西であった時によく私の家に泊まっていたのだが、最近はその研究会には来ていないため、また私が東京に行くこともめったにないので、数年ぶりだったが、いろいろな話ができて楽しかった。

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『妻木晩田遺跡』

2016年12月10日 | 人文科学系
濵田竜彦『妻木晩田遺跡』(新泉社、2016)

私の故郷の米子のすぐ近くにある妻木晩田遺跡のことを書いた本で、妻木晩田遺跡のことは少し前から聞き知っていたのだが、具体的に本などを読んでみたのはこれが初めてだ。

シリーズ「遺跡を学ぶ」というものの一つで、しかも「111」という番号が付いているということは、全国の遺跡を網羅するようなシリーズの一環なのだろう。ということは専門家ではないにしても、古代史とか考古学を勉強してみようという学生や愛好家向けの本なのかもしれない。

とにかく遺跡に出土するものや古墳や時代の漢字が難しくて、読みにくいのなんのって、とにかく最後まで読めたのは、自分の地元の遺跡だからで、これがよその地域のだったら、すぐに放り出していただろう。

だから誰をターゲットにしたシリーズなのかということを先に問題にしたわけだが、それにしても言葉が難しい。

淀江からタクシーで5分ほどのところにあるというので、夏に米子に行ったさいに計画したのだが、夏は暑すぎるしーということで沙汰やみになった。春とか秋の気候のいいときに一度行ってみよう。

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