2021年読書のベストファイブ
今年の読書は40冊。ここ数年は毎年のように読書日記と銘打っているのに、この読書量!とか書いているが、今年もまったく同じことになってしまった。しかも今年は本当にこれは良かったと思うものが少なかった。読書量もさることながら、私自身の集中力も根気もずいぶんと落ちてしまって、読書を楽しむことができなかった。そして何よりも政府のコロナ対策とか東京オリンピック強行への批判に気持ちが行ってしまったことが大きい。
今年のベストファイブは以下の通り。最近気がついたのだが、集英社新書には優れたもの、警世の書が多くある。激戦区の新書判でこの分野で一人奮闘している感がある。
松本薫『銀の橋を渡る』(2021年、今井出版)
これは米子の作家のものなので、文句なく一冊に入れる。今作は環境問題への米子市民の取り組みを米軍占領時代とも絡ませて描き出している。本当にドラマ化してほしい。
堤未果『デジタル・ファシズム』(NHK出版新書、2021年)
「デジタル改革」は決して国民を幸せにするものではないということを、先進国アメリカの例にとって解説したもので、国民が主体的にこの問題に取り組んでいかないと、日本のお役所はどうせデジタル改革なんかできやしないと高をくくっていると、アメリカに乗り込まれてしまうことになる。
岸本聡子『水道、再び公営化!』(集英社新書、2020年)
麻生太郎の高笑いが聞こえるようだ。麻生の娘の夫がやっているフランスの水道資本が日本の自治体を食い物にしているのだ。地方自治体はどんどん金詰まりになり、民営化という路線が市民に通りやすくなっている。しかしその道は豊かな日本の水が市民を殺すことにもなるような道だというフランスでの実例を挙げて警鐘を鳴らす書。
齋藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書、2020年)
今年の売上ベストテンに入る本だそうだ。よく売れていると言っても、それがどれだけ理解されているのか、心もとない。日本では私たちが政治に関わることがあまりにも限られている。この本を買って読んだ人たちがどれだけこの内容に感心しても、それを実践していかない限りは何も変わらない。
柳美里『JR上野駅公園口』(2014年、河出書房新社)
平成天皇と同じ年に生まれ、その息子の令和天皇と同じ日に息子の誕生を迎え、東京オリンピックの前年に東京に出稼ぎにでかけ、2011年の三陸沖地震で孫娘を津波で亡くすという、昭和から平成へと移り変わる日本の「典型的な」人物を造形して、底辺に置かれた日本人の哀しみを描いている。KK問題が週刊誌やユーチューブで喧しい昨今、天皇制について考えさせる小説になっている。
今年の読書は40冊。ここ数年は毎年のように読書日記と銘打っているのに、この読書量!とか書いているが、今年もまったく同じことになってしまった。しかも今年は本当にこれは良かったと思うものが少なかった。読書量もさることながら、私自身の集中力も根気もずいぶんと落ちてしまって、読書を楽しむことができなかった。そして何よりも政府のコロナ対策とか東京オリンピック強行への批判に気持ちが行ってしまったことが大きい。
今年のベストファイブは以下の通り。最近気がついたのだが、集英社新書には優れたもの、警世の書が多くある。激戦区の新書判でこの分野で一人奮闘している感がある。
松本薫『銀の橋を渡る』(2021年、今井出版)
これは米子の作家のものなので、文句なく一冊に入れる。今作は環境問題への米子市民の取り組みを米軍占領時代とも絡ませて描き出している。本当にドラマ化してほしい。
堤未果『デジタル・ファシズム』(NHK出版新書、2021年)
「デジタル改革」は決して国民を幸せにするものではないということを、先進国アメリカの例にとって解説したもので、国民が主体的にこの問題に取り組んでいかないと、日本のお役所はどうせデジタル改革なんかできやしないと高をくくっていると、アメリカに乗り込まれてしまうことになる。
岸本聡子『水道、再び公営化!』(集英社新書、2020年)
麻生太郎の高笑いが聞こえるようだ。麻生の娘の夫がやっているフランスの水道資本が日本の自治体を食い物にしているのだ。地方自治体はどんどん金詰まりになり、民営化という路線が市民に通りやすくなっている。しかしその道は豊かな日本の水が市民を殺すことにもなるような道だというフランスでの実例を挙げて警鐘を鳴らす書。
齋藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書、2020年)
今年の売上ベストテンに入る本だそうだ。よく売れていると言っても、それがどれだけ理解されているのか、心もとない。日本では私たちが政治に関わることがあまりにも限られている。この本を買って読んだ人たちがどれだけこの内容に感心しても、それを実践していかない限りは何も変わらない。
柳美里『JR上野駅公園口』(2014年、河出書房新社)
平成天皇と同じ年に生まれ、その息子の令和天皇と同じ日に息子の誕生を迎え、東京オリンピックの前年に東京に出稼ぎにでかけ、2011年の三陸沖地震で孫娘を津波で亡くすという、昭和から平成へと移り変わる日本の「典型的な」人物を造形して、底辺に置かれた日本人の哀しみを描いている。KK問題が週刊誌やユーチューブで喧しい昨今、天皇制について考えさせる小説になっている。