読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『困難な結婚』

2019年04月26日 | 評論

内田樹『困難な結婚』(ARTES、2016年)

内田樹が結婚の話って、なんか軽い読み物だなと思いつつ、手にしてパラ読みをしたところ、なんか面白そうなことが書いてあることが分かり、借りてきてしっかり読むことにした。

さすがに内田樹、ただものではない。のっけから面白い。
「もっといい人」は現れません
結婚しちゃえばだいたい同じ
配偶者が変われば、あなたは別人になる
社会の原理と戦うために結婚する
お金がないから結婚する
今より幸せになるために結婚してはいけませんとか・・・

ほらほらもう読んでみたくなってきたでしょう。

まぉ私も結婚して40年近くになるし、30才台は無我夢中、40才台にはあれこれもめるなんて経験もしてきたので、内田樹の主張にはほぼ納得。もちろんお金がないからこそ二人で助け合っていくために結婚するなんて発想はなかったが、よく考えてみれば、そのとおりだと納得。

子ども誕生と子育てによって人は変わるというのも、実際に自分が経験してきたことなので、納得。

戸籍とか、家庭にはボスがいたほうがいいとかという問題は納得していないが、家族の一体感は姓を一つにすることによって出来上がるわけではないという話も納得。

家事の分担は、若い夫婦にとって永遠の問題でしょうね。絶対的な公式があるわけではない。それぞれの夫婦で話し合って落とし所を見つけるしかない。

小遣い制はやめようとか、家事の分担の問題などは、当然のことながら、共働き夫婦であることを前提に語られている。

私の周りにも30才台、40才台で未婚の男女がたくさんいる。もちろん独身でいることが不幸せだなどとは言わないが、結婚生活の幸せ・不幸せも経験してみるのがいいと思う。

結婚を人生の墓場とも人生の楽園とも見ていない、リアルな、そしてそれなりの楽しみも見いだせる、内田樹の結婚話、これは一読に値する。




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使えないグーグル・マップ

2019年04月20日 | 日々の雑感

使えないグーグル・マップ


今日のヤフー・ニュースにも載っていたが、グーグル・マップが使い物にならなくなった。こちら

昨日、かみさんがうちの近所(と言っても自転車で行かなければならない程度の距離)に行きたいから、マップで調べてというので、いつも使っているグーグル・マップで調べたところ、出てこない。

あれー、そんなはずないのになと言いながら、何度やっても同じ。まったく当てずっぽうの場所が表示されている。〇〇市△△町××番地とすると、違う番地のところが表示されているのではなくて、まったく違う町が表示されている。

試しにマピオンで調べてみたら、出てきた。同じところをグーグル・マップで見たら、空き地になっている。つまりグーグル・マップは情報が古いということだ。

それでたまたま今日ヤフー・ニュースでグーグル・マップがゼンリンとの提携を打ち切ったことが原因らしいという報道を読んで、なるほどと思った。

グーグルも飛ぶ鳥を落とす勢いだが、こんなことで足をすくわれるとはね。


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『父・金正日と私 金正男独占告白』

2019年04月19日 | 評論

五味洋治『父・金正日と私 金正男独占告白』(文藝春秋、2012年)

金正男は2017年2月に暗殺されるまで、おそらく半島ウォッチャーにとっての最大のターゲットだったと言っても過言ではないだろう。

北朝鮮に入るのも簡単ではないし、そこでなんらかのジャーナリズム的な取材をすることはほぼ不可能であるのに対して、金正男は、とくに金正日の死の前に継承者から外されて以降、気楽になったこともあってか、外国の取材なども受けるようになったからだ。

その金正男に2回も面談して行った取材や150通にもおよぶメールのやりとりを通して浮き彫りになった金正男の人となりを伝えようとする本である。

著者も断っているように、できるだけ本人の人柄なりがストレートに出るように、メールの内容や面談での語りに手を加えないで掲載するという手法を取っている。

言葉の詳細や背景については注の形でまとめて書かれているからそれも参考になる。

実際には数日の時間を置いてやり取りされたメールが次々と並べてあるので、時に退屈に思えたり、こんなにしつこく次々と質問して機嫌を損ねることはないのか、と心配したりしながら、読んだが、金正男の人柄なのか、丁寧に答えている。

金正男も言うように今の北朝鮮の国民の生活をよくするには市場開放しかないだろうが、父親の金正日が猛反対だったそうだ。市場開放することで外国の情報がどんどん入ってきて、統制が効かなくなり、反体制派が強力になって、「アラブの春」のように権力から引きずり下ろされてしまうことを恐れていたのだろう。

結局は核開発によってアメリカを威嚇し、それと引き換えに経済支援を引き出すしか能がない。それが韓国にも宥和派のムン・ジェイン政権が出来、アメリカもこれまでと違うトランプ政権になって、新たな展開が期待されたのだが、トランプも軍の強行派に押し切られて、終戦の合意を取り付けることを断念したようだ。

やはり金正恩は、兄金正男を生かしておいたら、市場開放派と手を組んで自分を倒しかねないと恐れていたんだろうな。だから彼を暗殺してしまったのだろう。


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『フランス人は10着しか服を持たない』

2019年04月17日 | 評論

スコット『フランス人は10着しか服を持たない』(大和書房、2014年)

いわゆるフランス人レスペクト物の一冊である。これらの多くはアメリカ人が書いたものというのが味噌である。つまりアメリカという伝統を持たない大量消費社会から見ると、フランスという伝統をもち、(アメリカ人から見たら)コンサバティブな国民の生活の仕方がすごく新鮮に見えてくるのだろう。

ここで書かれていることの要点は、フランス人は自分たちの生活実態に見合ったレベルの、質のいいものを味わう(着る、食べる、鑑賞する)ことを心がけているという一点にある。

食事も近所の気心の知れた店で買ってきた新鮮で品のいいものを自ら料理して家族で味わう。

服も自分に似合うものはなにかを知ることで、お気に入りの服を季節に10着程度だけ出して、それを着回しする。

住居も品のいいものだけを大事に使う。食器も自分たちの鑑識眼で揃えた品のものを普段使いする。

自分の教養を高めるために本を読み、旅行をし、美術館などの鑑賞をする。

たまたまこの著者がホームステイをしたホストファミリーが貴族ということで、とりわけコンサバティブな生活の仕方をしていた人たちだったということも、著者に強烈な印象を与えたのだろうけども、スクラップ・アンド・ビルドの好きな日本人にも、教訓になるところがたくさんあると思う。

フランス人って本当に・・・?と思わないで、一種の生き方本として読めばいいのではないだろうか。軽い本のわりにはけっこう面白いものだった。

アマゾンを見たら、すごい売れているだね。


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