読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『兄の終い』

2021年11月29日 | 作家マ行
村井理子『兄の終い』(CCCメディアハウス、2020年)

二つ違いだか三つ違いだかの、「犬猿の仲」の兄の死後の著者と元嫁の奮闘ぶりを描いている。ちょっとした小説の読み応えがある。

兄弟姉妹って、仲が良いから、最悪の関係まで、多種多様、というか、兄弟姉妹の数だけあるようなものだろう。だから普遍化などできない。そういうものとして読むほかない。だから他人事のように見えるので面白いのだけど。

どこにでも著者の兄のように親族から毛嫌いされている人というものはいるもので、私の場合には、父の甥にあたるから、私からすれば叔父さんになるのかな。これがすごい酒飲みで、通勤の路線界隈では知られているので、ずっと離れたところから嫁をもらい、(って、こんな身内の恥を晒すのは辞めておこう)

と私でも思うくらいだから、この著者がこのエッセーを書くには相当の覚悟がいったと思う。私の叔父さんの場合は、私と年も離れているし、とくに私自身は何も被害を被っていないし、客観的に見れるのだが、この著者の場合は、自分が利害関係者でもあるので、一種、心の精算的な意味があったのだろう。これですっきり冥土に送り出せる、的な。

元嫁という人もしっかりした女性で(じつはいろいろあったと一言つぶやいただけで、詳しいことは何も書かれていないが)、もっと波乱万丈を期待していた向きには、少々物足りない感じがしないでもないだろうが、小説じゃないんだから…。

何ヶ月も予約待ちをしたのに、とにかく文章の旨さにあっという間に読んでしまった。

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